イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない:第28話『ハイウェイ・スター その1』感想


怒る! 断る!! 未来を託すッ!!!
いろんな露伴ちゃんが見れるスーパー露伴月間、今週はいかさま賭博の顛末と、新たなる恐怖。

軽い気持ちではじめたチンチロリンがマジとんでもないことになったり、ミキタカの正体はやっぱ不明だったり、それが終わったと思ったら成長ホラー&スタンドバトルだったり、色々盛り沢山な構成でした。
自己中心的でこだわりが強くキチった精神力を持ち、素直じゃないけど卑怯者でもない。
露伴ちゃんの複雑な人格が楽しめる作りになってて、彼のファンとしては嬉しい限りですね。

複雑とは言うものの、岸辺露伴という人物の根っこはずーっと動かずへそ曲がりの意地っ張りでして、それがそれぞれ状況に応じた顕れ方をしていることが、エピソードをまたぐ構成で見えやすくなっています。
高校生に良いようにイカサマされている事実に耐えられなくて小指飛ばす狂気も、敵スタンドの脅迫に『だが断る』する気高い意思も、両方露伴ちゃんのタフな精神力から生まれたもの。
『善悪美醜はときに背中合わせで、その境界線を乗り越える決意があればこそ人間は美しい』というのはジョジョ全体を貫くテーマだと思いますが、露伴ちゃんの様々な顔もこの反映なのでしょう。

対する仗助は結構常識人というか、露伴ちゃんのぶっ飛んだ感性に振り回され、衝撃を受ける側として描かれています。
『最後にちょっと勝てば良いんだよォ』という泣き言聞いても判るように、仗助の中でチンチロリン勝負はちょっとした小遣い稼ぎにすぎないわけですが、プライドと覚悟が異常に高まった露伴ちゃんとしては冗談ごとではすまない。
ここら辺のギャップを強調するべく、小指えぐり取りの衝撃を残してOPに入る今回の構成、凄く良かったですね。

身体を欠損し、心を支配する玉美のスタンドを引っ張り出すことで、小遣い稼ぎは痛みと傷を伴う真剣勝負に(強制的に)シフトチェンジしてしまって、『凄み』に飲まれた仗助は降りたくても降りられない。
仗助の怯えと露伴の異常性を隣り合わせにすることで、『なんだかよくわからんが、とにかく凄いことが起きているッ!!』というジョジョっぽい快楽がぐんと強まっているのは、なかなか面白いところです。
露伴ちゃんの尋常ではないクレイジーさは、気圧されると同時に面白いからな……狂人の所業を安全圏から見守る心地よさというか。
目の前で台風みたいな『凄み』全開にされてる仗助としては、たまったもんじゃないだろうけどね。

あっという間に内破寸前まで高まった緊張感をそのままに進めていくと、どっちかが再起不能になるしかないわけで、勝負は不意の火災で水入りとなります。
お話をご破産にする消防車のサイレンが、同時にイカサマが通じるか通じないかの窮地を生み出し、スリルを高めているのは巧いところです。
本来繋がるはずのない『チンチロリン・サイレン・火事』という三題噺を、『スタンド』という異常な設定で繋げ、ダイナミズムと必然性、奇妙なテイストを生み出しているのも、短編としての切れ味ですね。

奇妙なテイストといえば、状況が一段落した後のサゲとして展開される『ミキタカの正体』は、それがお話しの大筋に関係ないこともひっくるめて、なかなか面白い味をしています。
彼は世界のルールの中にある『宇宙人を演じるスタンド使い』なのか、はたまたルールの外側にいる『宇宙人』なのか。
掘り下げていくと別の所に出そうなネタなんですが、それは今回でぽんと投げ渡され、視聴者の頭のなかで残照する疑問点のまま放置されます。
この答えが出ていないのにスパッと切り落とす切断面が結構好きなんですが、しかし本当にミキタカは謎だなぁ……。


ミキタカの話はスパッと切れても、目の前でクレイジー過ぎる『凄み』の嵐を展開された常識人・仗助としては、なかなか気まずい状況。
サイコロ賭博でこんがらがった感情を平らにし、奇人・岸辺露伴杜王町を守る騎士の一人なのだと『グッと来る』ためには、やっぱり異常な事件が必要になります。
ここんところ変則的な賭け勝負が続いてきたので、『日常』の奥に罠を張り命を啜る"ハイウェイスター"との対峙は、なんとなく懐かしい気配がありますね。

登場時は好奇心のモンスターだった露伴ちゃんですが、鈴美お姉ちゃんとの再開で『俺の事件』になっているのもあって、『吉良吉影っぽい男』『殺人事件』には積極的に食いついていきます。
以前の露伴ちゃんなら『漫画のネタになりそうだ』で物語に飛び込んでいったところなんでしょうけど、重点的にエピソードを回した結果、ひねくれて魅力的なキャラクターを壊すことなく、情でも動けるようになってきてますね。

まぁ好奇心をくすぐられたっても多々あるんだろうけどね……結局トンチキクズ人間だってのは、直前のチンチロリンでよーっく分かってるし。
アーバンホラーとしての見せ方がアニメ四部は巧いんですが、今回も『トンネルの中の家』『展開される殺人事件』『60キロ制限を守って追いかける足あと』というパーツが興味を掻き立てる、良い見せ方でした。
最初の出会いが公共交通機関である『バス』であり、『確かめたいんだけど、自分の思うようには出来ない』というもどかしさが強調される作りなのは、良いセッティングだよなぁ……『公共』だから仗助とも無理なく接触できるし。
そこから『バイク』という個人的な乗り物に乗り換え、真相に一歩ずつ踏み込んでいく動き含めて、スムーズな運び方ですよね。

だが断る』は、仗助を助けたいという気持ち半分、己を曲げたくない気持ち半分の、今の露伴ちゃんらしい名言だと思います。
『罠をはって待ち構える』という"ハイウェイスター"のスタイルは、実は初登場時の露伴ちゃんによく似ているわけですが、いろんな事件を経験することでそこから半歩踏み出し、犠牲者として反抗者として『過去の自分』に立ち向かう側面も、今回の対決にはあったんじゃないかなぁと。
変わらないつむじ曲がりの頑固者っぷりと同時に、こういう変化を重点的に描いていくってのは、億泰を筆頭に四部らしいなと思います。

色々面倒くさいツンデレヒロインに『絶対コッチ来ちゃダメだからね! これはあんたのことを気にしていっているわけじゃなく、勝ち誇ったやつにNOって言ってやるのが好きなだけなんだからね!!』とか言われた、我らが仗助くん。
自分で言っているとおり『言ってることとやってるとことが逆の嘘つき』なので、露伴の自己犠牲を見捨てずしっかり罠の中に飛び込んできます。
ツンデレ×ツンデレ……最高かよ。(唐突な関係性萌えの告白)
結果的には罠から脱出し、トンネルの外でのチェイスに戦場を変えるわけですが、やっぱりここで『露伴を見捨てない』という選択をしているのは、主人公としてヒーローとして大事なところです。
チンチロ勝負でさんざっぱら情けない所見せちゃったから、挽回しておかないとヤバイしね!!


そんなわけで、岸辺露伴東方仗助の色んな顔が見れるエピソードでした。
長大な原作をアニメ化するにあたり、必然的に再編集と再構成が行われるわけですけども、色んな意味で対象的な2つのエピソードが連続した今回、アニメ化故の面白さが特に強かったと思います。
自分のペースでページをめくるときとはまた違う、再構築者の解釈自体を味わう感覚というか。
『覚悟』キチガイ露伴ちゃんも、『だが断る』の高潔な露伴ちゃんも同じ岸辺露伴なんだなぁ……と実感できて、非常に楽しかったです。

そんな露伴ちゃんに『覚悟』を託され、バラバラになったバイクを受け継いで新たな戦いに挑む仗助。
圧迫感のあるトンネル内部の謀略戦から、開放感と速度に満ちたスピードチェイスへの切り替えが楽しめそうな、いい流れです。
ここ最近露伴ちゃん出ずっぱりで、あんま主人公としての活躍がない仗助くんのスーパークールをそろそろ味わいたいので、来週は思いっきりかっこよくヒーローして欲しいなぁと思います。