イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

UniteUp!:第4話『成功させないと』感想

 三週間ぶりのアイドル青春群像劇、今回は主人公の伏せた視線に切り込むPROTOSTAR初仕事回!
 作中ずーっとくすぶってた明良くんの湿り気に、LEGIT先輩と挑む初めての壁がドカンとぶつかって、努力と友情で夢に近づく王道アイドル物語が力強く展開された。
 幼い仲良し感に満ち足りてた主役ユニットが、ぶつかりあえばこそ高め会える先輩たちのように思いの丈をダイレクトに叩きつけあって、三人で夢に近づいていく手応えが嬉しい。
 細やかな表現力でな~んも出来ないど素人必死の努力と、それが実らない苦しさ、形になっていく輝きがしっかり描かれていて、身体表現の物語としても仕上がりが良かった。
 伏せてた視線が上がるまでをメチャクチャ丁寧に追いかけていて、ある意味偏執的に表現を積み重ねて意味の総体を作っていく作風が、アイドルスポ根と良い化学反応を始めた手応えも感じた。
 やっぱ試練とその克服、ウジウジ湿った内心を友情でぶっ飛ばす勢いで前に飛び出すお話は……面白ぇなッ!!

 

 

 

画像は”UniteUp!”第4話より引用

 というわけでLEGIT先輩勝負のCMに、バックダンサーとして急遽参加することになったPROTOSTAR。
 『第3話でLEGITメインの話をやったのは、ココで先輩/師匠として主役を牽引する説得力を積み上げるためだったかな……』などと思いつつ、大毅先輩が白目剥くほどに踊れないッ!
 最初のボイスレッスンでド素人の自己満足をペラペラ語らせておいて、デビューに必要な壁の分厚さでいきなり殴りつけるの、緩急ついてていい表現だなと思う。
 事務所に入れたことである程度安心して、一歩ずつの小さな成長を実感して、でもそんなの仕事では関係ない。
 そういう場所に、明良くん達はこれから挑んでいくわけだ。

 そこに向き合うには赤色の主人公、背中が丸まり過ぎで。
 これは比喩表現ではなく、今回の明良くんはずーっと視線が地面に下がって、床に書いてある見えない正解をカンニングするように、徹底して”失敗しない”呪いに囚われ続けている。
 20歳の大人が自分たちの運命を預けて頭下げてるのに、ドンと胸を張ってお願いしますとはとても言えず、曖昧な自信のなさに返事がしょぼくれても行く。
 ずっと『そういう感じなのかな?』と感覚してきたけど、実際クローズアップで描かれるの第1回以来な、明良くんの後ろ向きな視線。
 それでも動き出してしまっている運命に乗り遅れないように、必死こいて練習しまくってる汗は、けして嘘ではない。
 降って湧いた今回の試練は、そんな主役の現状を暴いていく強い光でもある。
 

 

 

画像は”UniteUp!”第4話より引用

 自分だけが低いレベルの影に取り込まれたまま、仲間はあっという間に前に進んでいく。
 たった20秒のダンスをまとめるフィナーレで、タイミングは合わないし指も伸びていない。
 足をバンドエイドまみれに必死に努力しても、追いつけない経験の不足、心とからだを縛る鎖。
 明良くんを見つめる東郷先輩の視線も、不安混じりの暗いものだ。
 全体的に焦燥と不安に満ちた暗い修行時代なんだが、そこでも明良くんなり必死にあがいていると、色んな角度から書いて重たい空気を抜いているのは好きだな。

 そしてそういう頑張りを、無下にはしない俺たちの総理大臣。
 瑛士郎パイセンは間違いなく自分を賢いと思いこんでいるバカなんだが、後輩の心意気を汲んで無下にはしない器は確かにあって、好きになれる男である。
 その言葉でずーっと伏せられていた主役の視線が上がって、また引力に引っ張られて落ちていく様子も、彼の心を仕草で捉えてて良い。

 今回は第3話の補足編というか、先輩としてみたLEGITはどういう存在で、それぞれどういう態度で芸事に向き合っているのかを、新たに付け加える筆が強かった。
 大毅先輩は常時ぶっきらぼうにガチで、自分の夢に立ちふさがるものに余計な情は差し出さない。
 瑛士郎パイセンは眼鏡の奥の情熱をダイレクトにぶつけてきて、周りを見つつ正しい道を選んで導いてくれるタイプ。
 そして東郷さんは繊細に距離感を図りつつ、踏み込むべき所ではしっかり前に出て、自分の体重を預け相手の重さを引き受けれる人。
 PROTOSTARの修行時代を鏡にして、他ユニットの見えにくかった人格が掘り下げられていくのはなかなか良いな、と思う。
 大毅先輩のサッパリした態度はキツくもあるが、本気でアイドルやり続けているのならある意味当然の厳しさではあるし、前に出過ぎた部分は瑛士郎パイセンが丁寧に削るしなぁ……。

 

画像は”UniteUp!”第4話より引用

 そんな頼れる先輩も、最初から結束出来ていたわけではないと、お話は既に描いている。
 手を付けられないオムライス、コップに滴る水。
 静物が明良くんの溜め込んだ鬱屈を語り、それが千紘くんの導火線に火をつけていく。
 紙に包まれたままのスプーンでもって、何かが露わにならないまま放置されてる主役の内面を語っていくの、かなり好みの演出方針で好きだなぁ。
 ”A-1系列のド直球アイドル青春モノ”としては、やっぱ”アイドルマスター シンデレラガールズ”の系譜になるんかね。

 幼い仲の良さがずっと強調されてきたPROTOSTARだけども、今回厳しい試練に飲み込まれる中で初めてぶつかって、魔法みたいな夜景の中でお互いのことを語り合うことになる。
 おそらく伝統芸能の家に生まれ育ち、芸事の厳しさに己を磨きながらアイドルに憧れ今ここに立ってる千紘くんにとって、明良くんの伏せた視線は我慢がならないのだろう。
 ここら辺、ダチに背中押されるまで運命にたどり着けず、夢に出会うのも第3話という主役のスタートの遅さが、作中で回収されてる感じもあるわな。

 そうやって思いにブレーキをかけさせていた、かつての失敗。
 心根が優しくて責任感が強いからこそ、たった一人重荷に押し潰されかけて足を止めてしまう明良くんの気質が、万里くんの差し出したとっておきの夜景に緩やかに解けていく。
 暗い影に目を伏せてばかりいる仲間の隣で、千紘くんは真っ直ぐに夜を見つめて、自分が果たしたい夢を語る。
 アイドルという職業に彼が感じている尊さ……主役をステージに上げるために捧げられる、たくさんの思いの光の眩しさを伝える。
 あえて怒り問題点を爆発させていく激しさと合わせて、PROTOSTARも三人特有のバランスが生まれつつあると、良く感じられる場面だ。

 

 

 

画像は”UniteUp!”第4話より引用

 そして風が巻き起こり、伏せてばかりだった主役の顔がようやく上がる。
 長らく自分を包囲していた後悔の海を、這い上がって夢を取り戻しても良いのだと思える光が目の前にあるのに、諦めて逃げたくはない。
 そんな本心を仲間の熱で暴かれて、PROTOSTAR本格始動ッ!!
 やっぱコツコツシコシコ努力しつつ、その方向性を適宜修正して実力が積み重なっていく描写が良いと、個人的な好みにドンピシャで嬉しいなぁ……。
 その起爆剤が、夢に向かって全力疾走、仲間の支えでフラつく心を真っ直ぐに走る王道踏破なのは、大変いい感じ。

 縮こまって下を向いていた心が、かけがえない仲間の言葉で前を向いたなら、身体もそこについてくる。
 デッド・リミット直前でギリギリ仕上がったダンスが、しっかり明良くんの成長を切り取っているのがいい感じである。
 ステージ表現で観客の心を動かすお話をやる以上、キャラクターの心理とドラマがどうパフォーマンスに反映されて、その表現がどう変化していったかを丁寧に追いかけてくれると、二次元の絵に匂いと体温が宿ってくれてありがたい。


 

 

画像は”UniteUp!”第4話より引用

 かくして特別EDの尺も活用して、事務所一丸で勝ち取った晴れの日の喜びを描き、そこから続く新たな夢を予告して、次回に続く!
 丁寧に努力と迷いを描くお話だったので、その総決算となる仕事当日の様子を書く場面で話をまとめてくれたのが、充実感のあるフィナーレで良かった。
 LEGIT含めてみんな頑張っていたし、成長と結果につながる努力を積み上げてきたわけで、それが報われる瞬間で話がまとまってくれると『ああ、良いもん見たな……』って感じになるよね。
 つーかさぁ……ダンスの京子先生、存在自体がえっち過ぎない!? 大丈夫なの!!?


 というわけで、LEGIT先輩と頑張るPROTOSTARの修行時代、その一歩目でした。
 カラーリングは赤なのに主役に当事者性と熱量が足らないのが、正直惜しいところだったんだが、今回のPROTOSTAR奮戦記はそこをしっかり補う真っ直ぐな強さがあったと思う。
 LEGIT側の思いやバックボーンを上手く混ぜ込むことで、問題がひよっこユニットの一歩目で終わらず、先輩なりの勝負どころに横幅広く広がっていたのも良かった。
 何かと丁寧な……時に丁寧過ぎる足取りで進んでいくこのお話ですが、芸能スポ根の大事なところをしっかり抑え、少年たちを捉える悩みや困難を努力と友情で超えていく熱量が、細やかな描写を背に受けて高く飛んでいました。
 こういうベタ足の強さをしっかり見せてくれると、今後への期待も上がるわな。
 次回お披露目も波乱含みだと思いますが、さてどう書くか楽しみですね!!