イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

D4DJ All Mix:第5話『ネガ/ポジ』感想


 過ぎゆく季節を音楽と駆け抜けていくDJ青春アニメーション、5月の担当はノリと勢いで全てを突き破るパリピユニット・Merm4id!
 ……と思ってたら、暴れ馬のごとく思いつきと愛嬌だけで全てを乗り越えていくリーダーに、何かとネガティブな苦労人が死にほど振り回されて追い込まれていく、梅雨の頭に相応しい湿り気だった。
 第5話にしてユニットの外側の力を借りない……ともすればユニット内部の相互協力も少なめで、さおりさんが言葉の壁と自分の気質にウンウン唸り、ストレス爆発してたっぷり眠って食べて突破口を見つけていく歩みが、どっしりと積み重なっていった。
 考えてみりゃ夜の遊びも肌の露出度も自分で決めれる年齢のユニットなので、地力で難題に齧りついて突破口を探していく歩みは、独力の寂しさよりも頼もしさが勝って、さおりさんの事が好きになれるエピソードであった。
 ユカが突っ走って残りが追いついていく、Merm4idの基本形もたっぷりと味わえたかな。
 楽しいだろうけど、死ぬほど大変だろこのユニット活動……。

 

 

画像は”D4DJ All Mix”第5話より引用

 というわけで嵐のツーリングからもインスピレーションを得てしまう、圧倒的ポジティブ女の覚醒から物語は始まる。
 ノリと思いつきで海外との大型コラボを決めてきちゃう行動力は凄まじいが、具体的なところを詰めるのは別のスタッフなわけでね……見てよこのサムズアップ、欠片も大丈夫じゃない。
 今回のお話は生来のコミュニケーション強者であり、常に前向きな自己像をブラさないリカと、真逆に生真面目後ろ向き、なにかと”正しさ”が気にかかってしまうさおりさんの、衝突のお話でもある。
 思うがまま突っ走っても何かと上手く行ってしまうのは、リカが他人を巻き込み魅了する力に長けているからであり、ジェスチャーと押し出しだけで話をまとめられる彼女の天性は、得難い才覚でもある。

 さおりさんに、そういうのはない。
 世界レベルのアーティストと共作するにあたり、地道に勉強を重ね”正解”を壁に貼り付け、それに縛られてどんどん暗く不自由になって、楽しさを忘れていってしまう。
 人類全員リカのように強く明るく正しく突っ走れれば何も問題ないのだろうが、世の中には色んなタイプの人間がいて、さおりさんはとにかくコツコツ溜め込み抱え込み、地道に正解にたどり着くタイプである。

 何の間違えでMerm4idに所属してしまったのか……というか、リカの弾けるような活力と笑顔に憧れたからこそ、こんなに苦労しているのか。
 天才と出会ってしまった凡人の苦労を生々しく積み重ねていく今回の筆致は、第3話で春奈委員長がそういう感じになるかな~と思っていた雰囲気であり、まさかMerm4idでぶっこまれるとは思ってなかった。
 意外ながら、そういう苦労を積み重ねて底抜けパリピユニットがなんとか動いていると実情を教えてくれた感じで、かなり好きだ。

 

 

画像は”D4DJ All Mix”第5話より引用

 生真面目さ故にどん底まで追い込まれ、仲間のアドバイスも跳ね除けてしまったさおりさんだが、『寝てね~から認知が歪むんだ! まずは睡眠だッ!!』と正しい結論にたどり着き、グースカ眠って壁のヤバ張り紙を全部剥がした。
 『英語というツールの仕上がりではなく、相手のデカさに気圧されてる自分が問題なんだ』というダリアさんの仕上がりは大体正しくて、しかしそれを素直に受け止める余力は、あの時のさおりさんにはない。
 ないない尽くしの凡人なりに、しっかり眠って力を蓄え、追い込まれてる自分のヤバさに自分で気づいて、しっかり向き合う方向を決めても行く。
 ここのドッコイショ加減は”大学生”という感じがして、Merm4idだからこその描き方だったんじゃないかな、と思う。
 高校生ユニットだったら、もうちょい湿って寄りかかった距離感で突破口探してたんだろうけど、どんだけネガかろうがさおりさん”成人”なわけでね……そういう底力を大事にする話運び、俺は好きだ。
 差し伸べられた手を思わず跳ね除けてしまうことはあっても、ちゃんと自分を取り戻し頭を下げて、もう一度進み直せる

 謝罪も踊りながらしてしまうリカのテキトーさは、闇の底から這い上がりつつあるさおりさんに眩しく映る。
 ここは必要十分にエモく仕上げられてて、Merm4idの苦労人がなんで天性の暴れ馬に引っ張られているのか、一発で理解る感じがした。
 リカがいつも連れてきてくれるまばゆい光が、何かと暗い場所に沈みがちな自分を照らしてくれるから、さおりさんはリカの隣りにい続けるのだろう。
 『人間と人間の繋がり、それ一個でいいじゃないか……』という、パリピユニットには似合わぬしみじみした感慨もあり、『この二人……かなり”ある”のかッ!?』と驚きもした。
 思慮はないけど悪気もない、心の底からみんなに楽しくなって欲しいリカの無邪気さが、さおりさん相当好きなんだな……”ある”のかッ!!!?

 

 

画像は”D4DJ All Mix”第5話より引用

 あと思い込みと劣等感にガチガチになってる時は鳴ってなかった”音楽”が、仲間の導きでもってさおりさんに響き始めて、コミュニケーションの足場を作っていくのも良かった。
 なんだかんだこのアニメ、音楽のアニメだからね……そういう仕事をメインテーマにしっかりさせるのは大事。
 見てよこのサムズアップ……元気いっぱいで可愛いでしょう。
 なんだかんだ、こうしてしっかり仕草の対比で変化を見せたりするベタ足の演出力もある所が、このアニメ好きよ。

 シコシコ地道に勉強し、作曲ソフトに向き合ってる生真面目さが、リカのパワー勝負とはまた違った対話の扉を開いて、実りのある結果を生み出していくの好きだな。
 ヤバいくらい壁に貼っつけた例文集はまーまーヤバかったわけだが、それもさおりさんの性格の一部ではあって、自分が何が好きで、目の前の相手にどれだけ心が動いているのかを伝える手立てに、確かになってもくれる。
 思い詰めるときもあるけども、こういう地道で普通の苦労人がいてくれるからこそMerm4idのステージが成り立っているのだと、しっかり伝えてくれるエピソードでした。
 さおりさんのドツボをしっかり描くことで、真逆の方向に引っ張ってくれるリカの引力と身勝手も良く照らされて、まさにサブタイトル通りのネガポジで回ってるMerm4idの魅力が良く分かった。
 リカ天性の眩しさと引力は愛本りんくに親しい部分があると思うが、次回六月は待ってましたのハピアラ回。
 一期を楽しく盛り上げてくれた彼女たちが、どんなお話を新たに紡いでくれるのか……とても楽しみです。