”乙女ゲー”をベースにしている以上、恋はこの物語の背骨であり、誘拐事件を起爆剤にジオルドは、自覚的かつ積極的にそっちの方向へと、カタリナとお話を引っ張り込もうとしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
彼が見据えているのは生殖と結婚、ロマンティックな初夜から段階的に続く、宮廷と家庭へのレールである。
王子たるジオルドを伴侶に選ぶことは、婚礼と生殖で支えられる家族性権力構造にカタリナが参入する事を意味する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
封建貴族制の雰囲気を多分に残す、なんだかんだ差別と謀略で成り立つ権力の装置が、どれだけシビアに個性を食い物にして成り立っているか、””現代人”たるカタリナ様には実感が薄い。
彼女自身の輝きが、そういう”前時代的”な世界のヤダ味を遠ざけ、陰口と婚礼戦略を煮込んだ社会に辟易したキャラクターたちを引き寄せた部分もあるが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
血とセックスを通貨に流通する、王族権力の婚礼経済がどんだけシビアか、あくまでノンキに他人事ではあろう。
他人事にしておくために、ひと足お先に成熟した周りの連中が、ヒーヒー言いながら苦労もしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
自分を取り巻く世界がろくでもないと、知ればこそ一足早く子供を止めかけ、カタリナの純粋に未だ子供でいていい救いを貰った連中にとって、カタリナの未成熟はまさに聖域である。
しかし時は必然的に流れ、カタリナ自身もちょっとずつ大人になっている自分、伸びた背丈から見える世界の形を認識しつつある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
継承権闘争、闇の魔法を巡る謀略に巻き込まれて、否応なく暴力と性がはびこる世界のリアルに、危うく接近することも増えてきた。
『ならばせめて、望ましい幼年期の終りを…』と覚悟INNして唇奪い、雰囲気バリバリの別荘で新鉢割り敢行、勝負を決定的にキメる! と、ジオルド様も意気込んだ…が。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
『抜け駆けは許さねぇ! 勝手に大人の階段登らせてんじゃねぇぞ!!』とばかり、有象無象がぞーろぞろ、みんなで仲良く夏旅行である
カタリナが誰かを選ばない、恋に本気にならない、処女を失い不可逆な道へ進まないことは、彼女の幼さを強力なエンジンにする、またもどかしいロマンスという側面もある物語にとって、非常に強力な壁である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
誰かと寝ちゃったら、お話はそこで終わりな構造ではある。
『まだ生殖機械にも、権力のトークンにも成りたくない! 子供な自分も、自由な自分も守りたい!!』つー、あまりに人権的な発想でモゾモゾし続けるカタリナ様に、”二人きりの魔法省”という脱出口をひっそり、笑顔で差し出すマリアが怖すぎるけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
優しい家庭と人権社会に知らず守られ、楽しく安全な子供時代だけしか経験せず死んで戻ったカタリナ様は、世のリアルというのがどんなものか、そこに幼い自分がどんな角度で突入していけばいいのか、良く判らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
人格チートで突き進んだ結果、今のままの自分で突破できない困難にもぶつかってねぇし
周囲の連中もカタリナが子供であること…それによって、幼く純粋な自分を守ることを重視しているので、未成熟な彼女の相談にはあんま乗らず、ノスタルジーで小さなシェルターを作り、そこに安住していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
ジオルドのアプローチは、これを壊すエゴイスティックな覚悟に基づく。
彼も幼い頃からの付き合いがあり、同じ人を好きになった連中のことは、結構大事なんだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
でも変化する状況の中で、それよりも掴み取るべきものを自分で見定めて、口づけで奪いに行った。
その決意は、俺は結構大事で尊いと思っている。世界と自分の形を、彼は己で定めたのだ。
キスもその先も見据えた踏み込みに対し、骨肉の争いとならないのは、環境の中心であるカタリナの人徳であろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
いがみ合い、争い、エゴをむき出しにする。
そういう醜さが嫌だから、皆カタリナに惹かれた。そういうことをしない存在として、自分を作ってきた。
結果奇妙な均衡が発生し、表面を整えた牽制合戦と、それが血みどろの刃傷沙汰にはならない節度が不思議なバランスで、青年と乙女を取り巻くことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
『昔と同じ』キースとジオルドのバチバチは、表面張力ギリギリで青春がうごめく、結構危うい発露なのだろう。
乙女達もかつての冒険を思い出しつつ、一人増えた仲間と朗らかに笑いながら、明るく楽しい夢に浸る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
魔法の森は小さくなり、幼年期から定められていた婚礼と身分の檻が窮屈に迫りつつあるけど、まだまだ夢を見ていい。
そんなあやふやなモラトリアムを、無邪気に…あるものは意図して堪能している。
幼いソフィアが拡げたファンタジーの中で、彼女は龍に勝つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
それは彼女だけのヒーローであるカタリナが、性別を超越して/男性性を投影されて戦い、彼女がその補佐をする形で展開していく。
社会が、年齢が、性別が私に求め、しかし私はそれが私だとは思えないもの。私に混ざるノイズ。
呪いの子と蔑まれる陰口は、ソフィアが求める”私”では当然なくて、自分では掴みきれなかったポジティブな自己像を、カタリナは彼女に手渡した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
その結果として、カタリナは永遠の勇者となった。多かれ少なかれ、カタリナ周辺の子供たち皆が、そう思っているように。
カタリナは自覚して、子供たちを取り囲み殺す怪物を、ぶっ倒したわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
無垢を強みとする彼女は、ただただ”カタリナ・クラエス”であることで全てに打ち勝ち、誰かの特別な存在となり、それを意識しないからこそ無私に、他者を尊重できる。
その輝きが、凡人達の救いだ。
同時にその勇者羨望はカタリナを…彼女を主役にする物語を永遠の幼年期に閉じ込め、成熟を阻害する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
カタリナはずっと無邪気で、おバカで、無敵で、ありのまま振る舞うことで全てを超越できる特別な存在として、作品に固定され続ける…ことを、思いの外この物語、無条件に肯定はしていない。
カタリナ自身も、過ぎ去った幼年期を遠いものとして思い出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
そこにはもういない自分を、薄らぼんやりと認識はしているのだ。
それはつまり、成熟し社会的責務を果たすことを求められ、しかしそれに対応しきれない”なりかけの大人”としての自意識が、彼女の中にあることを意味する。
それは転生前の体験が生み出すものだし、ジオルドの踏み込みが意識させたものだし、成長する心身が自然、彼女に呼び込んだものでもあろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
誰かに求められる存在としての自分。
ただ望むがまま振る舞うことが、必ずしも最大の幸福には繋がらない自分。
伸びた身の丈は、そんな摩擦をカタリナに教える
『大人になんてなるな』と、掌から純朴を滑落とした者たちは言うだろう。失われていくものは、常に美しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
だがそうして幼年期の檻に閉じ込められたキャラクターが、不安に身じろぎしながらそれでも、新しいステージへとより善く踏み出していくことをおのずから望む時。
『大人になんてなるな』という祈りは、エゴイスティックな呪いにもなってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
僕がジオルドの決断を評価してるのは、そこからカタリナの手を取って一生進んでいく覚悟が、エゴでエゴを殺す気合が、静かに満ちてるからなんだろうな…。
しかしジオルドの踏み込みが少し性急なのも事実で、少なくとも表面上は、カタリナはおぼこいモラトリアムにもう少し微睡んでいたいと、幸福な足踏みを望む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
少女たちの雨宿りは、そんな時代と思いを上手く象徴した出来事であったと思う。
自分のあり方を否応なく決めなければならない、激しい嵐。
それを前に、何名か複雑怪奇に粘つく思いを上手く隠して、何者でもない曖昧なわたし達でいられる魔法を共有できる瞬間。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
それが、あのコテージの中には満ちていたのだろう。
実は儚く切ないものが、なかなか上手く書かれたエピソードだったと思います。
僕はこのお話、固定化された超無敵存在が、一生チートして誰かを踏みつけて悦に入るっつー、マッチョな快楽に乗っかってないところが好きで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
カタリナ様の強さは”人格”なので、誰かに勝とうとしないんだよね。敵味方の壁それ自体を、ぶっ壊す方向に話が転がる。
無邪気で無敵な永遠の子供として、作品の中枢に据えられた一人の少女も、変化していく環境、遠ざけられていた社会の歪と、だんだん向き合っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
青春小説的な揺らぎがちゃんとあるのが、僕がこのお話好きなところなんだなーと、再確認するエピソードとなりました。
まー今回震えたカタリナ様の思春期に、がっぷり四ツ相撲仕掛けて向き合っちゃうと、マジで話が終わるのでもうちょい、色々転がっていくんだろうけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
キャリアの一つとして示された、魔法省のモラトリアムにどう入って、どう描くかは楽しみだなぁ…”仕事”だかんね、曲りなりとも。
その無垢を愛してはいるけど、己が望むものを掴むべく大きく踏み込んだジオルドの決意も、無下にはしてほしくないし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
物語が積み重なって生まれてきた重たさに、このお話なりにじっくり向き合おうとする姿勢が透けて、とても良かったです。
この青春のスケッチから、どんな話を紡ぐか。次回も楽しみ。
追記 個別に変化生成する”生き物”としての青春を、カタリナを中心に描くジュブナイルとして、やっぱいい切れ味持ってる気がすんのよね。
…やっぱ自分はこの話、異世界転生チートモノでも、少女漫画的ロマンスでもなく、児童の物語として見てんだな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
徹底的に、理想的に”子供”であるカタリナ様が、子供であることを許されなかった子供達をどう救い、変化させ、それによってどう変化していくか。
救済が檻にもなりかねない作中の/メタ的構造のなかで、どうキャラクターの生きた願いに向き合い、嘘なく試練を用意し、じっくりとでも変化を肯定していくか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月7日
そういう部分に、視聴の眼目がある。あんま多数派の視線ではないんだろうけど、自分的には結構好きな見方だったりする。