イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

SPY×FAMILY:第18話『家庭教師の叔父/ 〈東雲(しののめ)〉』感想

 東西平和を賭けた嘘つき家族劇、今回の大問題はアーニャの中間考査ッ! ……な、SPY×FAMILY第18話である。
 アーニャのキャラ立ちが良いのか、イーデン校という舞台がほんわかコメディをやるのに向いてるのか、策謀が絡まぬ日常回は学校ネタが多いなぁ……という印象。
 色々あって年上相手のハードカリキュラムに投げ込まれ、国家存亡を賭けた<星>集めに挑んでいるアーニャは自動的に、能力を越えた頑張りを常時要求される。
 凄腕スパイと治安当局が父と叔父の仮面被ってバチバチやりあったり、自分の奮戦が大きなものの運命を左右したり、毎日ワクワク楽しい日々を壊さないためには、アーニャは身の丈以上の結果を出さなきゃいけない。
 そんな状況下でのドタバタ奮戦記、二本立てでお送りするエピソードである。

 

 

画像は”SPY×FAMILY”第18話より引用

 前半は姉の頼みにめっぽう弱いユーリが、ブツブツ文句たれつつ汗だくで家庭教師してもらえるお話。
 『エスパーなんだし、読心カンニングで一発じゃん!』というツッコミを先回りするように、新月時には能力使えない設定も出てくる。
 まぁ万能能力になられてもドラマが展開しないし、むしろ今回判るように欠点からこそ物語は生まれるわけで、長所と短所は背中合わせにするべきだわな。

 第2エピソードでの解答書き換えもそうだけど、スパイと殺し屋と超能力者(あと未来視犬)でお話作っている割にこのお話、主役サイドには不正させず真っ向勝負で地道にやる傾向があって。
 洗練された小市民感覚が魅力な話なので、ハチャメチャなズルを大設定としてキャラの根っこに置きつつ、課題自体は額に汗水垂らして地道に攻略していく印象。
 ヤバシスコンのソフトゲシュタポていう、強烈なキャラ付け持ってるユーリも、地道に学問して現在の立場と能力を手に入れた努力家だってことが、今回描かれるわけで。
 人間離れした破天荒で派手な部分と、それが見てる側のハンディな距離感から吹っ飛んでいかないよう、小さな苦労にヒーヒー言わせる部分のバランスが良いんだろうな。

 アーニャも悪賢く可愛いズルを企みつつ、地力で赤点回避する所まで実力を高めているからこそ、健気な努力を応援したくもなる。
 国を担うエリートを育成するイーデン校、カリキュラムは同年代であっても相当ハードな部類なのに、最悪二年飛ばしで挑まされてるからな……。
 このお話が”夏目アラタの結婚”だったら凄惨な大惨事の遠因にもなりかねないシビアな状況であるけど、賢いアーニャはビービー文句言いつつ、大好きな””ちち”のミッションのために叔父と汗だく協力しつつ、学ぶ意味を探る。
 ボンドが家族になった騒動での無力感を思い出しつつ、自分なり学ぶ意味を手探り引き寄せている所には、血の通った成長が見て取れる。
 こういう人生の”正解”掴みつつも、基本は年相応にバカで小狡いクソガキなところが、良い造形なんだと思うね。

 

 

 

画像は”SPY×FAMILY”第18話より引用

 娘と義弟がインチキ封印で頑張る中、パパは赤点回避のために返送して学園中枢に侵入し、クソみてーな自分の偽者に振り回されていた。
 こっちは目立ちたがり屋の勘違いスパイ(に、中村悠一当てる豪華な配役がドンピシャで大変良かった。三枚目上手いなぁ……)のガバガバ侵入を思わずツッコみつつ、アフターフォローも完ぺきにこなして平和な日常を作り、自分の任務を乱すノイズを消去……という展開。
 アーニャが自分の至らなさと真っ直ぐ向き合う成長のドラマを担当するのに対し、ロイドさんは人格も能力も完成された無双担当なので、コメディやるならこういう周囲に振り回される形だよなぁ……。
 その最たるものが、最高の”暴”とド天然な認識を併せ持つ”はは”だってのも、面白い組み合わせだけど。

 <東雲>は<黄昏>のライバル貼るには仕事はずさん、影に徹する覚悟は皆無、能力不足もここに極まれりな、ポンコツコピーキャラ。
 彼の戯画化されたテキトー加減を通じて、<黄昏>がどんだけパーフェクトに仕事をこなしているか、確認する回とも言えるか……。
 あとダミアン様が否応なく背負ってる家名、<黄昏>のターゲットであるデズモンド周辺の黒い影とかね。
 今回は笑い話で済むポンコツミッションだったけど、こういう陰湿な足の引っ張り合いが日常茶飯事な場所に彼はいて、そこで小さな身の丈伸ばして頑張らなきゃいけない立場なんよなぁ……。
 アーニャ視線だとアホでムカつく攻略ターゲットな”じなん”だが、こういう形で人間味を滲ませているところとか、結構好きな書き方だ。
 彼とその親友が主役となるオスタリア・ボーイスカウト回、アニメでやってくんねぇかな……。

 

 

画像は”SPY×FAMILY”第18話より引用

 かくして娘も父もチートなしで、中間考査を乗り越えたフォージャー家。
 全てお見通しのスーパー保護者を気取りつつ、娘が<梟>計画も家族の嘘も全部ご存知のエスパーであると知らず、しかし愛娘必至の努力が生み出した赤点回避を鷹揚に飲み込むという、”ちち”の立ち回りも面白い。
 アーニャちゃん等身大のよえーちびっ子なので、それを見守り育む存在が必要なんだけども、同時に特権的に色んな秘密を知っている。
 しかしそれは浅はかな望みを叶える強みにはならず、絶妙なバランスを保ったまま奇妙な親子関係は続くのだ。
 他人なのにお互いとても大事で、すれ違っているのに確かに通じ合っている、奇妙で誠に満ちた愛おしさ。
 ここの真芯に、今一麗しき殺人マシーンが食い込んでいない感じなのも”味”だよなぁ……。
 ヨルさん、アーニャやロイドさん、あるいはユーリが人間らしく思い悩む『葛藤』から常時距離取ってるのが、独特の浮遊感と存在感の理由なんだろうな……と最近思う。

 かくして滑稽で真摯な努力に支えられて、愛おしき嘘は続いていく。
 次回も楽しみ。