イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

SPY×FAMILY:第19話『デズモンドへの復讐計画/ 母、風になる』感想

 今日も今日とて嘘つき家族の平和な日々は続く……スパイファミリー第19話である。
 短編をザクザク小気味よく続けていく語り口は今回も継続、フォージャー家があんま目立たないジョージくんの超絶空回りと、まさかのアニオリ、ヨルさん超疾走愉快な母さんエピソードとなった。
 堀江瞬渾身の一人芝居が大暴れする前半も、『”はは”単独のエピソード、ここらで挟んでおかないと存在感消えちゃうよー』ってんで投げ込まれた(邪推)後半も、大変平和で良かった。

 まぁかわいい子供らの言動を追いかけていくと、国家の根幹にかかわる家系の小学一年生も、”西”のこと『奴隷を売り飛ばす極悪国家』と考えててツッコまれない国際関係の荒廃が、チラッと透けもするのだが。
 こんな体たらくなら、そらーロイドさんも不惜身命全霊注ぎ込んで、東西平和の安定のために駆けずり回るわな……。
 このお話、『無知は全ての災厄の根源』てのが一つのテーマだと思ってるけど、こういう形で隣国への無理解が透けると、明るく楽しい家族コメディの底流には相当暗いもの流れてるな……て認識を新たにさせられるね。

 

 

画像は”SPY×FAMILY”第19話より引用

 というわけで前半戦はジョージくんの、根暗な思い込み大暴走エピである。
 話自体はやり過ぎ感溢れる切羽詰まりコメディなのだが、憎きデズモンドの子息の首を狙わんとする思いが宿った1カットとか、グラス越しの奇妙な転倒を切り取った絵面とか、妙にキレた絵が多く面白かった。
 イーデン校を舞台にしたお話は特に、肩の力が抜けた無邪気なコメディになりがちであるが、そこを異様な作画力でゴリゴリ煮込んで不思議な迫力を出すのは、このアニメの得意技な感じがある。
 毎度おなじみキャラの濃い子どもたちのおもしろ漫才を楽しみつつ、良い構図と動きが不意打ちで襲いかかってくるの、なかなかレアな体験ね。

 今回のお話はアーニャちゃんが話の中心におらず、奇っ怪な立ち回りするヤバいクラスメイトを傍観する立場。
 自然1-3普段の光景が客観的に描かれるんだけども、明るい性格で運動も勉強もできるダミアン様は、当然クラスの中心に立つ。
 つーかアーニャちゃんがテレパスで読み取った情報を元に、斜めからダミアン様と接してるだけで、親の冷たい態度にも重すぎる期待にもめげず頑張ってる好青年だもんな彼……そらモテる。
 大人の事情を勘違いしたジョージくんの大暴走も、そんなクラスの中心人物へ蓄積されたやっかみが暴発したと思うと、納得できなくも……イヤ無いな、アイツ間違いなくやり過ぎだろ。
 無茶苦茶ほざくヤバ人間を歌と贈り物で快く送り出し、1-3は楽しく素敵なクラス……で追われればよかったが、蓋を開ければ思い込みの勇み足、薩摩武士なら『おいは恥ずかしか!生きておられんごっ!』と即切腹クラスだが……ジョージくんは普通のこどもなんで、生き恥忍んでクラスの端っこで生きてくのだ。
 ある意味青春の1ページ、当人にとっては針のむしろながら、平和さえ続けばいい思い出にもなってくれるだろう……多分。

 

 

画像は”SPY×FAMILY”第19話より引用

 後半は早見沙織の声帯が付いた女ターミネーターが、バスより早く街を駆け抜け、おちゃめなすれ違い(物理)で点数荒稼ぎするお話。
  アーニャとすれ違う所の小気味いいテンポ、とても良かったね……。
 とにかくパルクールの作画が良くて、常識外のアクションだけでキャラが立ってる”暴”の権化はモノが違うな、と思い知らされる。
 顔面の良さと偽物夫との濃厚なイチャコラを押し出す場面も沢山あって、ヨル・フォージャーの現状を最大限活かしたアニオリと言えよう。

 意識して葛藤から遠ざけられてるキャラなので、こういう使い方以外出来ない……って話でもあるとは思うが。
 アーニャちゃんの等身大な日々の悩み、ロイドさんの超人的善良エージェント活動が結構内面に食い込んで重たい作りなので、アクションと顔面の良さをサクッと軽い歯ざわりで活かして、展開にアクセントつける仕事は”はは”一人が背負うんだよな……。
 この内面のなさが何由来か、本腰入れて探っていく時は彼女が身を置く組織、ぶっ壊れた人格の裏側を彫り込むことになり、戦争の長い影が一人の女をどう壊したか、相当血生臭くて重たい話が展開すると思っている。
 つまり”SPY×FAMILY”の終わりが始まるまで、ヨル・フォージャーの見せ場は葛藤や成長といったスタンダードなドラマから遠い、表層にとどまる宿命なんだと思う。
 それも立派な仕事だが……空疎なりの内面が大量の血糊で描かれていく豪華客船編は、映画でやったりすんのかなー。

 

 そんな感じで、大変楽しいお話でした。
 次回は原作最オモシロ女が遂に登場するっぽく、鉄面皮の奥に隠されたオモシロすぎる内面をアニメがどう演出するか、今から楽しみです。