健やかな友情と晴れやかな青春を、自分たちの手で一個づつ形作っていくアニメ、ツリーハウス完成に向けて真っ直ぐ進む最終話一個前。
物語のピークは前回グイッと乗り越えて、今回はある種のウィニングランというか、DIY部と須理出未来がたどり着いた幸福が長く続くよう、ひたすら祈る回というか……。
しみじみと俺は、DIY部に入ったぷりん、ぷりんがいるDIY部に『良かったね……本当に良かった……』と言い続けるだけのマシーンになってしまった。
1クールかけて、ひたすらにツンデレが本来望んでいた己を掴むまでをやる。
そのある意味のんびりしていて、しかし必死で切実で誠実な筆がたどり着いた場所、そこから伸びていく未来を、たっぷりのDIY描写とともに堪能させてくれるエピソードでした。
つーわけで、素直になれない青春乙女に最後のひと押し、満を持してのぷりん入部から物語は始まる。
せるふのグイグイでもジョブ子の善良性暴露でも最後の一歩が踏み出せなかったところで、たくみんが新たな部員が訪れる未来を信じて、シコシコ地道に作ってたエプロンが決め手になるのは、とても良かった。
他メンバーがはしゃぐ中キッチリ”筋”通して、根が生真面目なぷりんが膝正しやすい状況を率先して作る部長もそうだけど、各部員の人格や長所が細やかな立ち回りにしっかり滲んでて、感慨が強くある。
どんな状況であっても根気強く、自分がするべきと信じたことを丁寧に積み上げられる資質と、DIY部という自分の居場所は素晴らしいから、必ずいつか誰かが訪れるのだという、靭やかな信念。
それを備えていたから、たくみんは新しい仲間のためのユニフォームを手渡せた。
DIY部のエプロンは同じ”エプロン”であっても、それぞれの好みに合わせてバラバラで、”Uni-Form(単一の形)”というにはブレが大きい。
でもバラバラで、しかし確かに繋がっている形こそがこの場所が……このアニメが大事にしたいものだ。
それを手渡されたことで、頑なさを解いてぷりんが”Uni”になれる最後のきっかけを作ってくれたのが、穏やかで優しいあの子であったのが、僕は嬉しい。
俺……たくみん好きだから……。(分かりきったことを今更述べるマン)
新たな仲間を加え、ツリーハウス建造に燃える仲間たちが去っていく中、ぷりんは幼なじみの背中を見つめ、吹き付ける風を心地よく感じる。
風に揺れる髪の毛は不安定な心の、そして未来に豊かに伸びていく可能性の象徴として、作中で幾度も、大事に扱われてきた。
ぷりんが閉ざされた窓、その向こうにいる幼なじみと、もう一度手をつなげる自分をずっと見つめていたのも、それが開放された後吹き付ける風を、印象的に書くためだったと思う。
ようやく、大好きな人に大好きと告げれた。
その小さな、しかしあまりに力強い到達点には幾度も風が吹き付けて、未来を未来へ連れて行く。
鈍くさいせるふはそのつぶやきを聴いてはいないが、しかし誰よりも……当人よりも早く答えに到達していて、ずっと”そこ”に一緒に進もうと、大きな声で叫んできた。
不測のアクシデントを前にいても立ってもいられず、思い出を掘り返して幼なじみの隣へ進みだしたその一歩が、閉じていた窓を開け、”そこ”に一足早く、賢く成熟した幼なじみが一人ぼっち立っていることを、せるふに教えた。
ようやくリズムを重ねた二人の青春は、思い出のモビールを涼やかに鳴らす。
それを機械のクラゲが見届けて、心地よき興奮の色に染まるのが、最新鋭の技術が人間の諸相にしっかり寄り添い、楽しい隣人として人生を彩ってくれる希望を、コミカルに祝いでもいる。
俺、あのクラゲも好きだからよ……(分かりきったことを今更述べるマンZwei)
というわけでこっからは、専門家の力も借りつつツリーハウス建造本番、延々本格DIY描写がうなり続ける感じだッ!
やっぱこの手抜かりのない作業描写が、このアニメ特有の充実感を生み出す足場って感じはある。
装具でしっかり安全を確保し、丁寧に手仕事を積み重ねていく梁作りの描写に、ジョブ子お得意のAR計測技術がしっかり噛み合って、作業を助けているのも良い。
やっぱ最新鋭の技術と、古臭いと言われがちな手仕事がしっかり噛み合って、新しくも懐かしい手触りで青春を充足していくの、最高にいいわな。
ただひたすらに三昧境、ツリーハウスづくりに夢中になって眠りこける我が子を慈しむママンの掌も、うめーフルーツサンド一緒に食って笑う幼なじみの姿も、力仕事前面に出てきてその圧倒的フィジカルを見せつけるしーちゃんも、全部最高。
笑ってるねー……幸せだねー……。
大掛かりな土木作業が目立つ回なんだけども、たくみん得意の地道な手仕事が永遠に咲き誇るひまわりとなって、ツリーハウスを照らす過程もしっかり切り取っているのが、とても良かった。
しーちゃんみたいに力が強いことも、たくみんみたいに手先が器用なことも、DIYでは……それを内包する人生においては、とても役に立つ。
それは冷たい実利だけの話ではなくて、自らの強みを生かして生み出すものが皆に共有され、より良い笑顔を生み出すきっかけになってくれるという意味での『役に立つ』だ。
それは人がそれぞれの形で存在している現状全体を、それぞれの凸凹を噛み合わせて豊かに丸呑みする姿勢で、このアニメはDIYという趣味と営為を通じて、そんな価値観を静かに、靭やかに描いてきた。
細やかな仕事を根気よく積み重ねた結果咲くひまわりが、たくみんが大好きな物語と繋がっているとちゃんと分かるのも、そこに新加入なったぷりんが隣り合って一緒に作業してるのも、大変良い。
そして描かれる、須理出未来の到達点……あるいは帰還点。
やっぱ窓辺を二人青春の聖地として、ずっと描写を積み重ねてきた意味が強く炸裂していて、大好きな幼なじみに大好きを素直に伝えられるようになったぷりんの浮かれっぷりが、深く深く胸に突き刺さる。
いわゆる『幼なじみ特等席』とも言われる、隣り合った窓と窓を舞台にした会話。
カーテンを開け放って、直ぐ側にある幼なじみの気持ち、そこにホコリを被って眠ってる自分の気持ちを見つめる事が、どうしても難しかった少女に今、窓は開いている。
カーテンを閉めてもそのシルエットははっきり見えていて、明日また、もう一度明けて楽しく笑い合うことが出来る。
窓を開けて、風が吹く場所に……懐かしく、もう失われたかもしれないと怯えもした思い出と、それを大事に抱きしめて一緒に走っていく無限の未来が同居している場所に、ぷりんはもう進んでいけるのだ。
その幸福を噛み締めてベッドに飛び込む仕草は大変可愛らしく、幸福に満ちて、僕がずっと見たいと思っていたものだ。
それをこの最終話一個前、確認できるのはとてもありがたい。
最後の難問屋根板不足も、しーちゃんの剛力で引っ剥がして無事解決ッ!
拳を点に突き上げるDIYポーズも六人となり、最終話……希望の未来にレディーゴーッ!! ってところで、今回はおしまい。
みんなの秘密基地づくりのワクワク感といい、ちょっとワルい感じを上手く取り入れて、心の中の幼い部分をくすぐってくる感じも好きなんだよな、このアニメ。
ラスト”壊す”ことで新しく進んでいく解決は、とってもこのお話らしくていいなと思います。
普通ならゴミになってしまうものも、大事な可能性に生まれ変わらせて、活かし直す。
世にサティスナブルだのエシカル消費だのSDGsだの、はやりの看板だけ貼っつけて中身が良くわからない……しかし未来を明るく照らすためには大変大事なものも、しっかり見据えてあくまで楽しく、作品に積み重ねてきたのは偉いし強い。
DIY部のリサイクル精神はそういう新たな潮流を睨みつつも、もうちょい体温のある泥臭い『もったいない』の継承者だろうし、三条市のローカルな味わいを大事にしてきたことが、しみじみそういうモンがしみる土台になってもいるよね。
というわけで、ツリーハウス建造をしっかり進めつつ、そこに花咲く青春をたっぷり味あわせてくれるエピソードでした。
須理出未来、結愛せるふ、DIY部のみんな……とにかく、おめでとう。
ここでタイトル解消しちゃってどうすんだろう? ……と思ってたんだけども、次回はなるほど、自分たちが描いてきたものをど直球に吠える最高のサブタイトル。
DIY最終話……信頼と期待しかねぇ。
大変楽しみです!