ゾンビランドサガ リベンジを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
文明開化と詠ってみても、世には恨みと刀槍の気が満ち、炸裂の瞬間を待っていた。
喜一のもとに集った不平士族は過激化の一途をたどり、雪景色の中、刃は血を知る。
佐賀を蘇らせんとす青雲の志は、儚く散るのか。
刑場にぽとり、椿の花が落ちた。
そんな感じの佐賀民権秘史、雪景色に咲く赤き徒花、ゾンサガR第9話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
不穏な気配を漂わせつつも幸福だった前回から、季節は移ろって陰鬱な冬。
ただただ真っ直ぐに、幼く喜一が見た夢は、時代にくすぶる不平と暴力を引き寄せ狂っていく。
同じく剣を握るしかない男が、その始末をつける。
全ての罪科を背負って斬首された女が、託した未来の希望は確かに実り、佐賀は名を蘇らせた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
かくして時は流れ、不死の旅人となったゆうぎりは今日も歌い、踊る。
あの時は笑い合えなかった、志を同じくする仲間とともに。
不死人起源として、佐賀秘史として、見ごたえのあるエピソードでした。
『これ、ゾンサガか? ただの明治剣客浪漫修羅雪姫じゃねぇの?』という疑問が無いわけではないが、これもゾンサガなんじゃーい!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
ゆうぎり姐さんが異常に暴力強い理由も判ったし、そのオリジンを掘るならこういう画角にもなるよなー、と思う。
いい意味での無節操は、このアニメの強み。
というわけで、春の出会いから幸福な夏と秋を過ぎて、時は運命の冬へと流れていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
前回は明るく楽しい気配が前面に出ていたが、喜一周辺に集う不平士族が暴力の気配を連れてきて、画面はグングン暗くなっていく。
(画像は"ゾンビランドサガ リベンジ"第9話より引用) pic.twitter.com/zy8YuqAGTE
偽りでも幸せだった縁最後の名残と、当時最新式の写真に面影を写しても、セピアの色にあっという間に褪せていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
当時を生きる人にとってはフルカラーの現実が、100年を過ぎれば薄ぼけた過去になってしまう寂しさが、写真に収まる三人にはある。
友の座敷に屯する、時流に乗り切れない不平士族達。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
睨みつける正次郎は眼光の鋭さを隠そうともしないが、彼自身もまたやっとうを握り誰かを殺すこと…武士の本分でしか生きられない。
それでも、甘っちょろい理想に夢を見た。何も知らない子供の輝きが、眩しかった。
垣間見える設定を思うと、明治政争の薄暗い部分も背負ってきたっぽいゆうぎりと同じく、正次郎も喜一の純朴に荒んだ心を癒やされ、救われていた部分があったのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
だがそんなものでは、慶應動乱から続く恨みの歴史、流血の残滓は拭えはしない。
喜一一人で動いてた時は滋賀にもかけられなかった佐賀復権運動が、ゆうぎりの知恵と教養を借りて勢いを増し、結果全てをぶち壊しにする暴力革命路線に突き進んでいくのは、皮肉としか言いようがない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
監視し、また見守っていた正次郎も望んではいなかった方向へ、事態は転がっていく。
ここで年長の士族を抑えきる器量が喜一になかったことを責めるのは、いかさま酷といえよう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
正次郎が幾度も呟くように、血生臭い中世の気配をまだ残し、近代国家の形未だ整わぬ大日本帝国。
帝国議会の成立は、これより八年後のことである。
不平士族も、それを斬る正次郎も、暴力によって成し遂げられた一新に乗り遅れたゾンビといえる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
戦災孤児であり、先進的な平和と自由を求め続ける喜一の生き様は、終わった時代に呪われた武者達には通じなかった。
あるいは眩しく思えても、その夢に身を預けられなかった。
かくして運命は、破滅へと雪崩込んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
なにか新しいものを連れてきてくれる風車から、いつかぽとりと落ちる椿の花へと、ゆうぎりが見守るものが変わりながら。
もはや変え得ない定めを、喜一だけが知らない。
(画像は"ゾンビランドサガ リベンジ"第9話より引用) pic.twitter.com/GaKARQYrfg
ゆうぎりが差し出した文は軒並み、佐賀閥の重鎮宛である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
この手紙を出した時点で、(また)血みどろの決着になること、自分が死ぬことは覚悟であったのだろう。
正次郎も冷たく降り注ぐ雪が、赤く染まる終わり方を寂しく見上げる。
結局、こうなるしかない。
士族もゆうぎりも正次郎も、明治と名を変えつつも未だ、暴力で決着するしか無い浅ましさにため息一つ、だがそれに流されるしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
そんな彼らだからこそ、見果てぬ夢を甘っちょろく抱きしめる喜一の輝きが、特別眩しかったのかもしれない。
だが、春は終わり雪が降る。それが定めである。
雪降る佐賀に刃を携え、権令暗殺を企てた明治の義士達は、正次郎に切り伏せられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
刀を握ったゾンビが跋扈する時代に、後戻りしないための政治的外科手術。
未だ不安定な明治日本のそこここで、行われていただろう血の秘史。
(画像は"ゾンビランドサガ リベンジ"第9話より引用) pic.twitter.com/1vgkyosa2B
さり気なく不器用に、夢を諦め穏健に済ます道を差し出していた橋を前に、喜一は残酷な真実に対峙する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
闇に浮かび上がる、白き雪の柳。望まぬ人斬り以外に道がない正次郎(達)のやるせなさが、切れ味鋭いレイアウトにしっかり乗っている。
この雪景は、武士の時代の後始末。
ゆうぎりもまた、終わらぬ時代を生きる一介の剣士であった…で良いんだよね!?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
予期し期待していたとはいえ、姐さんが仕込み三味線を逆手抜刀、”修羅雪姫”めいた殺陣で大暴れしてきて、どう受身とっていいかちょっと困惑だよ。
PLはノリノリで、煮えたロール楽しんでるのは判る。(TRPG脳)
ノンキにビラ巻いて、自由だ平和だ歌ってれば佐賀が戻ると思っていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
そんな喜一の甘さは、吹き溜まる士族の暴走、幸せな嘘を脱ぎ捨て人斬りに戻るしかなかった正次郎(とゆうぎり)によって、残酷に切り伏せられる。
時代は、未だに血を求める。
まーこの後の自由民権運動も、相当にテロルだしな…
現実の重さに倒れ伏した喜一を、ゆうぎりのビンタが立ち上がらせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
甘い理想も、動き出せば真実。その重さを背負い、背筋を伸ばす責務に向き合って欲しいと、張られた頬が熱い
ここら辺、さくらへの唐突殴打の意味、後出しで分かって面白いね。
(画像は"ゾンビランドサガ リベンジ"第9話より引用) pic.twitter.com/2wEwQd4FHY
潤む瞳は姉のようであり、母のようであり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
自分が生きれなかった刃なき生き様、大事な人と添い遂げる未来を託すゆうぎりの決意を、受けて佐賀の子供は境を出ていく。
雪景色を後に去っていく喜一の、幸せで哀しき幼年期がここに終わるのだ。
やっぱ夜闇と雪の白さを活かしたレイアウトがバキバキに決まっていて、最高に良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
フランシュシュの青春群像劇でもいい仕事をしているのだが、取り返しのつかない運命と死を描く今回、作品の情景センスが冴えに冴えてる。
自分の中でゾンビランドサガは、風景のアニメなんだよなー結構…。
というわけで、二人の人斬りが対峙する雪景色も、バチッと決まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
やり取りの煮え方が限界突破してて、正直ついて行けない感じもあるが殺陣の切れ味、画面の緊張感で強引に食わされてしまうね…。
”どろろ”でやれ!!
(画像は"ゾンビランドサガ リベンジ"第9話より引用) pic.twitter.com/YqL7ahbwhb
やや前掛かりに背を曲げ先手を取る正次郎と、逆手に待ち構えて切り落とすゆうぎりの構えが、それぞれの意思を感じさせて良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
止まることなど許されぬ、太平のための黒い刃。
そうとしか生きられなかった始末を、第二の佐賀反乱の決着を、女の細首に預けるしか無い無念。
あっさりと斬られた手応えのなさに、ゆうぎりも正次郎が描いた絵、時代遅れの人斬り最後の思いを知らされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
芝居をやりきり笑顔で事切れる正次郎と、目を見開いたゆうぎりの対比がいい。
こんな血みどろの決着に、流れ着くしかなかったゾンビ達が見上げる月は、青白く冴える。
春日の眩しい温もりは、しょせん一炊の夢。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
それでも、確かに同じ光を見つめた者たちが切り合い、終わっていく。
お天道様のもとを、自由な明日に向けて真っ直ぐに進む道は、喜一以外に歩めない。
それでも、だからこそ託した。何にも囚われず、人が人として、佐賀が佐賀らしくあれる未来を。
元老の囲い、春を鬻いだ穢れもの、剣にも知恵にも優れた傑物。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
喜一の恋は、明暗様々な意味合いで遠いものだった。結局ゆうぎりは過去に引きずられ、喜一は未来に漕ぎ出して、二人の道は別れていく。
喜一が夢見た平等な未来では、誰もが後ろ指さされず、業に縛られず自在に生きられたのか。
士族反乱の残り火を踏み消し、時代は民権運動へと移っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
佐賀の名が取り戻された後も、大日本帝国(あるいは現代の日本国)には前近代的差別、搾取と抑圧の匂いが強く残るが、それでも甘っちょろい夢は、一つずつ形になっていく。
その中心に、時代に取り残されたゾンビ達の想いが。
それを引き継いだ無垢なる輝きが、あったのだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
全ての罪を背負って刑場に首が落ち、二度目の佐賀の乱…その種子が闇に封じられた今となっては、確かなことはわからない。
ただ冷え切った雪の夜を越えて、新たな光を皆が夢見たのは確かだ。
(画像は"ゾンビランドサガ リベンジ"第9話より引用) pic.twitter.com/JPCHGR877Q
死病を乗り越えた徐福が、生きながらえて見据える佐賀の未来。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
立たれた首をチョーカーで隠し、志を同じくする仲間たちと、剣を持たずに魅せる舞台。
死と無念を超えて、ゆうぎりは今を生きている。
…EDで死んだ人らも幸福に踊ってると、”エンジェルウォーズ”思い出すね…。
写真に封じられた幸福な嘘、無残に終わるしかなかった夢の先に、ゾンビ5号は生きている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
正次郎と喜一相手には生み出せなかった絆を、第二の生で掴み直したという意味では、のほほんと穏やかに見えるゆうぎり姐さんの視線には、相当に強いものが宿っているのだろう。
お互いの過去を、あるいは血生臭い明治初頭の風を知る者同士、交わす盃苦い酒。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
ラベルを”喜一の郷”と読むと、佐賀を離れた後彼が必死に取り戻したものを、時を経て彼の友人たちが飲み干している構図となり、なんとも切ない。
(画像は"ゾンビランドサガ リベンジ"第9話より引用) pic.twitter.com/s5POcywOLr
時は流れ、人は死ぬ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
その流れに飲み込まれかけ、しかし奇妙に蘇った不死人の思いが、白黒の写真に反射して眩しい。
春に逢って、冬に別れた。
女の首が断たれることは、既に承知の恋だった。
そこに刃を握るしか無いゾンビの、それでも夢見た光を切なく照らす、見事な佐賀秘史でした。
次回も楽しみ
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
ゆうぎりが元花魁であり、頼るべき旦那を失って異境に流れてきた、多重の意味合いでのアウトサイダーであること。
それが、彼女に恋した喜一が自由で平等な場所を夢見る輝きに、良い陰りを足していた。
日陰者と蔑まれ、あるいはその実力故に高嶺の花と遠ざけられる。
そんな人と、願わくば添い遂げたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
喜一の儚い夢は哀しく弾けたが、空疎な理想を追いかける青年に、高い壁を越えんとする恋の熱量が宿ることで、薄っぺらくも真正な重さが宿っていたと思う。
喜一があれだけ熱心に頑張れたのは、ただ佐賀を取り戻す理想だけではなくて。
桜吹雪の中出逢った美しい人に、誰憚ることなく思いを届けたい私情が、やっぱあったのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
姐さんの首の傷をもう見ている僕らとしては、それが悲恋に終わることは知っていたが、しかしその結末が青年の熱い思いを無にするわけではない。
夢は醒め、春は終わって雪が降る。
そんな摂理に従いつつも、斬り斬られるしかなかった者たちが見た夢を背負い、光に踏み出していく希望は眩しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月3日
運命の重さと夢の強さを、凄くバランス良く描いた明治伝奇だったと思います。
結構ネタにされることが少ない時代と場所なんで、時代小説としても鮮烈だったな今回…。