イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アークナイツ 黎明前奏/PRELUDE TO DAWN:第4話『契約 Loyalty』感想

 災厄を越えてたどり着いた華やかな街に、漂う暗雲。
 ドンパチ抑えめ政治の季節、龍門編開始のアークナイツアニメ第4話である。

 チェルノボーグ事変の衝撃冷めやらぬまま、レユニオン次なる標的と目される龍門へたどり着いたロドス。
 上層部との政治的腹芸を終え、一応の契約関係を気づいた彼らは大都市の腐臭漂うハラワタ……感染者が押し込められたスラムへと進んでいく。
 そこで出会った一人の少女が、果たしてどんな運命を連れてくるのか……というお話。

 

画像は”アークナイツ 黎明前奏/PRELUDE TO DAWN”第4話から引用

 新たな物語の舞台となる龍門は、既に都市秩序が崩壊していたチェルノボーグとは違い、アーミヤも思わず目を輝かせる(かわいい)繁栄と、薄暗い闇を抱えた大都市である。
 都市秩序を維持するためには難民・感染者流入を無条件に弾く、厳しい対応を選ぶしかない状況下で、拒絶と断絶を乗り越えてどう、新たな紛争を水際でせき止めるか。
 それがロドスの新たなミッションとなる。
 レユニオンを生み出した感染者差別は都市国家の宿痾であり、龍門でも感染者は狭いごみ溜めに追いやられ、子どもですら暴力と隣合わせに生きている。
 テラの過酷な現状を、文字通り赤く発熱していたチェルノボーグとは違う……しかし同じくらい危険な温度で見せてくるスタートとなり、なんとも”アークナイツ”である。

 

画像は”アークナイツ 黎明前奏/PRELUDE TO DAWN”第4話から引用

 お話の転がり方もドンパチ満載だったチェルノボーグとは異なり、冷えた交渉事で自分たちの足場を確保するべく、異国のトップと腹のさぐりあいをすることにもなる。
龍門独力での事態解決に拘るチェンを抑えつつ、ウェイ長官はロドスの実力を独自に調査し、その心意気を直接感じ取って、伏せ札を残したまま交渉をまとめる。
 ロドスは感染症が個人と社会にもたらす影響を最小限に抑え、龍門が第二のチェルノボーグとなるのを避けたい。
 ケルシーの長い耳が拾った現状はまさに待ったなしであり、スラムに押し込められた被差別民が即座にレユニオン・シンパに変わりかねない国内情勢もあって、協調介入による積極策を通したい。
 大型陸上艦で国境を超えて事態に介入する、コスモポリタンなロドスに対し龍門は炎国の一部であり、よそ者が自分の庭でデカい面することへの反発を滲ませつつ、ロドスの現状分析と提案は、比較的冷静に受け止められる。
 かくしてお互い伏せ札を残し条文に釘を差しつつ、一応は協力的な関係が締結される……という構図。
 なにしろ記憶喪失なので置物のようにボーっと座ってるドクターと、トップ会談の緊張感を表に出すことなく、スムーズに指すべき手を指し切るアーミヤの対比が、ちょっと面白かった。

 チェルノボーグの地獄をその目で見届けたからこそ言える言葉を生かして、ロドス三人目のトップであるケルシー先生の冷静な交渉に助け舟を出すのは、ロドス代表としての彼女がどんな仕事を果たし、そのためにどんなペルソナを被っているのかが良く解る場面だった。
 あくまで感情を抑え冷静に立ち回りつつも、ロドスが果たすべきミッションを見据え自分の実感を言葉に込める。
 緊張に満ちた会談を終えて、ドクターに年相応の笑顔を見せる表情と同じくらい、ウェイ長官に見せた仮面は、アーミヤの”本当”である。
 もちろん、スラムで子どもたちを前に見せた微笑みもだ。
 その割り切れない……あえて割り切らない人間味が、混迷を含める情勢で彼女を惑わせ、苦しめることにもなるが……それはまた先の話である。

 

画像は”アークナイツ 黎明前奏/PRELUDE TO DAWN”第4話から引用

 そして今回初お目見えとなる、ロドス三巨頭の一人ケルシー先生。
 会談で見せた冷静な論理マシーンの顔が、教え子でもあり担当患者でもあるアーミヤを前に柔らかにほころび、ドクター相手には超塩対応でキュッと〆る。
 ロドスの理性として怜悧な側面が強調されがちな彼女だが、そればっかりでもないと初手で見せてくれたのは、彼女のファンである自分としては嬉しかった。
 なーんでこんなにドクターに当たりがキツいかは、世界情勢と複雑に絡んだロドス設立秘話に、さらにケルシー先生個人の複雑怪奇な生い立ちと人格、記憶を失う前のドクターの立ち回りが関わってくるので、アニメじゃ『理由なく冷たい人』って感じだよな……。
 アーミヤが『理由なく暖かい人』なので、二人合わせてツンデレのバランスがちょうどいい、って話かもね。

画像は”アークナイツ 黎明前奏/PRELUDE TO DAWN”第4話から引用

 かくして交渉は成立し、ロドスはレユニオンの足取りを追うべくスラムへ踏み込む。
 そこで出会った優しい小熊は、非感染者の差別に傷つけられてきた体験を盾に、対話を拒む。
 分断と対話が展開する間、ミーシャとアーミヤ達を同じカメラに収めず、隔たりを可視化するカットワークが面白かった。

 こういう境目は作中世界に満ち満ちており、これを乗り越えて手を差し伸べるべくアーミヤは細っこい身体で駆けずり回っているし、レユニオンは分断に引き裂かれた結果仮面を被り刃を握った。
 腹の奥底を見せないウェイ長官、よそ者相手に頑なさを崩さないチェンが内心どう思っているかは横において、龍門においても断絶は常に現実に横たわり、華やかな摩天楼と据えたゴミ溜めに、街を割っている。
 スラムに押し込められた、街の暮らしに溶け込めない……溶け込むことを許されない不満分子は、同じ苦しみを宿した同志と再統合(Re-Union)を果たす未来をためらわないだろう。
 アーミヤが感染者の証を見せてミーシャの警戒を解いた仕草は、遂に炸裂した被差別民暴動が仲間を増やす理由と、根っこの部分では似通っている。
 敵(レユニオン)と味方(ロドス)を分けるものがあるとすれば、やはりそれは激情を押さえ込みより良い解決策を探す理性……なんだろうけど、感染者を暴徒に変えたのと同じ感情が、アーミヤやケルシーにも宿ってるって書く筆が油断なくて、安易な切り分けを許さない。
 それは、とても良い書き方だと思っている。

 

画像は”アークナイツ 黎明前奏/PRELUDE TO DAWN”第4話から引用


 通じ合う心と、引き裂かれる理想の間で出逢った少女二人の運命は、どこに転がっていくのか。
 ガスマスクにイカちぃ武器で身を固めた不穏も顔を見せ、龍門を巡る物語は加速していく。
 次回以降の運命の激浪と、それに翻弄され暴かれる魂の色をアニメがどう書くか……とても楽しみです。