イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ひろがるスカイ!プリキュア:第1話『わたしがヒーローガール!? キュアスカイ参上!!』感想

 新たに生まれる空色の英雄神話、20年目のプリキュアはHero Girlの物語!
 放送前から攻めた手筋がドシドシ公開され、果たしてどんなもんかとワクワク待ち構えていたひろプリ第一話……大変良かったです!
 ”空”をモチーフとして選んだ作品らしい自由さ、闊達さ、力強さがアクションや画作りにしっかり映え、そんなお話を背負う主人公のまさに青空のように曇りのないヒロイズムのちゃんと表現されていました。
 悪事を働き正義を引き出す悪役のカバトーンも大変憎らしく、英雄志願者が不屈の心を力に変える第1話を印象的に演出。
 ここから元気に飛び立っていく一年間の物語へ、たいへん期待が持てるスタートとなりました。

 まぁ言うたかてプリキュアは毎年の長丁場、この出だしから新たに色々見えてくるもの、馴染んで解ってくるものも沢山あって、第1話での印象がそのまま通年の感想に直結しないものなんですけども。
 しかし作品が最初の挨拶をしてくれる”第1話”はやっぱり特別なもので、アクションでも情景面でもそういう話に相応しいクオリティで滑り出してくれたのは、やっぱり安心し期待も膨らむ。
 『ここから楽しい物語が展開してくれそうだな』と、想像を掻き立ててくれるスタートになったのは凄く良いと思います。
 製作者側がズドンと打ち出してきた初撃を受け取り、こっちが感じた勝手な期待に答えてくれたり心地よく裏切ったり、そういうキャッチボールもまた楽しかったりするしね。

 

 というわけでこの第1話から僕が受け取った感想を記していくわけですが、まず主人公たるソラ・ハレワタールが気持ちのいいキャラでした!
 まず名前がいいよね……『晴れ渡る空』だもんね、名乗り上げた時にマジお空晴れ晴れしとったし。
 パルクールを操る高めのフィジカルに、脅威にもひるまず夢を踏みつけにされても立ち上がる強靭な精神、躊躇いを高く飛び越えていく心の足腰。
 青を象徴色とする彼女が、颯爽と心地よい強さの持ち主なのが良くわかるスタートだったと思います。
 全体的に動きがのびのびと大きく、24分間ずっと空の広さを身体で表し続けてくれてるのが、ナチュラルに表現力が高いキャラクター(彼女が主役である以上、つまりはそういう作品)なのだと伝えてくれてる感じで、そこも良かった。

 異世界人にしてみりゃ、急に迷い込んだ人間界こそが”異世界”なのだと思わされる導入も、ちょっと異世界転移テイストを取り込んで面白かったり、今まで主役にならなかった異世界プリキュアを真ん中に据えたことで、初めてクリアに見えたものだったり。
 変身後過剰な身体能力で高く高く飛び上がったり、”プリキュアのお約束”を適切に踏襲しつつも画角を変えて、なかなかに新しい風が吹き込んでいる感じを受けるスタートともなりました。
 男子プリキュアがついにメインを張ったり、成人女性がプリキュアになったり、既に公開されているネタだけでも攻めた感じがありますが、そういう新たな挑戦にどう作品独自の息吹を与え、それが選び取られた必然性を物語に宿すことが出来るか。
 そこら辺が問われる作風とも感じましたが、ソラが背負う”ヒーロー”の描き方に関しては、第1話でかなり活きた筆の強さを感じることが出来ました。
 青を基調とした颯爽とした色合い、風に翻る片マントと、ハンサム強めにハイレベルにまとまったキュアスカイの魅力を、120%引き出すお目見え回になってたのは素晴らしい。

 彼女が全身で体現するヒロイズムが、行動的で強くて戦いに怯えない『男の子っぽい女の子』だから許されるものなのか、それとも性差を超越(あるいは内包)して人間の資質として掘り下げられていくものなのか、Hero Girlをタイトルに背負うこのお話は、結構ナイーブなところにも触りそうです。
 相方になるましろちゃんはメイクを気にしたり、フワフワ後ろに下がりがちな『女の子っぽい女の子』として描かれてる感じがありますが、彼女も運命に選ばれた戦士として起つ以上、彼女なりの”ヒーロー”があるはずで。
 ここをどう書くかが最初のチェックポイントかな……と思いますが、ソラが目の前で輝かせた不屈の勇気が、ましろの憧れになってる描写が既に差し込まれてて、ここらへんを足場に深く彫ってくれると嬉しいかな。
 ソラ自身もかつて見上げた誰かの背中を頼りに、彼女なりのヒロイズムを鍛えて悪に立ち向かってる描写があるので、お互いの背中を追い合う憧れの歩みと、隣に並び立つ友情の歩調が面白いハーモニー作ってくれると、こら最高だわね。

 ヒロイックなだけだとプリキュアらしさがどっかに吹っ飛んでしまってたと思いますが、エルちゃんを優先してケアし続ける描写とか、ましろちゃん中心に漂うガーリーな空気とか、”Pretty”な強さも良い切れ味で暴れてました。
 強さと優しさの根っこはおんなじモンだと僕は思うし、プリキュアは20年そういう事を書き続けてきたと思うので、怒涛の導入編が落ち着いてまったりと日常を描く時に、このお話が目指す安らぎと癒やしがどこにあるのか、画面の真ん中に堂々墨書してくれるとありがたい。
 斎藤敦史のデザインが、今っぽい華やかさを上手くお話に取り込む窓になってくれそうで、ヴィジュアルの強さをどう活かしてくるかも大変楽しみだ。

 

 さてヒロイズムを引き出す上で、悪役の立ち回りは非常に大事。
 ガキは浚う泣かす屁はこくモノは壊す、やりたい放題し放題のカバトンは第1話から大変切れ味鋭い立ち回りで場を盛り上げてくれて、凄く良かったです。
 早く惨めに死んで欲しいネ。
 思わず漏れた本音はさておき、卑劣で凶暴な”悪”って鏡がなけりゃ、ヒロイズムの具体的な顔は見えてこないわけで、そこをしっかり殴りつけに行ったのはいい感じでした。

 カバトンは何かにつけて『俺は強い、お前は弱い』と格付けしてくるわけですが、悪役がこういうロジックで動くということは、対峙するプリキュアは”強い/弱い”という価値観軸にヒロイズムを乗せない話になると思うんですよね。
 敵の名前も”乱暴愚”だし、他人を踏みにじる力の使い方に立ち向かってく話になりそうな予感がする。
 腕力や卑劣さで上だの下だの、ガキ泣かせて悦に入る下らねぇ生き方するより、負けると知っていて立ち向かう、力で及ばぬとしても心意気で上回る生き様は、第1話で生身のソラが既に見せていました。
 プリキュアがバトルものでもある以上、ヒーローも悪役も暴力それ自体は平等に行使し、となればその価値を決めてくるのは何故、何を目指して力を振るうかという心の方向性になると思います。
 本音剥き出しのリアル・ポリティクスが勢いを増し、何かと国際情勢に暗雲立ち込めつつある今だからこそ、真実強いとは何なのか、力に溺れきってるブタをボコしながら掘り下げていってくれると、なかなか面白くなりそうです。

 もう一つヒロイズムの鏡になるのは、正しい力で守られ救われるヒロインの書き方でして。
 エルちゃんはアタマがマージでデカいガチ赤子体型で、それがわんわん泣きじゃくり続ける第1話。(ベビーなので、泣くのは当然しょうがない)
 そこに脆弱性がある自分としては『死ぬか……ブタがよぉ……』って気持ちだった。
 『ガキがうるせーから、不自由なタマに閉じ込めて声が出ないようにしようぜ!』って立ち回り、地味だけどカバトンの最悪っぷりを強調してて良かったな……いや良くねぇんだが。
 エルちゃんは両親の元から拉致られドタバタうるせぇ危ない場所に巻き込まれ、常時泣きじゃくってるスタートになったので、第2話以降は安心できる場所でニコニコ笑っている場面が多いと、俺としては嬉しいです。
 ガチ赤子がメインに座るプリキュアも結構久しぶりなので、どう言葉の通じねぇ無垢な存在と交流し、育んでていくかも楽しみだ。

 

 というわけで20年目のプリキュア、新しい風と継がれる思い、両方をしっかりと感じられるスタートとなりました。
 なにか新しいことが始まりそうなワクワクと、大好きなものを大事に描きなおしてくれそうなドキドキ。
 颯爽とした魅力を全力で叩きつけたソラを中心に、この後一年紡がれる物語がどこまで高く飛んでくれるか、大変に楽しみです!