ルパン三世 PART6 第15話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月9日
古き港町、マッシリア。
スラム街の女医が貴族の奥方となるシンデレラ・ロマンスに、硝煙をまとったガンマンが寄り添う。
思い出の中微かに揺れる、真白き鈴蘭。
外道の牙から女を守るために、次元大介は光射さぬ裏路地で、愛銃の引き金を引いた。
そんな感じの、大塚次元初の女絡みエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月9日
大変良かった。
『次元と女』っつう骨から美味しい部分を抽出し、濁りなくシンプルに纏めた感じの仕上がり。
昔の女、その婚約者、悪漢兄弟と、ゲストキャラの造形が妙に好みで、類型をなぞりつつ独自のコクがあった。
話としては幾度目か、命を助けられた借りを返しに、次元大介がひっそり影から女を守るエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月9日
PART6でそういう立ち回りをされると、リリーを亡父との約束に従い律儀に守っていた、ロンドンのルパンおじさんを思い出して、ちょっとフフッとなる。似てるねぇキミら…。
歴史あるマルセイユを描く筆はうっすらぼやけていて、明度も彩度も低くけぶっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月9日
それは思い出の色、振りちぎれない過去の色であり、暴力の色でもある。
優しく美しい谷間の百合、女医ミレーヌには似合わない色だ。
殺し屋、次元大介のホームの色合いとも言える。
帽子に隠した眼差しがチャームポイントな次元が、ミレーヌが絡むとよく瞳を見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月9日
それは彼の人間味であり、ハードボイルドに生きるためには投げ捨てなければいけない涙の源でもある。
思い出と未練をお互い振り捨てて、男と女は出会うことなく別れていく。
その時湊町であるマルセイユが本来の色彩を取り戻し、青く澄んだ海が大写しになるのは、爽やかでとてもいい演出だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月9日
次元は報酬たる”マルセイユの涙”を、一切躊躇いなく海に投げ捨てる。
涙を流さぬ理念の塊だからこそ、貫ける美学というものがあろう。
ミレーヌの婚約者が、結構骨のある誠実な青年であり、そこに次元が”男”として裏通りの住人として、しっかり助言をして押し出すのも良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月9日
拳銃片手に、全てを自分の腕だけで掴んできた男と、自分は何も成し遂げていないと悩む男。
何もかも正反対な恋敵は、人生の力点で一瞬だけ重なる。
第8話でも悩める少年の背中を押す仕事をしていたが、PART6の次元大介は助言者としての顔が、深く彫り込まれていて渋い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月9日
あそこで昔の女を預けるに足りる器量を、青年に感じたからこそ後腐れなく、”涙”を美しい海に投げ捨てれた、という話かもしれない。
そんな婚礼を狙う野良犬達だが、クズはクズなりに奇妙な絆があり、それを歯牙にもかけずぶち抜くことで、次元の乾いた人生(に宿る湿り気)も、よく描けていたと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月9日
フレンチノワールな香り漂う、闇の中の銃撃戦。
ナイフ使いに迫られて、迷わず銃を捨ててその刃を逆手に突き刺す。
その非情が、汚れた守護天使を演じる情と面白い反応をして、次元の顔を照らしていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月9日
銃を握り殺しに踊る時、次元大介は瞳が見えなくなる。
ミレーヌに血を流す生身を癒やされ、想いを交わしていた甘やかさを切り離すために、次元は非人間的なガン・マシーンに自分を追い込む。
その強がりが、なかなかにチャーミングであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月9日
弟を殺された兄が、その遺品でもって意趣返しをしようと構えているのが、クズなりの情を感じてよかった…し、それも容赦なく乱入してぶっ殺す次元も、固茹で味を徹底していてグッドでした。
敵も味方も、情は確かにある。
でもそれは貴族と女医の寿ぐべき婚礼みたいな、マトモで優しい形にはけしてならない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月9日
でも一瞬、交わるはずのない光と影が交錯したことで、お互いの人生は決定的に揺れて動き…その余韻を、男も女も投げ捨てていく。
ミレーヌこそが、したたかに宝石を釣り餌に、思い出を誘った張本人。
最後のスクリューもよく聞いていて、ただ守られるだけのヒロインのタフな顔が、渋いロマンスに独自の味を付けていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月9日
あんだけ誠実に自分を思ってくれる夫を愛しきるためには、もう一度逢わなければいけなかった。
ミレーヌもまた、独自の美学を完遂する気概を持っていた。
野良犬の始末を殺し屋が付けてくれてた事までは気づかないが、鈴蘭の花言葉に恥じない幸福を掴むために、差し出された愛の証、貴族の財力を利用して過去を振りちぎる姿は、身勝手でとても綺麗だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月9日
これも第2クールに刻むべき”女”の、一つの肖像画、というところか。
次元はガンマンらしく、思い出を盗むことなくさっそうと撃ち抜いて、マルセイユを後にする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月9日
強がりと優しさと、乾ききった殺しが光と闇の間で揺れながら、五月雨に濡れている。
次元大介の肖像画を、新たに刻む良いエピソードでした。
こういうベタで強い”ルパン”、食べてみるとやっぱいい感じだな…
そして次回は五右衛門 ON ランウェイ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年2月9日
第2クールはアニメ脚本家がゲスト話数担当する感じなのかなー、などと思いつつ、題材の時点でかなりワクワクする組み合わせだ。
”ミューズ”という言葉がアニメ界一似合わない男が、華やかな舞台で何を切り裂くか。
次回もとても楽しみです。