キャラ追加も落ち着いてきた17回目の令和うる星は、役者を変えてのドタバタをたっぷりと。
しのぶと竜ちゃんとトンチキな不良達によるデート喜劇と、諸星家に舞い降りた願い星が巻き起こす珍騒動の二本立てである。
いかにも”うる星”な味付けの賑やかなお話が、舞台とメンバーを変えて連続で成立するのは、話数積み上げてキャラとお話にまとまりが出てきた証拠かな、と思ったりする。
ノリと勢いで押し切るハチャメチャなスピード感すらも、ある種のお約束としてまったりした落ち着きが出てしまうのが長期連載というものだが、むしろその枯淡をこそ味わいたい気持ちも自分的には強くて、こっからまだまだ話数が待っている令和のうる星が、どういう総体を編んでいくかが楽しみだったりする。
……作品全体を斜から眺めてる、あんま良くない視点だなぁ……。
というわけで前半戦は、ブラジャーと横恋慕を巡る狂想曲。
関智さんが悪ノリ暴れ倒す番長の、どう見ても人間ではないクリーチャーっぷりがあんまりに強烈過ぎて全部持っていかれた感じもあるが、サブキャラを真ん中に据え主役は賑やかし程度の、ちと変則的なうる星オーソドックスである。
自分は男なのか、女なのか。
性自認を歪める過酷な育成環境にめげず、自分なり憧れを追い求める竜ちゃんの空回りを肯定的に描く視線は前回から継続で、笑うより先に『頑張っとるなぁ……』と感心してしまった。
竜ちゃんド貧乏だし相談できる相手もいないし、相当ハードコアな状況にめげず自分らしいアイデンティティ獲得のため前向きに頑張ってて、なんだか見てて眩しいよ。
この感想も、俺がジジイになったからだよなぁ……。
そんな竜ちゃんをダシに、横恋慕クリーチャーを諦めさせるべくデート相手に選ぶしのぶ。
ツラが良ければ同性だろうと宇宙人だろうと特に問題はない、筋金入った面食いっぷりはむしろ清々しさすら感じる。
二人の奇妙で良い感じの距離感が落ち着いて、コメディの体裁が崩れん程度にあたるが空から降ってきてちょっかいを出し、ラムがビリビリ追いかける基本構図も健在である。
話がここらへんに差し掛かってくると、あたるの”女好きの浮気性”というアイデンティティはある種の舞台装置化してきて、周囲もそこまで真剣に扱わず、飛びついて跳ね除けられての一連の仕草を引き出すための、人間型スイッチみたいな扱いも受け出す。
永遠に決着が付かない、付いてはいけない追いかけっこ。
永遠に続く狂騒のなかで、結局竜ちゃんは憧れのブラジャーを身にまとって、堂々『自分は女だ!』と宣言することは出来ない。
何かが決着し答えが出ることは何かが終わってしまうことであり、竜ノ介は男女の狭間で空回りし、あたるは”女の子”という虚像を追いかけラムはそこに電撃食らわすという、類型からはみ出すルール破りは許されない。
そういう窮屈さと同時に、やっぱり弾むように愉快で活き活きした楽しさがキャラと世界に健在で、だからこそどのキャラ真ん中に持ってきても話が転がる強さもあろう。
そこら辺の手触りを、ケラケラ笑いながら確かめることが出来るエピソードだった。
後半戦はそんな話の主役たちが、諸星家を舞台に浅ましい欲望に踊るエピソードである。
前半戦でも僧形のデウス・エキス・マキナとして話を制御してたチェリーが、何も得れない結末を貼っ付けるお話でもある。
悲嘆に暮れる諸星家と、ちょっと離れた位置でへらりと笑うラムは可愛らしいが、それは宇宙人の居候つう立場が生み出す特権ゆえなのか。
どっちにしても宇宙製のシチェーションコントは唐突に始まり、理不尽に転がり、嵐のように終わっていく。
諸星家が舞台となる今回は異様に所帯じみてて、400円が大金な劉ちゃんほどではないが、ごくごく普通に厳しい経済事情をこちらに伝えても来る。
シュウマイと中華風コーンスープの扱いといい、あの頃の衣食住をまんまで流し込むこのお話のスタイルを、肌で感じ取れる話でもあった。
ここら辺目立たないけどかなり気を使って作ってる部分かな、と思うことは多く、異文化としての昭和レトロ、あるいは既に去りしノスタルジーをほのかに香らせる、一つの鍵なんかなー、と思ったりもする。
お話のアレンジもそうだけど、文化風土も”まんま”でやる……やるために目立たない所で頑張ってる感じは、このアニメの結構好きなポイントだ。
かくして骨折り損のから騒ぎを繰り返して、友引帳の終わらない日常は続いていく。
これらの物語が積み上がって積み上がって、その重さ自体がお話を軋ませるほどに積み上がった先に唯一作られるものを、果たしてこのアニメは自分なり描けるのか。
そこら辺が楽しみにもなってきた、令和うる星第17話でした。
次回も楽しみです。