東京24区を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
グルフェスの悲劇から三ヶ月。
24区のスラム・シャンティタウンに、梢の姿があった。
彼女を追いかけるシュウタの走りに、かつての野放図な確信はもはやない。
選ばれたとしても上手くなんてやれない僕らに、英雄の資格なんて、あるんだろうか?
そんな疑問が東京番外地に踊る、24区第4話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
シャンティタウンとDoREDの紹介をやりつつ、監視社会の実情とカバ先生の弔い、グラフィティアートの意義を静かに彫り込んでいく感じのエピソード。
なんつうか…このお話、展開が地味なときのほうがいい感じな気がするな。
人として、やれることをやる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
そんな等身大のヒロイズムに殉じたカバ先生は、作品が追うべき倫理を体現した立派で大事な人だ。
だから彼が死んでしまった悲しさ、その尊厳は丁寧に扱ってほしかったわけだが、弔意のこもったスーパーカバちゃん連作は、なかなかいいアンサーだったと思う。
幼さが目立ったシュウタにもガッツリ重い現実が突き刺さり、迷って足が止まった…所で終わらず、梢ちゃんのケアも含めて、彼なりのヒロイズムに視線を上げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
秩序と自由。
親友たちが背負う相反する(ように思える)価値の間にどう立ち、どう媒するか。
能力は脳筋パワー勝負なのに、シュウタが目指すべき中庸の徳は頭使った対話でしか為し得えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
彼は特別な力に頼らず賢くなり、他人の気持ちや事情が推察できる優しい大人になることでしか、カバ先から継承し梢が教えてくれたヒロイズムを、自分に引き寄せられない。
今回ああいう立ち直り方をした以上、シュウタはもう独善的にはなれないわけで、複数の正義の間で難しいバランスを取る調停者の立場へ、今後進んでいくのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
二択問題を作品の真ん中に据えつつ、第三の答えを探させてるこのお話の主役が、そういう立場に行き着くのは納得だ。
今回のエピソードは街のスタンダードから外れたシャンティタウンと、そこを根城にするDoRED、彼らが戦うものを掘り下げていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
”秩序”なるものは既に権力と暴力を手中に収めた側の都合に合わせて設計され、それを強化するように加速していく。
そしてその意思は、巧妙に透明化されていく。
区長がカジノ王と話す時、メディアを通じた世論醸造を当然の技術と受け入れ、ハザードキャストに頼らない未来予測をしてるのが印象的だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
特定個人(あるいは集団)の都合のいい波を起こす時、発言者は『これから偏向したプロパガンダをします』とは絶対に言わない。
むしろどれだけ自分が透明で公平で正しいかを強調しながら、視聴と情報を受け取るものが望む方向に動くよう、巧妙な誘導を仕掛けてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
それは宗教とか報道とか教育とか、人間が様々ん積み上げてきたシステムに必ず付きまとう暗い影で、最新技術が急にその偏向を生み出したわけではない。
DoREDはハッキングとアートを通じて、偏向されないシャンティタウンの現実を、どうにか伝えようとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
監視カメラ網から取り残され、立入禁止の札と『あそこは人間の住むところじゃない』という噂によって”無い”ものにされている場所にも、人間が住んでいて色々苦しんでいる。
社会システムは時にその巨体の影に、声なき少数派を覆い隠し、”無い”ものにしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
それが秩序と対等の声を手に入れれば、現行の社会システムは揺らぐからだ。
その揺らぎこそ健全な社会維持に必須だと考える人もいるから、普通選挙は最も重要な権利であり義務の一つなわけだが。
地図から抹消され、住民票を発行されない番外地。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
監視し登録する近代(の延長線上にある現代)社会システムが取りこぼした場所で、選択肢を狭められ生きる人達のリアル。
ランちゃんはそれを、スプレー缶で世界に訴えたいわけだ。
それを可能にするセンスもアタマも、しっかりある。
同時に穏当な芸術革命だけだと対処できない問題に、力強くドロップキックカマして自警団活動もやっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
ホームの雰囲気に合わせた秩序の維持、理想の形成って意味じゃ、正反対に見えるコウキと同じことやってんだよね。
でも立ってる場所が違うと、見えるものも追う理想も変わってくる。
透明化された監視と支配はインフラ化し、””ハザードキャスト”がもたらす安全は、24区の”マトモ”な住人にとってはもはや当たり前である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
その”当たり前”が機能しなかった竜巻は、果たしてカルネアデスが生み出した天災なのか?
ここら辺は、次回以降掘り下げる部分かな。
人々が”ハザードキャスト”を受け入れるのは、それが便利で安心だからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
ちょっとの窮屈を受け入れるだけで、不可避の災厄を回避できるなら、権利の扉は簡単に開く…という話かもしれない。
理念ではなく実益で、ゴリゴリ状況整えられるのは今っぽい描写だなぁ、と思ったりもする。
高度な監視技術をベースにする”ハザードキャスト”は、開発から取り残されたシャンティタウンを置き去りにしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
オフィス街と商店街、スラム街。
土地に塗り分けされた階級と価値観の分断は、流動性がなく固定化されつつある。
隣町の風景、そこに住む人は加速度的に見えなくなる。
コウキが当然の権利であり義務と考える多数派の幸福は、”無い”存在にされた少数派を不可逆な場所に追い込みかねない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
ここにグラフィティで抗議し、感動で自分たちの存在を突き刺そうとしてるのがランちゃんなわけだ。
力なき者のプロテストは、時に苛烈な暴力へと繋がっていく。
無力なまま圧殺されていくか、正しくなくとも声を上げるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
これもまた、無慈悲な二択と言えるだろう。
おそらく”カルネアデス”の横車もあって、アーティストじゃないクナイは後者を選んだわけだが、その短絡的な絶望にランちゃんとシュウタは、どう向き合うのか。
グルフェスの悲劇、カバ先の死の重さと一話かけてゆっくり向き合うエピソードの先に、アクションと決断が待っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
そこがちょっとポップに過ぎて、リアルでシビアな手触りのある問題設定からは浮いてる感じも、ちょっと受けるんだよなー…今回くらいの地道さが、個人的にはしっくり来る。
とはいえスラム街に押し込められ、現状改革の手立てなく暮らしているシャンティタウンの現状は、優れた美術を通してよく伝わったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
ただの薄汚れた場所と価値判断を押し付けるのではなく、そこには独自の美があり心意気が宿っているのだと、”絵”で理解るのはとてもいい。
ランちゃんのアートが封鎖線を越えて人の心を動かすのも、錆びて汚れて…だからこそ美しいシャンティタウンが、彼の”ホーム”だからこそだろうしね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
その筆先に、カバ先生が死んじゃった悲しさ、強い敬意、肉体の死で終わりにしない決意が宿っていたのも、とても良かった。
自分が万能の英雄なんかじゃなく、むしろ首を突っ込むことで次回を悪化させる凡人以下なのではないかという悩みに、シュウタは直面する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
それを越えていく鍵は、ダチが世界に向けて突き立てている綺麗で立派なアートを自分の目で見て、そこに込められた意味を肌で感じることだ。
シャンティタウンの現状に絶望せず、グラフィティに主張と理想を込めて心を変える。世界を変える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
ランちゃんはかなり落ち着いたのんびり屋さんで、その余裕がDoREDをテロルから遠ざけてもいた。
握ったのがスプレー缶ではなくリアルな爆弾だったら、梢ちゃんは救いをそこに見なかっただろう。
まだ世界を変える力が自分にあると信じられる、若造の寝言かもしれないが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
それでも父を失い現実に苦しむ少女が、もう一度笑える手助けを少年たちは、ちゃんと果たした。
脳筋なパン屋の息子と、スラム街のアーティストは、異能に目覚めなくともそういう力を持っているわけだ。
今回のエピソード、アートに何が出来るのかを焦りなく、力強く語っていて、結構好きな仕上がりである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
ランちゃんは芸術それ自体を追い求めるのではなく、芸術を通じての他者/世界改変を望むアクティビストなので、こういう書き方になるよね。
でもそこに理想が先走らず、体温がしっかりあった。
”カルネアデス”が、ハッキングとグラフィティという弱者の武器、未来予測という強者の武器を両方兼ね備えた、主人公たちの対存在であることも分かってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
クラッキング能力を情報テロルに用いていることからも、今後は広報戦が大事になっていくのかなー、と思ったりもする。
俺より上手く出来る人が世界にいるかも知れないけど、今は俺しか出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
万能感によっていたシュウタは死と挫折を経て、そんな現実認識に居場所を定めていく。
この実感を個人で終わらせず、人間で構築されその総和を越えている社会全体に、どう伝えていくか。
どんな理念を見つけるかで留まらず、それをどう広報し活動していくかっていく、社会的ヒロイズムまで描けたら、面白い作品になるかな…という感じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
まーエンタメとしてのワクワク感とか、成長のドラマとかと並走共鳴させて描く必要があるから、大変難しいとも思うけど。
やり遂げてほしいなぁ…。
自意識の挫折と失敗の苦さにふさぎ込んでいたシュウタが、同じ傷を受けた梢ちゃんをケアするなかで、自分の道を定めていく描写も良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
ガキでウゼー所から始まる主人公だったけど、だからこその伸びしろが前に出てきて、なかなかいい感じじゃないでしょうか。
さて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
シャンティタウンのどん詰まりを加速させる”D”の毒も気になるけど、今は予見されたテロルをどう捌くかが問題。
薄汚ぇ多数の金持ちと、心を通わせたはずの一人の身内。
ランちゃんの天秤はどう揺れるのか、って所で次回に続く。
”公平”な視線で見ると、二択にはなってないわけだが…
しかしテロルに追い込まえるまでの個人的事情、これまでの付き合いと通じ合った心を足すと、”公平”なはずの天秤はひっくり返っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
犯罪は社会が生むのか、個人の責任なのか。
クナイをどう処するかは、法と秩序、一番の根っこを問う難問だ。
一見無関係なコウキが、一番考えなきゃいけんつーね。
ランちゃんの『現行権力が提供するシステムは、その利益を最大化するように透明化され、当然視されていく』つう指摘は、まぁ事実だからな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
”公”なるものが否応なく縛られる、透明な枷。
これを壊し真なる”公”を実現していくのは、LAWな主人公であるコウキの仕事になるだろうしね。
これは有史以来、一度も完全な回答が出たことがない凄まじい難問なので、作品がどう説得力をもたせて描いていくか、かなり難しいと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月1日
ポップさとリアリティのバランス取り含め、最後までこういう難しさと取り組まざるを得ないこのアニメ。
果たして次週どう描くか、楽しみです。