イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

NORN 9 ノルン+ノネット:第7話『うつつの夢』感想

世界の命運を背負った少年少女が恋にDOKI☆DOKIアニメーション、今回は終わりの始まりと思い出づくり。
『リセット』だの『世界』だの大概な設定背負っているが、そういうのは一切無視して、中東観光したり廃校で肝試したりする、のんびりエピソード……と思わせておいて、三者三様の恋模様は進み、黒ノルンはノルンヒロインの通過儀礼である『高所からの落下』を完了する。
見ている側をなかなか落ち着かせてくれない、良いジェットコースターだと思います。


ノルンの基本形に従い、今回も三ヒロインそれぞれのお話が展開していたので、まずはそれについて。
こはるは完全に駆くんルート一直線の甘々ラブラブ肉欲街道でして、抱き合ったりチューしたり、恋が燃え上がる過程にズッポリハマってました。
一応千里を気にかけるものの、恋人が追いついてきたらあっという間にメス顔してイチャイチャに忙しくなる辺り、イノセントな顔して欲望に素直だなこの子。
あ、キスシーンの演出は気持ちが溢れて頬に行くもののそっから先がわかんないこはると、自分の中の獣を思う存分開放することにした駆くんのベロチュー(しかも二回)の対比が大変エロティックであり、思わず『なげーよ!!』とツッコんだ。

他のヒロインがグダグダと恋愛足踏みする中、あっという間に共同作業(アバンの植樹とか、今回は隠喩多かったなぁ……色んなモノが水に濡れすぎだろ)まで行ってましたけど、順調なのが逆に怖いのよね、このカップル。
駆くんの親父離れも凄く強調されてたし……チューまで行ったところでズドンと一発、あるかないか。
視聴者の心を安心させない話作りが巧いアニメなので、このまま『二人はいつまでも、幸せに暮らしました』で終わりはしないだろうなぁ……楽しみだ。

青ノルン七海ちゃんもほぼ暁人ルート固定であり、『路地裏から現れ、イケメンに見せ場を作るためだけに粗暴に襲い掛かってくるチンピラ』という乙女ゲー名物がプルアップしたり、お化けにビビる様子があざとかったり、安定したツンツンデレデレっぷり。
過去回想で七海と暁人の仲違いの原因が描写されていましたが、弟である千里の記憶を七海に奪われたのが理由なのね……そら怒るわ、むしろ今でも好きなのが聖人すぎるわ暁人くん。
能力を使って記憶を奪うシーンは、あまりにもためらいがなさすぎて、『七海ちゃんはマインドアサシンの一族か何か?』と聞きたくもなる。
あのノータイムの心殺しから、どうやってむっつり後悔女子になったのが気になるが……そこを触っている時間的余裕が有るのか、ないのか。

こっちの二人はもどかしい距離感の再確認という感じで、七海が踏み込めば終わってしまう間合いを維持しつつ、一月兄さんが暁人くんの心を確かめに行く流れでした。
男の会話を少し離れたところで見上げる七海の姿が印象的に切り取られてたけど、心理的な距離をヴィジュアルでうまく説明する手腕は、スチルを使いこなす乙女ゲー原作ゆえかなぁと思う。
絵画的にスパっと胸に刺さるワンカットを、巧く使ってるよね、このアニメ。


そして三人の中で一番面倒なことになってる黒ノルンですが、朔也の足元に埋まった地雷が綺麗に炸裂し、病んで壁ドンして押し倒して微妙な空気になり、平士のナイストス上げにより仲直りしていた。
こはるルートの千里といい、七海ルートの一月といい、脇役勢が本道を盛り上げるべく、良いトス上げを繰り返す回だったなぁ今回。
頑張れ選ばれなかった男の子たち……どっかの世界線では、多分キミたちが勝者になることもある……具体的にはゲームを買うのです……(オトメイトの回し者)

朔也は『遂に自分の中の獣を開放するのか! IKE! YARE!!』と思いましたが、大事な一線は踏み越えないスーパー紳士人っぷりであり、残念だったり安心だったり。
まぁ女の子の意思を踏みにじる奴は、あんま美味しいポジションに入れないからな、この世界……。
朔也くんにも性欲があることが証明され、『ただの便利な幼なじみ』ではないところが確認されて良かったんですが、同時にあそこまで踏み込んで引き返しちゃう押しの弱さと、どうあっても『良い友人』を踏み越えようとしない深琴との関係性に、一抹の不安を拭えない。
まぁ『好きになったら死ぬ』という高いハードルがある以上、これ超えないと朔也ルートには入らんわけだけども、想像以上に重たい男子であることが解ったので、俺としては朔也を応援したい気持ちだ。

深琴としては朔也と仲直りできて一安心って所なんだろうが、ロンが引っ掻き回したおかげで強制的に夏彦さんルートに突入。
お化けにびっくりして飛びつく所とか、まさに黒髪ロングストレートって感じのチョロさとあざとさで最高だったのに……。
あのまま落ちて死んでも斬新だとは思うが、夏彦さんがカッチョいい飛行機械で駆けつけ、(やだ……こいつのこと嫌いのはずなのに胸キュン……)ってなるフラグはたっぷり積み上げてきたわけで、そういうところは裏切らんだろうこのアニメ。
ノルンの外側にいる夏彦さんとキャイキャイすることで、意味ありげに仄めかされてる『世界』だの『リセット』だのに踏み込む場面も来るしな。
黒ノルンの面倒な恋は、まだまだ続きそうな気配だ。


そんな三人の恋模様ですが、そことはあまり関係なくロンがやりたい放題し、正宗さんが後手に回り、小学生は別ルートから世界の謎を掘り下げていた。
前回たくさん出したヒントを回収する形で、ロンがやりたい放題し放題しているのは、ストレスを溜めすぎない良い進め方だと思う。
手際よく進めても尺が足りないくらいなわけで、このくらい高速でフラグ回収したほうが、みんなに見せ場回るよね実際。
そんなスピードに取り残され、まんまと深琴を拉致られた正宗さんだが……遠回しにカマかけてないで、ソッコーぶっ殺しておけば……進行役が有能すぎるとサスペンスが回らんので、不都合な立場ではある。

鈴原少年は恋愛アウトサイダーの立場を活かし、半透明のお姉ちゃんに導かれるまま、なんか意味ありげな行動を取り続けていた。
完全な部外者というわけではなく、ちまちま他のキャラと交流を深めつつ、恋愛に忙しいお姉ちゃんお兄ちゃんには出来ない仕事をする空汰のポジションは、結構見ていて楽しい。
青い姉ちゃんは全身に『私はこのアニメの秘密を知っている! 知りすぎてて今言うとお話し終わっちゃうからひっそり暗示するくらいにとどめておくけど、仲良くしておくと後半情報出すときにスムーズになる!! 来たまえ少年!! どうせ攻略キャラじゃねーんだしお前!!!』と太字で描いてある、分かりやすくて良いキャラだ。
堕ちた深琴が夏彦さんと話し、正宗さんが色んなしでかしを取り戻し、ロンがさらに大暴れ天童した辺りで、今回の蓄積が生きてくる気がするな。

というわけで、恋も陰謀もどんどん深まる回でした。
こはると駆くんのチューにしても、深琴と朔也の壁ドン後仲直りにしても、七海と暁人くんのまどろっこしい距離感にしても、巧くムードを作りつつ定番イベントをしっかりこなし、視聴者の気持ちを盛り上げてくれるのがありがたい。
その上で、あんま定番とはいえない複雑なプロットとミステリの方もしっかり制御しており、安定感を感じます。
中東っぽい場所の美術も良かったしな……。
深琴の墜落は非常に良い引きだと思うので、この爆発力を活かし、さらに面白く加速してくれるとありがたい限りですね。