イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

神撃のバハムート VIRGINSOUL:第2話『The Miserables』感想

神亡き倫理の荒野を人と悪魔とが疾走するダークファンタジー超大作、今週は悪魔の事情と龍の事情。
山本沙代のセンスが唸るOPでもダークヒーロー主人公やりまくってるアザゼルさんが、ドラゴンを勧誘してフラれ、極悪人をぶっ殺したり特殊部隊にボッコボコにされたりするお話でした。
支配種族として闇の中でブイブイいわせてたのも今は昔、奴隷に剣闘士に拷問遊具とひどい扱いの悪魔ですが、愛されて育ったドラゴン娘には、あんまりしっくり来ていない様子。
アザゼルさんも単騎で無双できるほどの性能はないし、ムガロ少年もなんかワケアリっぽいし、ドロリと腐敗と停滞が渦を巻く中、運命は動き出すや否や、という感じの第2話でした。

というわけで、ポヤポヤドラゴンと悪魔を取り巻く地獄の温度差が際立つ今回。
ドラゴン村には明るい日差しが降り注ぎ、みんな笑顔でご飯もお腹いっぱい食べられるのに、悪魔スラムでは子供が食料を巡って争い、餓死寸前の体に虫が這い回る始末です。
ママンへの手紙とハッピーな気配からダークなスラムへ、そして再び能天気で明るい世界へっていう明暗の使い方が、そのまま背景世界の薄暗さを表していて面白い。

ニーナは悪魔たちの陰りを見ても『よく分かんない』で終わってしまう、結構脳天気な立場にいます。
若い男もろくにいない里から人間界に降りてきて、楽しく優しい部分を堪能するのに手一杯って感じなのかなぁ。
そもそも、ドラゴンの里がある種の理想郷で、神と悪魔と人間が欲望剥き出しで喉笛を噛み千切り合う、弱肉強食の世界には馴染みが薄いのだろう。
アザゼルが突きつける影を否定するわけではないけれども、ニーナを取り巻く光もまた人間の真実なわけで、今後何か事件が起きて闇の事情にも理解を示していくのかねぇ。

月光が赤い光を切り裂き、酸鼻極まる拷問を露わにするシーンとか、異形の怪物が相打ちするまで殺し合う決闘場(怒り狂った群衆が投げ込む物品が、一つ一つ増えていく狂気の作画!)とか、『悪魔はまじヒドい目にあってます!』シーンの切れ味は凄く良いです。
ダークファンタジーに必要な黒さが、非常に良く出てる。
ただ現状、お話をメインで進めていく主人公がそこにコンタクトしていないので、クソみたいな状況をひっくり返す運動力が、まだ作品に伝わっていない感じです。
わざわざ世界の悪と主人公に距離がある描写を入れている以上、今後の展開の中でそれを詰めていくんだろうし、光も闇もきめ細かく描いてくれる筆を見ていると、期待も高まりますね。


ドラゴンにラブコールを送っても暖簾に腕押し、このままではアザゼルさんのダークヒーロー力が空回りですが、そこら辺はカイザルがしっかり拾ってくれていました。
10年前の事件でも散々キツい目に合い、今現在理想と現実の合間で苦悩している真面目な騎士にとっては、アザゼルさんが突きつけてくるシビアな闇は、無視できるもんじゃないよね。
それでも、悪魔に踊らされてファバロを付け狙った経験を踏まえて『復讐は希望には繋がらない』とちゃんと言うあたり、信頼できる男です。

騎士団はお飾り、忠誠を誓うべき国は邪悪と腐敗に落ち込み、戦友は自分の言うこと聞いてくれないシンドい状況だけども、そのうち良いことも起こるだろう。
正直、さんざん泳がされた挙句国王に縁を切られる方が先っぽいが。
悪魔の生き血すら絞り上げるバビロンで生きていくには、カイザルは義人過ぎんだよなぁ……。

一方リタはいつものようにマイペースで、しかし頼りになる女だった……相手を変えての生身ロケットパンチ天丼は、前作ファンには嬉しい限り。
オーバーオールが可愛い助手くんを手に入れていたけども、あれカイザルの腕なのかなぁ……だとしたら愛が重いな……。
とにかく自分の事情を押し付けるアザゼルさんとは対照的に、ニーナとのファーストコンタクトは巧く行ったようなので、今後どういう仕事を果たしてくれるかが楽しみです。
設定年齢通り精神が成熟しているので、他のキャラクターを受けて広げる役を巧くこなせるよね、リタは。


そして悪徳の坩堝の中で、殺し殺され大暴れなアザゼルさん
悪魔の状況はマジで悲惨ですが、悪魔軍の一員としてブイブイいわせてた頃のアザゼルさんが同じ立場だったら、人間に鎖付けて奴隷扱いして、コロシアムで高笑いしていた気もする。
自分が奉じていた弱肉強食のルールで上をいかれ、踏みつけられる立場になって初めて、漆黒の正義を己のものにしたってのは、なかなかに皮肉ですね。

最高水準のアクション作画に助けられ、ブイブイ大暴れしているアザゼルさんですが、強いには強いけども無敵ってわけでもない。
だからこそニーナを悪魔解放戦争に巻き込もうとしてくるわけですが、黒い鎧の漆黒兵がつえーのなんのです。
あからさまに『世界にとっても人間にとっても、とんでもなく邪悪な力!』と太字で描いてあるけども、あのパワーがあるから神も悪魔も踏み潰し、この世の春を謳歌できているのだろう。
第1話アバンで、天使から略奪した力が関係してんのかなぁ……。
そうだとすると、露骨に聖なる光をピカーッとして漆黒兵を無力化したムガロ少年も、天使の関係者か。

バハムート事件でダメージを負ったのは神も悪魔も人間も同じなはずで、人間だけが一人勝ちしている裏には、何か事情があるはず。
ニーナが世界の悪徳に踏み込んでいくのと合わせて、ここら辺の秘密も公開されていくんでしょうかね。
PVではお忍びのシュリアス17世とラブコメ接触していたので、そこを起点に悪魔たちの困窮をくずかごに放り込める他人事ではなく、自分に関わりのある問題として受け止めていくのかな。


というわけで、地獄の釜の底で煮詰まった人間の悪徳、それに反抗する仮面の悪魔と、当惑する義の騎士をスケッチするお話でした。
真っ黒なシリアスさが加速する中で、ちょろゴン主人公はやや置いて行かれてる感じもありますが、転がる運命にかみつけそうな足場は、ちゃんと用意してあって安心。
まだ明かされない謎もたくさんあって、こっから話をどう加速させ、そこに各キャラクターをどう乗っけていくのか。
来週以降の展開が楽しみですね。