イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

スキップとローファー:第2話『そわそわ うろうろ』感想

 石川から吹っ飛んできた青春爆弾が巻き起こす、複雑で真っ直ぐな季節の嵐。
 作品が扱う人間関係の手応えを、主役やその友人(候補)の人格とともに伝えてくる、スキップとローファー第2話である。
 時に抽象的で少女漫画っぽい背景に、多彩にテンポ良く切り替わって独自の面白さを作りつつ、感情が色濃く二事務場面ではしっかり強めのエモをねじ込んでくる。
 ドラマの語り口と同じくらい、アニメとして何を描いていくかが美津未ちゃんの一日、彼女の目に触れて広がっていく世界の中で、どっしり積み上げられるエピソードでした。
 軽妙でひょうきんな語り口も、高校生活の複雑さ、人間が背負ってる難しさに切り込む鋭い重たさも、両方武器に変えられる巧さが、けして悪目立ちすることなく息づいてて、凄く良かったです。
 めちゃくちゃシンプルに、”動く絵”としてアニメをどう仕上げていくか、かなり心を配ったアニメなんだな……。
 そういうアニメとしてのフィジカルが強いことが、キャラの立った主役が独自の爽やかさで青春を駆けていくお話の、根っこをしっかり支えている感じがあった。

 

 

 

画像は”スキップとローファー”第2話から引用

 物語は美津未ちゃんがナオちゃんと朝家を出て、家に帰ってくるまでの一日を追う。
 ほっぺたのモチモチ感を超強調してくる作画に微笑ましい愛しさを早速感じつつ、しかし電車の中放たれる透明な悪意は、確かに幸せな二人を射抜いている。
 美津未ちゃんは素敵なトボケ方で世界を軽快に飛び回っているが、そこは重たくドス黒いものが排除された”優しい世界”では、けしてない。
 そして美津未ちゃんは、慣れない難しさを大都会東京で叩きつけられながらも、ミカちゃんの手を小さく握ることで、人間が背負わなくてもいい当たり前の痛みから、守ってあげようと出来る人だ。
 漫画的な記号かと思われたナオちゃんのセクシャリティを揶揄する声も、それを気にかけてさり気なく、暖かな掌を伸ばしてあげられる強さも、確かにこのお話にある。
 ナオちゃんと別れ、一人で新しい教室、新しい街に向き合う美津未ちゃんは色々ズレた行動に出るわけだが、その根っこには人間の一番大事で柔らかな部分へ、適切に手を伸ばせる資質がある。
 それさえあれば悩ましい人間関係も、複雑怪奇に転がる学園生活も、きっといい所に進みだしていくだろう。
 そういう信頼を小さな描写の中に、しっかり埋め込んでお話が始まるのが、なかなか親切なアニメである。
 

 

画像は”スキップとローファー”第2話から引用

 極寒自己紹介でスベったり、計算高いクラスメイトにひっそり釘を差されたり、クールな美少女との距離感を測ったり、初のカラオケでクリティカル選曲を果たしたり。
 クラスメイト八人の寂れた故郷ではなかなか出会わなかったものに、東京の美津未ちゃんは出会う。
 美津未ちゃんはド天然のきらいがあって、色々力んでやらかすわけだが、それが結構意外な所に刺さって、結果いいところに落ち着いていく星を持っている。
 主人公補正というよりは、電車の中で既に見せていた率直で優しい心根が、そのズレを独自の魅力に変えてくれている感じが見ている側にも伝わり、展開には心地よい納得がある。
 そういうチャーミングな影響力にほだされて、志摩くんも美津未ちゃんを気に入り、肩肘張らない距離感が自然と近づいても来る。
 しかしそういう接近は、別の角度から難しさを引き寄せもする。

 後に志摩くんに見透かされ釘を差される、ミカちゃんの計算高い立ち回り。
 その毒気に当てられ固くなりかけていた美津未ちゃんは、故郷石川の親友と語らうことで大事なものを思い出し、初のクラスメイトとの交流を成功させる。
 それは誰かが用意したありモノの正解ではなく、美津未ちゃんが自然と取り出す彼女だけの答えで、そのオリジナリティを面白いと、クールな結月ちゃんもガードを解く。

 美津未ちゃんを包囲しているいかにも都会的でオシャレで、狭くて息が詰まる街角と、故郷石川の広々とした自然、そこで微笑むふみちゃんの暖かさが、大変良い対比だ。
 美津未ちゃんは人間として強いエンジンを天然で有しているが、高校生という年頃、新たな環境の難しさと無縁の、無敵のヒーローではけしてない。
 どうすればクラスに上手く馴染めるか、新しい友達が出来るか彼女なり考え、スベり、しかしその暴投が受け取り手すら気づいていなかったストライクゾーンに入って、結果オーライ万事良好。
 そういう足取りで、青春を進んでいく少女である。
 そんな彼女が良い道程を進めるのも、多分新しく出来た友達の人生が良くなっていくのも、大らかで美しい故郷の思い出が、彼女の震えを抱きしめてくれるからだ。
 変えるべき場所から旅立ったからこその難しさに、主人公が向き合える理由がとても美しく、心地よい情景として描かれているのも、僕がこのお話を心地よく飲み込む、大事な足場なのだろう。

 ミカちゃんとの距離感は今後まだまだ揺れそうだが、一見付き合いづらそうな結月ちゃんがソッコー名前呼びするくらい美津未ちゃんを気に入って、側にいてくれそうなのは大変良かった。
 クラスメイトにカメラが回ってみると、それぞれ個別の難しさを当然抱えている感じがあって、美津未ちゃんと触れ合う中でそれがどう解されていくか、こっから先のお話が楽しみにもなる。
 鋳型にはまらないオリジナリティと、それを異物感ではなく魅力に変えられるピュアさが美津未ちゃんの強みだけども、高校生たちを包囲してる常識の檻を、しっかり描くのは大事だ。
 そうして生まれるリアリティを、美津未ちゃんが痛快に望ましく書き換えていくお話の片鱗が、ちょっとギクシャク難しくて、生っぽい感触が確かにあるカラオケ交流会にはしっかりあった。
 美津未ちゃんは扉越し、色んな人が囚われてる難しさに気づき見つめた上で、その重たさに縛られることなく、なにか特別な答えと爽やかな風を、持ってきてくれる人なのだ。
 そういう主役とその物語を、たぶん僕は好きになるだろう。
 二話にして、嬉しい予感だ。

 

 

 

画像は”スキップとローファー”第2話から引用

 癖っ毛の犬のように朗らかで従順な志摩くんが、笑顔の奥で抱えてる寂しさと陰り。
 エキセントリックな演劇部長の乱入でもって、ここにも波風が立ち始める。
 やっぱこういうタイプの木村くんを摂取すると、肌が潤ってありがたいな……今後もゴリゴリ前に出てくれると嬉しい。
 あと結月ちゃんの美津未ちゃんガードが超早くて、自分が矢面に立ってダチを変人から守ろうとする侠気に、『友情ホットなクールガールじゃん……』って好きになった。
 あるがままの己をどう受け取ったものか、自分とも他人とも握手するのが難しい人たちが、美津未ちゃんと出会うことでその方法を掴んでいくという、お話なのかもしれない。
 俺はそういう話が好きなので、そうなってくれたら良いな。

 んで肩肘張らない素直イケメンに思える志摩くんの、思わぬ暗い重たさだけども。
 志摩くんにとって美津未ちゃんとの出会いって、壊さず大事にしたいものだと感じるから、部長に見せたような尖りはかなり厳重に覆い隠している感じ。
 でも美津未ちゃんの優秀なセンサーは、新しく友だちになった素敵な男の子が何かを背負っていて、どこか無理していることをしっかり見抜いて、寂しく思う。
 破天荒でド天然な勢いの良さと、この繊細な人間関係の視力が同居している所も、美津未ちゃんを好ましく思える理由なのだろう。
 ヘンテコだけど嫌じゃなく、勢い良いけど鈍感ではない。
 凄く特殊でいいバランスで主役を立てて、そんな美津未ちゃんが自分らしくあることで生まれる波紋が、色んな人に広がっていく様子を描く。
 俺はそういう話が好きなので、そうなってくれたら本当に良い。

 美しい夕日に漂う寂しさと、濃い影の中の危うさを絵の具に、パッと見の完璧イケメンっぷりが覆い隠す中身を、ジワリ滲ませてきた志摩くん。
 彼の内側に美津未ちゃんが今後、どんな風に手を伸ばしていくのか見守りたくなる、とても良い第2話でした。
 キャラとドラマ、作品世界のお話のトーンが要求するものを、アニメの全要素が全力で引き受けて、ちょうどいい手触りで差し出せるよう工夫と努力を重ねてくれてる。
 そういうありがたさがしっかり届いて、見てて嬉しくなる話数でしたね。
 美津未ちゃんが身を置いている場所の、当たり前な難しさもしっかり描かれて、北陸産のチャーミングな怪獣がそんな檻をどうぶっ壊していくのか。
 次回も大変楽しみです。