イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プレイレポート 23/03/05 ブラドリウム『贋作・若紫』

 昨日はどらこにあん新作にして集大成、フラグメントシステム第一弾”ブラドリウム”を遊んできました。

 シナリオタイトル:贋作・若紫 システム:ブラドリウム

 シェンツさん:耶麻あぐに:18歳女性:選定者/リライター いかにも一昔前の少女漫画主人公めいた、六条市一のアンラッキーガール。”花嫁”に選ばれた実感もなく、平凡な日々を過ごしている。”騎士”の来訪により世界と己の真実に目覚め、断罪機構としての責務へ進みだしていく。
 よねちょくん:花屋敷八郎:58歳男性:選定者/騎士 ごくごく平凡な良き父だったが、自身の世界崩壊に伴い騎士機関を継承。体の殆どを義肢化し、他人を救うことで己の人間性を確かめる仁愛の機械となった。断片化された世界で、それでも揺るがない真実を求める正義の小市民。
 コバヤシ:倖田ひかり:外見9歳女性:徒花/ヴァンパイア 六条市に君臨する幼き女帝。18年ごとに”花嫁”を針のない時計に変え、世界を新たに動かし直す檻に囚われている。贄としてのみ求められ、自由を求めて叶わず、どこにもいけない籠の中の血吸鳥。

 というわけでPL三人なんでいかにも後腐れなくチュートリアルできそうな一本目を蹴っ飛ばし、因縁ゴロゴロ感情ネトネトな二本目にいきなり挑戦だッ!
 フユ先生の新作ってことで上がったテンションで、好き勝手絶頂に思いつきをぶっ込んだ結果安定性が極端に落ち、現場で色々相談しながら話の方向性を決めるプレイングとなりました。
 『そこは良いけど、ここは俺受けきれないから変えてね!』と、提案に率直なリアクションを返してくれる身内環境、大変ありがたいです。
 かなり久々にお行儀の悪いプレイになりましたが、たまにはそういうこともしなきゃねッ!!(開き直り)

 というわけでドラコニアンが世に問うフラグメントシステム、その一発目を遊んだわけですが、大変良かったです。
 (ステラナイツ+リヴァルチャー+ストリテラ)÷3……っていうシンプルな方程式には当てはまらない、新たな知見と細やかな調整がしっかりゲーム体験の質を上げていて、過去システムで『面白いけどここはどーかな……?』と思っていたポイントが軒並みしっかりフィックスされつつ、どらこにあんらしいカルマの濃い背景世界、糸が明瞭な設計、実際のプレイ体験を最適化するデザインは、より力強く加速。
 オープニングからサイドストーリーまで、物語の構造とTRPGとしての運用形態がしっかり噛み合い、数字と戦闘があるからこそ面白いデータゲーの妙味と、物語をみんなで手びねりしていくナラティブな面白さが、絶妙なバランスで並び立つ傑作でした。

 フユゲーはTRPGの当然とされてきたGMに負荷が過大な構造を解体しつつ、”TRPG”としての特殊な体験をどう保持する(あるいは拡大する)かに、デザインと意識形成の大きな部分を向けていると思います。
 これまで色んなカタチで削り出されてきたそういう工夫が、ひとまとまりとなって新たなシステムを為すのはすごく新鮮で面白い体験であり、このシステムにデザイナーが込めた熱い息吹みたいなものを、勝手に感じ取りながらプレイすることが出来ました。
 僕らはストリテラ式に、シナリオの文面も戦闘データも常時全員参照しながらプレイしていたわけですが、やはり一旦展開を腹に収めた上で今後の方向性を相談し、全員の納得がいくようにお話を編み上げていく体験それ自体が、満足度の高い面白さを持っているのを再確認。
 今回は自分が徒花(ブラドリウムにおけるBOSSキャラクター)を担当する形で進んだんですが、シナリオがサジェストしてる要素をかなりの部分投げ捨てて、やりたいように暴れ倒した感じで造形してしまい、結末含めてどこにたどり着くか、現場でヒネりながら進めていきました。
 この時今後の展開とか想定される方向性とかをぶっちゃけて相談できるのが、不要なストレス抱え込まず欲しい展開引っ張ってくるのにめちゃくちゃ楽で、GMに一本化されていた権限を平たくすると、やっぱTRPGは相当楽になるなー、と感じた。

 GM特権を平たくしていくビルドは戦闘も同じで、ドクトリンと位置取りを重視したオープンデザインの戦闘は臨場感と戦略性が高く、軽便な取り扱いを可能にもしていて、大変面白かったです。
 ラウンド進行と各種数字の上昇、データ的にやれることと戦闘の派手さがしっかり噛み合いコントロールされていて、どういう状況で闘いが進行しているのか、BOSSの視線が誰に飛んでいるのか、隙はどこにあるかという、戦場の切迫感を高めるファクターが表現力と手軽さを併せ持って、しっかりデータ化されていました。
 アルファストライクを回避するためのHPゲージ性と、キャラ性の根幹をデータ化したフラグメントの連動が、自分を縛る枷、戦わなければ解き放たれなかった重たい信念が暴かれていく物語的傾斜をしっかり可視化もしてて、ドラマティックな戦闘になるのも良い。
 徒花のフラグメントは上手くいじると、相当ドラマティックな演出装置として使える感じがあって、フラグメントを砕けばこそ欲しい結末を手に入れるという、『わざわざ戦闘をする意味、殺し合いをしなければたどり着けない場所』を共有する意味でも、優秀な装置だと思います。
 ドクトリンを事前開示してリソース払って惨劇を回避して、脅威感を与えつつも取り返しのつかないダメージを与えすぎないバトルの組み方も、ちょうどいい感じに頭を使えて楽しく、とても良かったです。
 ステラナイツではやや煩雑だった所をバッサリ切って取り扱いを良くしたり、リヴァルチャーでは鉄臭さを出すために複雑だったデータをシンプルにしたり、世界観と雰囲気に合わせた調整がしっかり行われていて、トータル一番洗練されたバトルデザインになっているのが、最新作って感じがして素晴らしい。
 イメージ喚起力という意味でも、数字のせめぎあいという意味でも、戦闘楽しいのはやっぱ良いなぁ……。

 というわけで、たっぷり遊んで実プレイ3時間半、探り探りすらも新鮮で楽しい、とても楽しいセッションでした。
 フユ先生のシステムは毎回発想力と完成度の両立、新しいゲームを貪欲に追い求める推進力と実プレイでの楽しさをカタチにしていく腕力に驚いているわけですが、今まで商業レベルにしっかり持っていって、実際に売って遊んでサポートして、蓄えた経験値を全部突っ込んで生まれたこのフラグメントシステム、集大成以上の凄みがあってとても良かったです。
 世界観構築も提示されてるシナリオも、『ワシはこういうのが好きなんじゃッ!』っていう火傷するような熱がしっかり宿って、それを取り込んで実際のゲームの中で他のキャラクターと、プレイヤーと言葉をかわして物語を編む材料として、実践的で魅力的でした。
 この『今、一番強くて遊べるシステム』を作る能力ってホント大変なもんだと思っていて、気持ちよく圧倒されつつ、遊び終えて『面白かったね、また遊びたいね』と感じられるゲーム体験、大変ありがたかったです。

 大変楽しいセッションでした。
 同卓していただいた方、ありがとうございました。