ルパン三世 PART6を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月22日
内蒙古のお宝をめぐる三つ巴は、複雑怪奇な色彩でめぐる。
敵か味方か夢うつつ、懐かしき帝都の夢は、機械が見せた悪夢に過ぎないのか。
唐突に醒める浪漫の奥、愚物が仕掛けた罠を引き剥がす時、怪盗紳士が不敵に微笑む。
うつし世はゆめ、夜の夢こそまこと…。
そんな感じの怪盗帝都幻想譚後編、ネタバラシと多重メタ構造のルパンPART6、第6話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月22日
唐突に始まった帝都転生は空想と現実、過去と現在の合間を漂いながら、一つの決着へと突き進んでいく。
第4話とはまた違ったペダントリーが踊りつつ、鏡合わせの多重構造に心地よい目眩…と言ったところか。
当初想起されていた名探偵 VS 怪盗の構図はどんどん解体され、大正デモクラシー VS 昭和軍政ともいうべき構図が、内蒙古の秘宝を鏡に暴かれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月22日
軍人探偵・本郷義明。
まさかのゲスト参戦は、八紘一宇を本気の夢と見れた、短い時間へのノスタルジーか。
この前後編、一番でかいネタと僕が感じたのは、冒険小説への哀歌である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月22日
今はもう覚えているものも少ない山内峯太郎の描いた、大アジアを股にかけたロマンが恐慌とナショナリズム、差別と砲火のリアリティで塗りつぶされていく未来が、あの帝都には待っている。
私欲で東亜を食いつぶす悪漢を前に、時間と虚飾を飛び越える特権者たるルパンは『あいつらの夢は潰える』と語った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月22日
しかし僕らが年表で知るとおり、あるいは作中に描かれたとおり、怪しくも魅力的な怪人たちの帝都は、戦火に包まれる前にファシズムに飲まれ、その輝きを消していく。
大元帝国の末裔が誇り高く草原を駆け抜け、その独立を帝国軍人が支援するような大冒険は、現実の生々しい話運びの前に潰え…あるいは、プロパガンダとして利用されてもいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月22日
醜く悪しき夢が終わるよりも早く、輝く思い出は屍となり、その上に一つの終わりがやってくるのだ。
それでも、麗しく妖しき怪人の饗宴は死なず、形を越えて蘇る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月22日
”ルパン”が血を越え時を超え今、PART6を演じていることが、明智小五郎の、本郷義昭の、お転婆令嬢の駆け抜けた大冒険が未だ死んでいない、一つの証明なのではないか。
あの時代、確かに瞬いた夢の継承者として、華麗に盗み戦う怪盗紳士。
古くて新しくあり続けるために、幾重にも批評的リバイバルを繰り返す”ルパン”の体内に、冒険小説のエッセンスは強く流れ込んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月22日
怪しげな超絶VRを大からくりに、夢うつつの境をあやふやに、時を越える冒険を編んだ狙いはそんな系譜の活写にあると、僕は感じた。
デモクラシーと繁栄の残り香が、微かに活劇を成り立たせていた時代。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月22日
それは戦後を生き延びた令嬢が大人となり、年老いて見た美しい夢であり、ルパンはそんなロマンに敬意を払い、夢の中から現実へ逆撃をしかける。
面白くもねぇ、銭金狙いの業突く張り共に、挑戦状を紙飛行機にして。
鏡地獄にも似た現実からの干渉を、逆手に取って夢から醒める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月22日
あるいは、夢を夢のまま終わらせる。
機械に封じ込められた思い出の中で、ルパンは何も盗まない。
与えられた役割をこなしつつ、目覚めるための手がかりを集め、真実を暴いて世界を壊す。
まるで、名探偵のように。
この転倒が、今回引用された山中峯太郎がホームズの一大翻案者であり、陰気な名探偵を大冒険野郎に変えて語り倒したことと、僕の中で不思議に呼応する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月22日
語り手によって様々に形を変え、信念を変え、あり方を変え、なおホームズ/ルパン/明智小五郎/本郷義昭であるアイコン達。
架空の彼らは存在し得ない不思議な秘宝を追い、現実では勝ち取り得なかったロマンを歌い、あるいはそんな物語にカウンターを当てるかのように、現実に対峙する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月22日
そんな実在と不在の呼応の狭間に、このエピソード…を内包するPART6,それが放送されている現実もある。
ワンアイデアを豪腕で押し通る語り口は、TVスペシャルらしさもあって結構好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月22日
好みをいえば、もうちょい水気を絞った劇作だと良かったかな、という感じもあるけど、このワチャワチャてんこ盛りな感じには乱歩の風味もあって、これまた嫌いではない。
ルパンは様々なヒントを編み上げて、虚構/過去/夢/浪漫の外側にある、現実/現在を見定める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月22日
それはミステリというにはあんまり夢がない、夢みる機械を罠に使った犯罪である。
その生っぽい質感を軽やかに越えて、ルパンは夢のような現実…あるいは現実味のある夢を駆け抜けていく。
その軽妙さに、あの時代の帝都に確かにあった浪漫を嗅げる話で、なかなか良かったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月22日
こんだけ浪漫浪漫と感想に書くと、パンチ先生がキャラデザした傑作”幕末義人伝 浪漫”を思い出して、心地よくノスタルジーが燻る。
俺はあのアニメ、本当の傑作だと思ってますからね。みんな見てね。
さておき、妖しく輝く帝都は怪盗の夢ではなく、そこで輝いた夢を食いつぶされ、帝国主義の残骸が燃え残る焼け野原から”戦後”を生きた、一人の女の名残である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月22日
男と女の境界線も、軽やかに越境していく内蒙古の王子が、夢見た故国の再興。
それもまた歴史の激浪に飲まれ、消えていったのだろう。
あるいはあの世界には内モンゴル自治区とモンゴル国ではなく、大元イエケ・モンゴル・ウルスが再興なっているのかもしれないが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月22日
そんな奇想を遊ばせるのもまた、眼を開けて見る夢、闊達な空想…とまとめると、ちと綺麗すぎるか。
廃墟に刻まれた怪盗参上のサインは、果たして夢か幻か。
その答えを読者に委ねるのが冒険譚の、浪漫物語の大事な鍵であり、あやふやで豊かな幻惑に満ちたラストとして、僕はとても好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月22日
”現実”に挑むのがゴエちゃんとルパンってのが、結構珍しい組み合わせだったのも良かったね。
斬鉄剣の不在が謎を解く一つの証拠なのは、好みのクスグリだ。
かくして怪盗は名探偵めいた活劇の果てに夢から醒め、微かな浪漫を紙飛行機にして守った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年11月22日
クセの強い短編集を終えて話は本道に戻り、舞台はロンドン。
快傑ならぬホームズは、どんな因縁と感情を隠しているのか。
しっかり語られそうで、次回も楽しみである。