イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

TRIGUN STAMPEDE:第1話『NOMAN’S LAND』感想

 SFガンアクションの金字塔を、オレンジが再起動! 3Dルックで新たに書き起こされていく、人間颱風の物語や如何に!? という、新生トライガン第1話である。
 変えるところはガラッと変え、ナイヴズとの因縁を初手からお出しし、しかし砂漠の乾いた風、優しすぎるトラブルメイカーの立ち姿はそのまま……という、なかなかいい感じのスタートとなった。
 ミリィの代わりに激渋おじさんがメリルの相棒になってたり、背骨以外は容赦なく手を入れる感じの作りであるけども、こうして変えた部分がなかなかいい機能を果たしそうな手応えもあり、オレンジ謹製の超絶3Dは大変いい感じでもあり、さてはてどうなることやらッ!
 楽しみだね……自分直撃世代だから、こんな力こぶパンパンの第1話になって、正直とっても嬉しいよ。

 

 

 

画像は”TRIGUN STAMPEDE”第1話から引用

 というわけでまず言っておきたいのは、新たに生まれ変わった惑星ノーマンズランドの景色が最高に良いッ!
 砂塵にまみれ、人の生存を拒むSF西部劇の舞台として、その広さ、空の高さと容赦のない荒廃がしっかり描かれているのは、物語を受け止める大事な土台である。
 いかにも西部劇的なでっかく赤い夕日を強調したり、過酷な環境でもコミカルに転がっていく物語の通奏低音を際立たせていたり、美しく仕上げた舞台を活かす手腕も大変いい感じだったと思う。
 バキバキに遠未来SFなエピローグから、ド新人と煤けたベテランがコンビ組んで、寂れきった砂漠をぶーたれながらうろつくしょぼくれた感じへの落差も、良く効いてたし。

 フロンティアというには希望が薄い、荒くれたSF西部の空気が良く伝わってくるので、唯一の希望としてのプラントの存在感、社会インフラが不安定なロステクに乗っかるしかない世界の現状も、しっかり解る。
 こうして生まれた生き残ったもん勝ちのこの世の果てで、己の異様な力を誇らず、ヘラヘラ笑って人助けに勤しむにーちゃんが、どんな思いを抱えているのか。
 たった一発の銃弾で一切合切を解決しきった主役の、異質性もしっかり際立つスタートだったと思う。
 ここにリデザインされたナイヴズの、いい具合なイカレ感が程よく混ざって、初手から運命の戦いがボーボー燃え上がっちまう感じは強く出てた。
 『この話は地獄兄弟のSF因縁物語ですよ!』って柱を、初手からぶっとく立てれるのは原案が既に完結してるからこその強みだよなー。

 

 

画像は”TRIGUN STAMPEDE”第1話から引用

 

 そんな世界をうろつくのは、世間の事な~んも知らないクソ新人と、世慣れてるがゆえに擦り切れてるおひげのダンディと、賞金額が重すぎる腑抜けたにーちゃん。
 新キャラであるロベルトおじさんがかなりいい立ち回りをしていて、メリルが知らない(からこそ、純粋さの具現として話をいい具合に引っ張れる)ノーマンズランドの常識を伝えてくれたり、世慣れた態度で状況を整えたり、いぶし銀の活躍。
 そんなおじさんの背中に乗っかって、メリルはお硬いようでいてお調子者な可愛げを、初手から存分に発揮してきた。
 オレンジの極端に動かして戯けた感じを出す笑いの作り方は結構好きなんだが、今作でもその味わいはバリバリ前に出てくれる感じで、なかなかに嬉しい。
 凶悪賞金首におだてられて、満更でもなく身悶えしてる所、可愛かったなぁ……。

 バッシュのトレードマークたるサングラスがさらにデカくなって、底が見えきらない怪しさと、その奥にある瞳の優しさを強調する感じになってたのは、デザイン改めた強みだなー、と思った。
 赤と青、生と死の色に塗り分けられたプラントを反射して、その内面はなかなか見えないが、何しろエピローグで旧時代唯一の生き残りだと示されているから、この謎めいた遭遇こそが話の中核なのだとは、しっかり解る。
 しかし内側に何があるかはまだ見えきらず、殺伐としながら猥雑な活気に満ちた世界観と合わせて、グイグイ先を見たくなるパワーがあった。

 

 

画像は”TRIGUN STAMPEDE”第1話から引用

 絵力を活かしてキャラや物語を理解らせる手際は、ラスボスたるナイヴズの書き方でも元気だ。
 甘ちゃんなヴァッシュは愛するレムの手にしがみつき、惨劇を演出した恐るべき子どもは、その優しさを跳ね除けて突き進む。
 人類がこのイカれた世界で生きざるを得なくなったその始原に二人は立ち会い、長い時間を宿命の御敵として、運命の兄弟として流れてきた。
 普通人とは違う行き方を強いられた、永生者の物語でもある”トライガン”……その天秤の片方に座る悪辣な天使のヤバさは、初手からいい感じにぶち挙げられていた。

 このヤバさに対抗しうるヴァッシュの本気が、どこで顔見せるか……てのが現状、気になるところだが。
 たかだか悪徳憲兵に目をつけられた程度では、銃弾一発で跳ね除けてしまう凄腕が何かを隠し、何かに怯えている様子。
 これを手早く感じ取り触りに行く、ロベルトおじさんの立ち回りが話を更に加速もしてくれる。
 ヴァッシュは殺さなきゃ行きていけないこの星で、誰も殺さない優しい男であるが、そんな腑抜けた生き方を世界もナイヴズも許してはくれない。
 実力と過去を隠し、砂漠の聖者として人の営みに寄り添ってきた男が、空飛ぶ虫の複眼を通じて魔王に見つかってしまった今、物語は否応なく転がりだす。

 その行き先が、なかなかに期待できそうだと感じさせてくれる、推進力と丁寧さの同居する第1話でした。
 人数多すぎ話混乱しまくりな原案の魅力を、かなり大胆に刈り込み新たにデザインして研ぎ出される、”今”だからこそのトライガン
 それがかなり魅力的だと理解らせてくれるスタートになったのは、大変良かったです。
 新しく変えた所がどう生きるかはしっかり見えたし、コアの部分にある哲学と面白さはしっかり残し、お話を流れる乾いて美しい空気をたっぷり吸わせてもくれた。
 さてこのいい具合のスタートから、どんなお話が飛び出してくれるか。
 次回も大変楽しみです。