イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ひろがるスカイ!プリキュア:第6話『伝えて! ソラの本当の気持ち』感想

 愛と正義と真実を追い求め、未来へ駆けてく二人の物語、やや画角を変えペースを落としたひろプリ第6話である。
 正義マシーンだったソラちゃんの柔らけぇ中身を、純白の愛で抉った前回で、ひとまずヒーロー物語としての土台が整った感じの今作。
 第6話は学校も始まり、当たり前に続いていく二人の日常がどんな手触りなのか、しっかり削り出すエピソードとなりました。
 もともと敵さんの事情に踏み込まなかったり、新戦士追加ノルマを焦ってなかったり、どっしり構えて運命に導かれた女と女がどう関係構築していくか、丁寧な積み上げが魅力なこのアニメ。
 ましろの隣にいないソラの時間、ソラが隣にいないましろの時間がどれだけ手持ち無沙汰か、ゆったり描くことで心に溢れる愛がどんだけデカいか、よく分かる話数でした。
 BPMを落として日常を掘り下げることで、ソラちゃんが元気いっぱいに過ごすチャーミングな歩調も感じ取れたし、そこに足並みを合わせて導きをくれるあげはお姉さんのありがたさ、端っこの方で延々バブバブしてるエルちゃんも良かった。
 俺はエルちゃんがエルちゃんなりの楽しさで、デケーキラキラな目ん玉大きく広げて世界と向き合ってる瞬間をたくさん書いてくれると、本当に嬉しいからよ……。
 そこにソラちゃんが自分の仕事をしながら、当たり前に隣りにいてくれるありがたさもトンデモねぇからよ……。

 

 というわけで学校も始まり、異世界人とフツーの中学生の人生が引き離されるッ! ……って悲壮感は特になく、人生初の”おともだち”を手に入れたソラちゃんはウキウキと日々を過ごすのであった。
 やや眺めのアバンでひろプリ創世神話をおさらいして、そっから続いていく日々をゆったり描く構成は、アップテンポに勢いよく駆け抜けた序章が終わり、新しい幕が上がるワクワク感が強くあった。
 本拠地になる虹ヶ丘邸がめっちゃゴージャスなので、ひろプリは煤けた日常から半歩はみ出したワクワク感があり、魔女のおばあちゃんがゴリゴリ魔法薬作ってる描写とか、日常と非日常が混ざり合ってる不思議な楽しさを強調していた。
 そういうBPMのお話に、前回人生の荒波に押されて思わず飛び出した強い言葉をソラちゃんが謝罪する場面を、しっかり焼き込んでくるのはひろプリらしい細やかな配慮…か?
 とにかくソラ・ハレワタールという少女を気持ちのいい隣人として、ノイズ少なく視聴者に届けようという気合に満ちてるのは感じる。

 んで、そんなソラちゃんなり充実した日常に足りないものが何か、新成人のお姉さんが教授仕るッ!
 キュアバタフライ爆誕がいつになるかは定かではないが、『聖あげはは最高の”姉”です』と、ビシバシ押し込んでくる下準備の良さは最高に良い。
 ソラちゃんがましろちゃんを追う話なんだけども、今回ましろちゃんの学園生活はそこまで尺を使ってなくて、橋渡しをしてくれるあげはちゃんの人格を削り出すのに力入っていたのは、なかなか面白い作りだ。
 スカイランドですら浮いてた、ヒーローを目指す機械のようなソラの生き方に、するりと滑り込んだピンク色の夢。
 それがどんだけ魂ビタビタに浸して脳髄ズブズブになってるか、いつも元気なソラちゃんらしからぬ逡巡を通して教えてくる、火力の強いお話でもある。

 プリキュアに変身しようがしなかろうが、常時”善”を行うソラちゃんの生き方はとても正しい。
 だが正しさ以外にも人が追い求めるべきものは沢山あって、この世界に墜ちてましろと出会ったことで、より新しい輝きが自分を広げていく予感にこそ、ソラ・ハレワタールは惹かれているのだと思う。
 タイトルにある””ひろがるスカイ!”は、ましろや他の人と出会い触れ合うことで広がっていく、ソラちゃんのアンバランスな人生を表す言葉でもあるのだろう。

 そういう意味では、接点なかったあげはちゃんと『ましろん……いいよね……』で繋がり、心の戦化粧としてメイクの意味を教えてもらい、湧き上がる新しい気持ちを照れずに真っ直ぐ伝える体験は、すごく大事なものだったと思う。
 歳も体験してきたことも違う相手と、同じ人間に惹かれる気持ちと繋がって、知らなかった心へ踏み込む甘い躊躇いを、越えていける助けをもらう。
 ずーっと一人でヒロイズムとだけ向き合ってきたソラちゃんにとって、そういう体験が心の畑を耕して、芽を出すモノの意味は凄く大きいと思う。
 今回少女等身大の切実さを宿す、友達に大好きと伝える闘いを手伝ってもらったことで、あげはお姉さんはソラちゃんの中でかなり大事な存在になったと思うし、こっからどう関係を膨らませていくかも楽しみだ。
 初手からこのメンター感で舞台に立っていると、ちょっと勾配付きすぎてる感じを受けたかもしれないけど、登場初回で虹ヶ丘ましろに圧倒的に救われちまってる描写があったことで、歳関係なくタメな風通しが爽やかなのは、いい見せ方よね。

 

 ましろちゃんもまた、新たに動き出した日常の中空を見上げては異世界から降り立った運命を想い、同じ寂しさで時間を溶かしていく。
 学校生活の中身は転校生・ソラを描く次回以降彫り込んでいく部分だろうし、むしろ描かないことで異世界の蒼がない虹ヶ丘ましろの人生がどんだけ灰色か、ズブズブ感が際立った感じもある。
 悪くはないのだけれども、決定的に色合いの欠けた時間を長く描いて、なんてことないけどとても難しい『大好き』をお互いに伝えるまでで一話使う構成が、贅沢な手触りで二人の背丈を伝えてきた。
 ひろプリ、子どもが友達と出会い、お互いが大事になり、時折弱さを預けながらどんどん強く素晴らしくなっていく過程を大事に転がしている所が、いっとう好きだな。

 その反動でカバドンの出番は極端に減ったが、まー今までが出すぎだった感もあり、しかしコミカルな悪役としての”コク”は強まっている感じもあり、なかなかいい塩梅だった。
 敵さんが悪事決め込む裏事情を掘り下げるのは、1クール目終わりあたりになるかなぁ、この感じだと……。
 物語を転がす大きなフレームと、その内側に積み重なる人生の実感どっちに重点して話を取り回していくかは、何しろ一年間長いシリーズなのでプリキュアごと色んな選択があるし、色んな見せ方がある。
 現状カバドンは力だけで自分も他人も判断し、その価値体系を暴力で強要するヤバさと、そんなゴミカスにも生活の悲哀があり、にじみ出るペーソスがあると伝える筆のバランスが、結構いいなと感じる。
 最初最悪感マシマシな反発強く作っておいて、トホホな笑いでそこを崩して、でも悪の手触りもしっかり残す……というカバドンの転がし方は、今後どういう方向でこのアニメが自分を語るにしても、いい足場になってくれんじゃないかな。
 『俺つええ』しか軸がない寂しさと危うさに、追い込まれつつ気づけない寂しさがジワジワ匂い立ってきて、どういう使い方するにしてもそこら辺をしっかり煮込んでくれると、俺好みで嬉しい感じだ。

 

 というわけで、邂逅(であ)っちまった運命は激しく若き魂を揺さぶり、お互いの世界にお互いが深く食い込んでいることを教えるエピソードでした。
 ある意味ここまで5話の答え合わせというか、ヒロイックな闘いを遠ざけて日常の色を刻したからこそ、時空を越えた出会いが一人間をどう変えていくのか、現状確認と未来への見取り図がしっかり書かれた印象。
 第6話にして相当強火でズブズブ煮込まれている今年のプリキュア、残りの話数を駆け抜けた後どんだけ”仕上がって”るのか、大変楽しみですね!