王様ランキングを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
ドーマス、ホクロと共に城を出たボッジは、旅路に様々な学びを得る。
命の輪廻、力の意味。
狂える王が見せる神秘は、冥府に堕ちる定めを示す。
食い、食われるしかない権力の荒野に捨て置かれ、ダイダは兄を殺す。
鏡を伴に降りた先に、待つのは力か、破滅か。
そんな感じの第4話にして主人公死亡ッ! 様々な予兆が渦巻く本格貴種流離譚、王様ランキングである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
お城を出てみると、非常にファンタジックで意味深な描写が随所にあふれて、大変に心地よい。
世界の真実を照らす神秘は眼前にあって、しかし愚者はその意味を介せない。
取りこぼし、突き落としてしまったものをどう取り戻していくか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
無力や罪は、果して人の身で贖えるものなのか。
そんなことも視野に入れているのかと、ワクワクさせられる第4話であった。
こんだけ古い理が息づく世界観だと、冥府下りは不帰の死ではなく、地の底から知恵を持ち帰る旅でしかない。
なので、ボッジも力の理論溢れる現世を一旦離れて、そこに舞い戻るための術を、冥府で身に着けるのでしょう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
同じく地の底へと沈み、死せる父の力を不当に獲得しようとしてるダイダ王にも、まーロクでもねぇ未来が待ってるんだろうなぁ…。
兄弟の対比が残酷に鮮烈だが、さて物語はどう転がるか…。
ともあれ、物語はドーマスの回想から始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
後に主を弑する大逆者であるが、最初は己のすべてを伝える意気に燃え、手話によってコミュニケーションしようと学ぶ気概があった。
教師役がヒリング王妃なの、先週見てるとLOVEやね…。
(画像は"王様ランキング"第4話より引用) pic.twitter.com/MNEgQc2w3O
最初は膝を曲げ、王子の非力にドーマスも寄り添っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
『強さだけなら一位』なボッス王が国に敷いた、真正面から闘う”男らしい”スタイル。
それを自分の生き方と引き寄せたドーマスは、明らかにそれに適応できないボッジに、別の生き方を提示できない。
心は離れ、高く冷たい場所から見下ろす。
一代で国を作る偉大な王の生き方が社会のスタンダードとなり、全員その荒々しさを見習わなければいけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
ボッジもダイダもドーマスも、死してなお巨大な父王の影から出れず、それに苦しめられている感じがある。
非力で身軽な特性に応じた剣技…あるいは生き方が、思慮の外にある状態だ。
それでも分かり合おうとする努力はそこにあって、ドーマスは手話を学び、ボッジの領域に歩み寄ろうと試みる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
時を経てこのコミュニケーション・メディアが、『王様らしい王』を目指すボッジの心をへし折り、体を傷つける原因になるのは、なんとも悲しいことだ。
同じく『王様らしい王』を目指し、ある程度それに成功したダイダに傷つけられたボッジに、異形のマイノリティたるカゲ、あるいは癒やしの力を持つヒリング王妃が寄り添う立場なのは、なかなか面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
マチズモの影を追うものは、柔弱であることを定められた少年に敵対するしかない。
それは最初から定められた戦いではなく、敵は外側にだけあるわけでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
ボッジが『王様らしい王』に近づこうと足掻くことで、周囲と断絶した孤立にハマってしまっている様子は、既に描かれている。
指南役の努めを放棄し、絶望に追い込んだドーマスも、最初は思いを繋げようとしていたことが判る。
王が死に、不当に後継者の地位から追われたボッジは、王冠を置いて旅に出る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
高い身分、巨大な父の子である烙印を置き去りに、自分を癒やしてくれる母にキスして旅立った事は、彼を縛り付ける鎖からの開放を、どこかに暗示する。
しかしその旅路は、厳しく暗くもある。
ボッジとドーマスが確かに繋いでいた掌は、無言の言葉を紡ぎ、お互いをわかり合うメディアにもなり得たはずだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
しかし権力と継承をめぐる嵐の中で、二人の心は離れ、より善く…本当にそう在りたい自分として生きることは、大変難しくなってしまった。
弱いことは嘲りの対象であり、誰も誰かを守らない
ボッス王の国≒家は、そういう場所になってしまっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
ボッジが王冠を置いてそこから離れていく歩みと、ダイダが継承してしまった暴力的なマチズモにドーマスが飲まれていく過程が、重なっているのは残酷である。
王子を殺し忠を示したことが、ドーマスに何をもたらすか。
その先行きは、どうにも暗いと言わざるを得ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
玉座に座ったダイダは鏡の傀儡だし、それを保証するランキング制度は信用できない。
一位に上り詰めたものが付与された宝が、指し示すものは死…もしくは狂気。
いや、確実に超良くないでしょソレ…。
(画像は"王様ランキング"第4話より引用) pic.twitter.com/b26mJzPCDB
ボッジは城≒父の領域から離れたところで、人形劇には過大な金貨の支払いが、人の欲心を不当に煽ることを知る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
幼い興味の赴くまま、自由に走ることで痛い目を見て、なにか大事なことを学ぶ描写は、後の狂える巫王との出会いとも共通する。
王冠あったし、あの人ランキング一位の成れの果てか…。
世界には危険な欲があり、持てるものには責任が付きまとう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
旅の名目である手紙が無くなっても、ドーマスが『まぁしょうがないかハハハッ!』みたいな顔してるところに、現王と交わした黒い密約が透けている。
そんな思惑はさておき、旅はボッジに色んな事を教える。
対してダイダは城に囚われ、ランキング制度のど真ん中で屈辱を味わう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
ベッキリへし折れたちっぽけな剣は、雄大にそびえる父王の鬼棍棒と、残酷な対比をなす。
偉大なるマッチョが堅持する、怒張した力の象徴。
未だ子供であるダイダに、そんなものはない。
それでも玉座を付いだら、力で判別される。
マチズモの檻はダイダを捕らえ、『王者かくたるべし』と鏡は残忍を教える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
それが国のため、偉大な王の後継者の為すべきことなのです。
ここら辺、ヒリングかーさんの影響力が実子に及ばぬまま、悪しき母に乗っ取られた感じがあり哀しい。
大事な義理の息子は死にかけるし、災難だな…。
ダイダを捕まえている『かくあるべし』(ボッジが今正に、自由になろうとしているもの)は、自分で選んだものではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
親から与えられ、あるいは協力者のふりをした邪悪の囁くままに、自分の願いだと思い込まされているものが、王冠をまとって暴走している。
子供なのだから周囲の影響力を跳ね除けることは難しいし、自分を間近に取り巻いていたものを跳ね除けるべく、少年は旅をするのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
しかし不当に兄を押しのけ、玉座に座ってしまったダイダは、城の外に出ることは出来ない。
力を読むシステムの査定に、未熟な自分を思い知らされ、屈辱の涙を流す。
ランキングの方も野放図なパワー主義を全肯定しているわけではなく、『強さだけなら一位』のボッス王は、実際はランキング七位である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
では強さ以外の何を以て、王の王たるべきを測っているのか。
ここはまだ、黒い霧の向こう側である。
そしてそこにこの作品が何を是とするかが、あると感じる。
王たるものの重責を、正すのか飲み込むのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
王子にはどうせ聞こえまいと、読唇術を想像せず冷たく語る食卓で、少年はモリモリ食って部下に勧める。たんとお食べ…。
ここでは無邪気に、無条件に供されていた食事。
(画像は"王様ランキング"第4話より引用) pic.twitter.com/YJTM1dqe4u
それが命の営みであることを、ボッジは森に迷い込み、死にかけることで体験していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
城壁で覆われ、文明化された世界から離れた場所にある、むき出しの輪廻。
超自然的な”森”が、犠牲の魂を吸い上げ新たな生命を生む、幻想的なスペクタクル。
それはこの世界の事実であり、抽象的な説話でもある。
狩りをし、踊り、火に焚べた肉を食べる狂王は、王権の非常に古い形を体現している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
ボッス王が城下に敷衍しているマチズモと違うのは、ある種の平等性と感謝を、彼が殺すものに抱いていることだ。
殺すものは死ぬものに簡単に変わり、しかしそれは自然な営みでもある。
野放図な自然に身を置き、国土も権力も持たない王は狂気に身を任せ、覆い隠された真実に親しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
全てが平等な輪廻の中にあるのなら、ダイダやドーマスが囚われている力の専有、マチズモによるエゴの保護も、簡単に壊れてしまう。
ボッジは一人危険に迷い込むことで、それを体験する。
食うもの、踊るもの、あるいは犠牲として。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
城の外側にある原初のルールを、ボッジとはぐれたドーマス、あるいは城に囚われているダイダが学べないのは道理であり、また哀しい。
彼らが身に付けたマッチョな力を、非力なボッジが持っていない事は、真実を学ぶ資格、軽やかな自由と裏腹…なのか。
ダイダとは別の形で、あるいは根底では同じく、幼子たるボッジは『自分が本当はどうなりたいのか』を未だ知らないと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
父に憧れ、腕立て伏せが千回できる立派な男になりたいという願いは、まだまだ彼の心にくすぶっていると思う。
その代理になる理想は、まだ明瞭な形を得ていない。
ただ様々な運命と出会い、そこから生まれる兆しは軒並み、彼をボッス王のコピーにはしない方向へと運んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
国土なき狂える王がここで出てきて、人間社会では観測できない大きな真実を示すのも、その一環だと思う。
冥府への落下も、離脱の一環になるのだろうか?
それは先の話として、狂王は教えるべきを教え、ボッジを灯火のもとへと開放していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
闘争の火種、肉を炙るもの、文明の象徴。
ボッジが森の中に火を見つけ、火によって見つけられるのは大変象徴的だ。
それは再び集うための証であり、死の根源ともなりうる
(画像は"王様ランキング"第4話より引用) pic.twitter.com/zWkUGfJJdG
子を養うために親狐は肉を奪い、それは鉄に塗られた毒を通じて、守るはずだった子を殺す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
狐は在り得たかも知れないボッジの未来であり、文明圏である城に巣食うものを、その死体によってあぶり出す。
鉄、毒、火、罠。
ボッジを取り巻く世界には、ちょうちょと人形劇だけがあるわけではない。
ボッジを食い食われる輪廻の犠牲にせんと、狂気をむき出しにした巫王の背後に、大きな月が照るのも面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
狂気(Lunatic)の根源は、やはり月(Luna)なのだ。
しかしそれは、街が都合よく覆い隠す真実が率直に暴かれた結果に過ぎない。
己のために誰かを殺し、あるいは養おうとして何かを奪う。
そんなルールから逸脱したところに、ボッジが目指すべき真の王道があるのか、無いのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
幸か不幸か、デカい棍棒で何もかもなぎ倒すスタイルを取れない彼は、墓前に花を添え、悲しみに寄り添う決断で、既にホクロと繋がっている。
(画像は"王様ランキング"第4話より引用) pic.twitter.com/RfaRBfXhSy
家族を失った悲しみに花を添え、心を寄せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
そんな繋がりに救われたホクロと、同じものを持っていたはずのドーマスは、虚ろな瞳に犠牲の姿を移して、ボッジを冥府の穴へと叩き落とす。
そこにも赤く、炎が燃えている。
それは贄を焼くための凶器か、はたまた新たな始まりの合図か。
ドーマスが死せる狐の親子に心を寄せず、ホクロが葬儀を言い出すのは象徴的だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
ボッジから同じものを受け取りつつ、ホクロの中ではそれがまだ生きていて、ドーマスはそれを殺している。
あるいは、殺そうと努めている。それが忠臣の、あるべき姿なのだと。
(画像は"王様ランキング"第4話より引用) pic.twitter.com/m13pwU1tbH
ドーマスに兄殺しを命じたダイダもまた、本来あって欲しい自分と、あるべきと縛り付けた己の狭間で、ズタズタに引き裂かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
夢の中で、ダイダは災厄を封じた箱に出会う。
それを開けなければ、立派な棍棒を携えた王に…マッチョな大人にはなれないと、鏡が囁く。
白雪姫の説話を、ジェンダーを反転させながら面白く再話する、鏡とダイダ(そこに関与できない”母”たるヒリング)の関係性。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
鏡は助言者の顔で、ダイダが本来為すべきこと、なりたい自分に近づく道を示している。
しかしそれは、子供でしか無い彼にはしっくり噛み合わない、押しつけの王冠だ。
自分の姿を透明に反射するようでいて、その実身勝手な石を抱えて、自分の姿を乗っ取る存在。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
純真な願いを歪め、一方的に簒奪するルールで包囲するもの。
鏡は”親”…あるいは”大人”の、最も悪しき姿を体現しているように見える。
夢の中でしかダイダは泣けないし、脆く小さな己に戻ることも出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
眼が醒めれば涙は乾き、無垢で自由で不屈の兄を救いと慕う気持ちは、焦燥と嫉妬に反転してしまう。
大人びた王の顔は、果して素顔か、仮面か。
鏡は何も応えない。
(画像は"王様ランキング"第4話より引用) pic.twitter.com/soVtuvRI2y
鏡が推奨するボッス王の力の継承は、地下墳墓に潜り、棺の蓋を開けることで行われるようだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
己が死を命じた兄が、炎の冥府に旅立つ姿に重なるように、ダイダもまた深く暗い場所へと降り立っていく。
死に近づくことで、生を知るのか。
追放されることで、自由を得るのか。
物語は続く。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月5日
夢の中で不幸を封じたパンドラの匣を開けることと、地下に潜って父の棺を開ける未来がリンクしてるとしたら、やっぱりボッス王の力の継承はマジロクでもない結果しか呼ばない気がする。
巫王と転輪する森を描き、超自然的な兆しに大きな意味があると見せた後だと、夢は時に現実よりも真実を射抜く
仮にボッス王の棺から、でっけぇ棍棒をぶん回せるパワーを継承したとしても、それはダイダ自身が積み上げたものではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
鏡に示唆されるまま、自分自身求めているのだと思い込まされるままに、条理をひっくり返して死霊を現世に解き放つ、呪いの行為かもしれない。
しかしその危うさ、卑劣さにダイダは気づけ無いし、自身を汚すマッチョな邪悪さを、ドーマスに敷衍さえしてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
力強くなければいけない。
そうでなければ評価されず、嘲られ、踏みにじられて犠牲になる。
本当になりたい自分を、あるがまま周囲に認められる栄冠も、けして訪れない。
そんな檻で国土を、家臣を、家族を閉じ込めてしまっているボッス王は、かーなり良くない存在だったんじゃないか…などと思う回だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
だとしたら、階段を降りて墓所へ進む道のりは、死せる父との対話、権力の移譲などでは終わらず、兄よりも冥府に近い行いなのではないか。
あからさま死んでる風味のボッジの未来は、『まー英雄だし、冥府下りでパワーアップだろ!』と楽観できるのに、好き勝手絶頂悪いことしてる用に思えるダイダくんの明日が、どん詰まりの暗闇にしか思えず心配になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
そんなエピソードでした。
いやー…子供を恣にする存在は、やっぱ良くねぇな…。
旅が意味するもの、街と森、鉄と火。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
ボッジの旅に重ねて、説話的・神話的モチーフが作品に深く食い込んでいるのも、個人的な興味領域とシンクロして、大変面白かった。
狂える巫王がボッジに見せたものが、今後どう生きてくるかは楽しみだ。
あとホクロさんの親愛が、報われるかも。
決定的なひと押しを果たしてしまったドーマスも、望んで悪と落ちたわけではなく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月4日
どうしようもなくそういう場所に引き寄せられてしまう弱さと業を、この作品世界はどう受け止め、どう報いるか。
冥府の旅路は、王子に何を教えるか。
物語の色んな要素が蠢きだして、大変いい感じです。
次回も楽しみ。