イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

UniteUp!:第5話『立ち上がらないと』感想

 芸能スポ根の王道を独自の歩調でひた走るアニメ、一拍事務所代表の二人にメインカメラが向く、変拍子の第5話である。
 前回のヒキから一気にPROTOSTAR軸で押し込むかと思っていたら、彼らを見守る”大人”がどんな物語を背負っているのか、情熱大陸パロディで掘り下げる展開に。
 ここでそっちに脚を向けるのは自分の感覚ではかなり変則的で、前回ベタ足の熱血芸能物語をやった続きでこう来るのだから、やっぱりヘンテコなアニメではある。
 とはいえメンターであり保護者でもあるAnelaがどんな質感で互いを繋ぎ、どんな歩みでここまでたどり着いたか見たくもあったので、変化球ながらしっかりストライクゾーンに入る、このアニメらしいエピソードとなった。
 世間一般での評価がどんなもんか、正直自分の観測範囲内ではさっぱり手応えのない作品なだけども、俺は好きだし魅力的だなと思っとります。

 

 

 

画像は”UniteUp!”第5話より引用

 というわけで過去/現在という時間の軸、撮影され編集されたドキュメンタリー/なまのままの現実というリアリティの軸を行き来しながら、主役たちが運命を預ける事務所がどうやって作られていったか、その真ん中に立つ男たちの顔が彫り込まれていく。
 今回はAnelaだけでなく、一足先にアイドルデビューを果たしたLEGITとJAXX/JAXXの過去編ともなっており、sMiLeaプロダクション全体が今どういう雰囲気で、どういう歴史を踏まえて形になったかを、横幅広く切り取っていく。
 一世を風靡したアイドルが裏方に下がって後進を育成するということで、社会的注目度も経済的立場も恵まれた状態なのが改めて描写され、泥臭い成り上がり物語というよりは、色々お膳立てされた上でデビューに向けて頑張ってる、PROTOSTARの輪郭もクッキリしてくる回だ。
 キャラクターの成長を示す初期燃料としてはいい仕事してた万里くんのマスク癖を、『もう飽きました!』と見てる側の感覚とシンクロさせながら、コミカルにチャーミングに取り去る手付きとか、かなりいいセンスだと思う。

 その中心にあるのは10年間アイドルをやり続け、山あり谷ありの道を越えて新たな未来へ進みだしてるAnelaである。
 楽才に恵まれ浮世離れした部分がある真音は、凛という才能に出会ったことで自分の居場所を定めた。
 他者とコミュニケーションに難しさを抱えていても、この男が歌ってくれるなら大丈夫。
 そんな思いと間柄を、小さな苗木が立派な花に育つまで温めてきた大人にだって、今まさに”アイドル”を始めようとする主役と同じような物語がある。
 夢の当事者だけでなくその保護者にとっても、ワイワイ賑やかに楽しく転がっていくPROTOSTARの修行時代は大事な夢なのだと描く意味で、今回Anelaにフォーカスしたのは面白い筆だと思う。

 

 

 

画像は”UniteUp!”第5話より引用

 アイドルが夢を売る商売である以上、ドキュメンタリーに仮想化された現実には切り取られない個人的な影が必ずあって、そこで蓄えた力こそが大きな夢を、新しい舞台に引っ張り上げても行く。
 事故で片足をもがれて完璧な夢を作れなくなったことで、迷った末に相棒と新しい道に進むことを決めた凛に、密着するカメラが切り取らないもの。
 それはステージを降りた後も夢の担い手として、後ろに下がりつつ表にも出る(出ないことを許されないくらい、社会的影響力とニーズが大きい)Anelaが10年間、アイドルをやる中で向き合ってきた現実だ。
 客がキレイな幻を求め、それを果たせなくなった後にもまだ続いていく、大事な夢。

 凛が何故そこに踏み出せたか、”事実”を追うように見えて的確に編集されたドキュメンタリーは、重苦しい悩みを既に終わった物語に加工して、大衆へと手渡していく。
 前回新人共の努力の過程を生のまま追いかけたカメラが、今回アイドル10年選手の”物語”が全国ネットで流通するさまを描いていくのは、アイドルという仕事が持つフィクショナルな手触りと、それが剥き出しの事実に繋がっているから宿る熱量、両方を切り取ってきて面白い。

 観客は家電量販店の大型ヴィジョン越しに、Anelaの新しい挑戦を、今まで歩いてきた道の終わりを知り、当人たちは美しい海にあくまで個人的な縁を囁いて、未来に進む指針にしていく。
 そのどちらかだけが本当というわけでも、だからどっちかが嘘というわけでもなく、客に見える投射像と演者が身にまとう実像、両方のあわいにこそ”アイドル”は生まれていく。
 そんな稼業にこそ面白さを知り、色んな過酷さを乗り越えてまだまだ花を咲かせていく二人が見据えるもの……PROTOSTARに見せるもの。



 

画像は”UniteUp!”第5話より引用

 

 ドキュメンタリーの中、まだ名前も実像もない”僕ら”と、ローカルな実態を伴ってそれを見つめる”僕”の間に、清瀬明良は投げ出されている。
 Anelaの過去と感情を掘り下げつつ、そういう主役の現在地も描く、アイドル・メディア論的なエピソードでした。
 中学時代野球で潰れた明良くんは、ずーっと『誰かに見られる自分』にプレッシャーしか感じてこなかったわけだけど、Anelaが駆け抜けて切り開いてくれた”アイドル”という仕事においては、そのあやふやな像にどんだけ実存的な熱量を入れられるかが、成否を分けていく。

 ステージに上がらなくなっても、虚実の間で新たな夢を、夢を継ぐ若人の人生を形作っていく仕事に生きがいを感じてる大人が、用意してくれた最高の道。
 ファンに向けたお披露目ステージで、その先に待つ光と闇がどんな顔なのか、より色こく見えてくるでしょう。
 次回も楽しみですね!