イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

UniteUp!:第11話『信じないと』感想

 降って湧いたスキャンダルに、合同ライブ直前の事務所は大揺れ!
 団結を確かめ未来を切り開くために、必要なのは野球だッ!!!!!!!!!
 独特の呼吸で展開してきた新世代アイドルストーリー、本領発揮の第11話である。
 いやー、薄々感づいてたけども変なアニメだなぁ本当にッ!(このタイミングで断言しておかないと、作品と自分に嘘をつく事になるのであえて大声で吠える)

 

 明らか終盤戦に必要なシリアスムードを投げ込むためだけにぶっこまれた、スキャンダル解決に一切寄与しないだろう草野球を通じ、センター候補三人がそれぞれ自分の心を整理。
 思いを白球にぶつけなんか良い感じにラストステージ突入! ……って空気だけども、荒れた世間の波風どこ行ったの? という話ではある。
 もともとアイドルモノって登場人物の気持ち次第な作劇だとは思うが、あんまりにも事務所の外側、三人の関係性からはみ出した部分をバッサリ切り捨てて展開してて、なかなかに凄い。
 その分、特に明良くんが大トリ務める内的理由付けは、このアニメらしいナイーブな表現を生かしてなかなか良い感じに表現されていたのだが、客観的説得力より内的動員(”ノリと勢い”の雅語)で押し切るには、事務所の外側から荒れる要素を盛り込みすぎてもいて。
 ここら辺のノイズを合同ライブ当日に持ち込むのか、それとも今回ホームランかっ飛ばしてなかったことになったのか、最終話見てみるまで判然としない所含めて、なかなかスゲー作品である。

 このフワッとしたノリ重点は思い返せば最初からずっとそうで、今までの類型からちいと外した所に投げ込んでくる手付きは、特長であり歪な短所でもあったかな、と最終話前に思う。
 基本的に独自のムードとルールで展開するわりに、時折思い出したように一般的に良しとされる展開とか価値観とかがひょっこり顔を出して、異物感ゴリゴリで場所を締めたり、作品独自の空気に上手く溶かされたりしてきた。
 今回示された、明良くんが最後真ん中を張る物語的熱量が上滑りするのか、しっくりハマっていい終わりに繋がるかは、本当に最終話を見てみないと分からない。
 このなんとも判然としない感覚が結構好みだからこのお話見続けても来たが、まー変なもんは変だと、自分的にはそろそろ言い切った方がいい頃合いではあろう。
 言葉にならない情感だとか、言葉にしない意味合いだとかを豊かに語る筆と、クニャッと真芯を避けてぶん回される描写の同居は今回特に冴えてたが、次回総決算のライブでどんな炸裂を見せるのか。
 最後まで確信が持てず油断が出来ず、しかし期待もしているこの奇妙な感じは、大変に独特である。

 

 

 

画像は”UniteUp!”第11話より引用

 一般常識から文字通り遊離して、高いところをフワフワ飛んでる楽翔くんを、仲間の領分まで引っ張り落として、お互いの目が見える距離まで引き込んだり。
 ずーっと後悔に囚われてる大毅くんの、仲間を傷つけてでも譲れぬ気負いがどこから来ているかとか。
 そんな二人のセンター候補が、センターをあえて託す選択をすることこそが新たな成長なのだと示すべく、託される明良くんに説得力を出すべく、この第11話は描かれていく。
 そういう心境や関係性、キャラクター性をビジュアルで示す画作りはやっぱ好きで、こういう所の底力がなんか奇妙なところでフワッフワ浮いてる語り口を、なんとか僕の側に近づけてくれてる感じはある。
 ガランとした教室で、生活音をバックに過去を語りだす大毅くんとか、メチャクチャ悠長で、だからこそこのアニメらしくて好きだ。

 今回は第4話と第9話が良く効いてるエピソードで、話の中核である”アイドル”に主役が本腰入れて向き合う理由を第4話で、楽翔くんの得意なキャラクター性を第9話で描いておいたことが、展開を下支えしている。
 明良くんにとってセンターに、アイドルに拘り続ける大毅くんは憧れのど真ん中であり、絶対に信じなければいけない大事な仲間で、不信に事務所が揺れたとしても主人公は動じない。
 その情熱が文字通り高いところで一人、自分独自の世界に浮遊していた楽翔くんを仲間の領域へ、大毅くんがあの時センターの重圧を見上げそれでもなお踊ったのと同じ場所へと、幸福に引っ張り落とす。
 そうやって目線がおなじになることで、楽翔くんは仲間や自分を傷つけた大毅くんの譲れぬこだわりを理解し、歩み寄ることができる。

 『あんだけワイハで仲良し営業しておいて、簡単に揺さぶられすぎだろsMiLea』とか『ガキども混乱のど真ん中に置き去りに、Anelaは何やってんだ』とか『でもまぁ、大人が大人の責任果たしちゃったらドラマの転がる余地ないよなぁ、この作りだと』とか。
 色々ツッコむところはあるが、このアニメがエモーションを作り上げる筆致が肌にあっているので、雰囲気で何となく飲み込める範疇には収まっている。
 逆にこういう美麗でトンチキな”味”抜きで、必要なダンドリだけを外から急に貼っつけて話を作られても、全然ノレないのは第6話で既にやったしな……。

 

 

 

画像は”UniteUp!”第11話より引用

 というわけでモヒカンオーラ全開のブラック草野球軍団と、青空の下全力ファイトだ!!
 ……なんでだよ!! いやマジで!!
 理屈としては、野球での挫折が心に引っかかってなかなか前に進めないと書いてきた明良くんが、最終回で堂々センター進むためには過去と現在をまるごとバックスクリーンに叩き込む必要がある……てのは解る。
 解るが、さっきまでスキャンダルがどうのステージがどうのグツグツ煮込んでいた話が、最悪教諭のテキトー勧誘で河川敷に勢いよく転がりだして、白球追いかけるのはいかさまトビ過ぎだろッ!!
 まぁ、このトビ方がUniteup! 的だ……とも思うけど。

 罪悪感と継いだ重荷が枷になって、なかなか素直になれなかった大毅くんを開放し、楽翔くんと手を取らせるためには、なーんも考えず汗流すのが良かった……のだろうか?
 正直さっぱり判らんけども、作中の描写としてはいらんこだわりを捨てる形でセンター候補その一が一歩前に進んで、フツーの苦悩がなかなか分からない天才肌が自分を歩み寄らせてくれた新人に可能性を感じて、明良くんが真ん中背負う形が整う。
 脇目も振らず自分にできること、するべきことに一生懸命な明良くんが、一心不乱に見えて余計ごとしか考えてない大毅くんを超えるのも、自分の世界が強くありすぎて広がっていかない楽翔くんに認められるのも、一応納得は行く。
 その象徴として、平和に全力出せる野球はちょうどいいゲーム……なのかもしれない。
 でも借りたユニフォームはちゃんと返せよ! あとホーム踏んで勝たせてやれよ!!

 

 僕は主人公が主人公である理由が、キャラの立ち居振る舞いと物語の転がし方でその作品なり示されれば、まぁまぁ納得してお話を飲めるタイプだ。
 今回不思議な影響力を、特に自覚することなくボンヤリ広げていた明良くんだが、その無邪気な無自覚がカリスマっぽくて、結構好きな描き方だったりする。
 大毅くんも楽翔くんも、自分がこだわるスタイルでセンターにしがみつくより、そのこだわりを捨てて新しい自分に出会い直すことが、成長だと描かれてきた。
 そう納得させる不思議な魅力が明良くんにはあって、譲ることこそが今選べる最良なのだという描写には、結構納得も行っている。

 同時にそこに行き着くまでのあんまりに独特な足取りが、最終回を前に『大丈夫かこのアニメ……』と思わせもする。
 このなんとも名状しがたい、不思議な愛嬌と八方破れのハチャメチャと、それでいてそこまで勢いだけでツッコミもしない妙な思弁性は、思い返せばずっとこのお話に宿っていた。
 それはまぁ、それとして悪くはないものなのではないかなと、残り1話まで見届けて今思う。
 次回最終回、一体何を描くのか。
 僕はとても楽しみです。