イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

TRIGUN STAMPEDE:第4話『HUNGRY!』感想

 壮絶なる惨劇の果てに続く旅路、第二章開幕の令和トライガン第4話は、待ってましたのウルフウッド&ザジ颯爽登場回である。
 やっぱりデザインバッチリ決まりまくりで、変えるところは大胆に変えて”今”刺さる話を作っていく、STAMPEDEのやり方が大正解だと確認できる話数となった。
 まさかパニッシャーからビームとはね……やられたな。
 原作のエッセンスをしっかり受け継ぎ、ド派手にケレン効かせて正当進化させてる作風が、旅の道連れを手に入れてどう転がっていくか。
 食えない男の素足な魅力がたっぷり描かれ、”こっから”がまた楽しみになる良い号砲でした。

 

 

 

画像は”TRIGUN STAMPEDE”第4話から引用

 『腹減った!』のタイトル(よりにもよって、”デリシャスパーティ♡プリキュア”最終回にこのネタ株るの、個人的に無茶苦茶面白いけど)どおり、『食べる/食べない』を通じてキャラを表現していく今回。
 プラント飯を夢見る野の民は、タフにワムズを口に運んで命をつなぎ、砂漠の厳しい暮らしを生き延びている。
 お嬢様育ちのメリルは虫を口に入れようとはしないし、罪悪感に苛まれたヴァッシュは命の糧を拒んで、後部座席にプラプラ揺れている。
 何を食べて何を食べないか、どう食べてどう命の糧を粗末にするかは、キャラクターとドラマを語る優秀な鏡だ。

 そんな一行が拾った、怪しさ満点裸足の葬儀屋。
 聖句もうろ覚えな業突く張り、砂漠で貴重な水をテキトーに撒き散らすウルフウッドの底は、出逢ったときからさっぱり見えない。
 一人惨劇を生き延びた少年に飴を与える優しさは、それが影絵芝居でしかないと伝えるかのようにダイレクトには描かれない。
 栄養どころか毒なタバコばかりプカプカ吹かして、煙のようにとらえどころのないキャラクターが、なかなかいい感じに刻み込まれていく。

 

 

 

画像は”TRIGUN STAMPEDE”第4話から引用

 巨大ワムズの襲撃でもって、ドタバタ漫才は命がけのサバイバルへと幕を変えるわけだが、前回ナイヴズが凄みを暴れさせた煙ったホラーの表現力は健在で、映像の力で一気に雰囲気を切り替えてくる。
 古代遺跡めいた体内のスケール感、大気に舞い散るパーティクルの活かし方と、初期リドリー・スコット的な演出を3Dアニメでやりきっているのは、なかなかに凄いことだ。
 第一章の3話で、惑星ノーマンズランドでどんな風に人間が生きていて、それを許さぬ宿敵がどんだけ規格外かを描いたので、街の外側にあるもう一つの景色を、活劇を通じてしっかり見せてくれる回……ともいえるか。
 危険極まるワムズが砂漠の風物詩で終わらず、それを自在に操るザジのヤバさに繋がっていく所とかも、手際よくて好きだな。

 

 

画像は”TRIGUN STAMPEDE”第4話から引用

 虫のハラワタの中でウルフウッドは、誰かを殺してでも生き延びる人間の……あるいは生物の業を丸呑みして、挑発的にヴァッシュに突きつける。
 生まれつき人類を遥かに超えた異能を背負い、この星に生きる人達の苦悩全部に責任を感じる、赤いコートの聖人。
 断食の苦行のように、頑なに糧を口に入れないそのあり方にムカついているのは、あながち煙幕とは言い切れないだろう。
 サングラスの奥にある本音がジリジリと発火する中で、二人は砂に汚れながら背中を預け、肩を並べて共に歩き始める。
 ヴァッシュが光を持って、ウルフウッドが闇の濃い場所に立つ距離感は、二人がこの後の物語で描く軌跡を、象徴的に先取りしている感じがある。

 殺し殺されが当たり前の人間模様……そうせざるをえない、この星の厳しい環境。
 ウルフウッドはその只中を、罪の重たい十字架引きずってなんとか生きてきて、偶然を装ってヴァッシュと邂逅した。
 運命の相手がメシも食わない腰抜けヘラヘラの助だった憤りが、ヒリついた態度の奥によく薫っていて、いい出会いの書き方だなぁ、と思う。
 つーかメリルがいないとメインの絵面が『兄ちゃん・兄ちゃん・オッサン』で激渋になりすぎるの、新しい味わいながら最高に最高にしっくり来て良いですね。
 めっちゃ”トライガン”っぽいわぁ……。

 

 

画像は”TRIGUN STAMPEDE”第4話から引用

 かくして本性を暴いたザジ・ザ・ビーストに突き付ける、断罪機銃パニッシャーの大立ち回り。
 無駄にヒュンヒュン振り回すケレンとか、『え!!? ビーム!!!!?』の驚きとか、スペクタクルを描き切る実力の高さをどう活かすか、よく考えて使ってる感じがある。
 ”食えない男”がぶっ放す閃光は巨大なワムズを内側から解体し、その実力を余すところなく教えてくれる……と思わせておいて、これが打ち合わせ済みの茶番劇だって話数内部で示すの、面白い圧縮率だよなー。
 ヴァッシュの原罪を第1話冒頭から描いたように、ウルフウッドの嘘も早い段階で暴いてしまって、ある程度以上手札を晒した上で”トライガン”を再構築していく試みが、スタンピードでは元気だね。

 メリルたちを助けるべく再びワムズに飲まれたヴァッシュだけど、ザジを撃つでなしワムズを倒すでなし、前回に引き続き無力な善意が空回りしている感じが強調されている。
 それは罪と罰に怯える逃避であり、生きることと死ぬことの意味を重く受け止めているからこその足踏みだが、殺して食わなきゃ普通の人間は生きていけない。
 ウルフウッドは”それ”が出来ないヴァッシュの代理として、巨大な虫を解体して糧に変えていく。
 しっかし新ザジたん、声もデザインも最高にいいな……TARAKOさんのこういうシリアスな演技は最高に嬉しいので、このアニメ以外でもみたいよね。

 

 

 

画像は”TRIGUN STAMPEDE”第4話から引用

 パニッシャーによる巨蟲解体ショーはただの遊びではなく、ウルフウッドはそれをガツガツと食う。
 命の糧になるものを口に運ぶ、当たり前の信頼できる人間性を見せることで、ヴァッシュの喉につっかえていた罪悪感を飲み込ませていく。
 旅の仲間を新たに加え、賑やかに楽しく転がっていく荒野の日常は暖かなオレンジ色に輝き、未来を示すかのようにまばゆい星が空を照らしている。
 これは、多分信じて良い。

 そういう手触りがあるシーンを自分たちの手で作った上で、サクッと青く裏切ってひっくり返してくる。
 栄養にはならないタバコを山ほど踏み潰して、冷たい寒色/感触に包囲されながら、生命の取り合いをしたはずの相手と語らう夜。
 どちらが本当で、どちらが嘘か。
 そんな問い掛け自体が無化されるような、魅力的な複雑さが煤けた優男にしっかり宿っている。
 画面のカラートーンを雰囲気ごとに変化させて、統一した味わいで演出してくる手法は、このアニメに特徴的だよなー……見せたい場面ごとに色を決めて、それに染めて見せてくる感じ。
 似た方向性を探すと……内海紘子の”BANANA FISH”とかかなぁ。

 暖かな光のなか差し出され、結びあった手のひらの奥に隠したものは、未だ見えない。
 倫理と善意をストッパーに、自分の中の怪物を押し留めているヴァッシュもまた、ウルフウッドに負けず劣らず”食えない”。
 なら強引に噛み砕いて、自分と同じ中身をむき出しにしてやる……とヤバ兄さんが息巻いた所で、今回は終了である。
 STAMPEDEのナイヴズ、弟が好きすぎて頭がおかしい感がより強調されてて、大変いい感じですね。
 魔人が長く伸ばす凶刃が赤く光る中で、四人のドタバタ珍道中はどこに向かうのか。
 次回も楽しみです……え、モネヴ出んのマジでッ!?