イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

わんだふるぷりきゅあ!:第14話『まゆ、はじめてのお泊り』感想

 どれだけ強く望んだとしても、幼子は新たな経験を経て成長を果たし、抱きしめた腕から巣立っていく。
 そんな宿命を、おすまし顔のビューティー猫ちゃんがどう受け止めていくのか。
 可愛らしい外見の物語に、炸裂寸前の湿度を詰め込んだ危険物、わんだふるぷりきゅあ! 第14話である。

 序盤からその人見知りとユキ依存を見守ってきた、猫屋敷まゆが犬飼いろはという陽性の少女に出会い、”はじめてのお泊り”を果たし、キュアニャミーが必死に遠ざけようとした世界の真実を知り、自分の意志で危険へと踏み込んでいく回である。
 わんぷりの特長であるどっしりした語り口が、まゆちゃんがだんだんユキと二人きりで震えていた狭い聖域から身を乗り出して、新しい友達や体験に踏み出していく様子を、感慨深く受け止めさせてくれた。
 彼女にとってどれだけユキが特別な存在なのか、その出会いも含めて描いたからこそ、ユキがいてくれたからこそ生まれる小さな”はじめて”と、そこで育まれる友達との触れ合い、決意と変化には特別な手応えがあった。
 ここをイベント優先で手早く済ませていたら、人見知りな女の子が頭グルグルしつつも大事なユキのため、小さくて大きな決意を固める様子にグッと来はしなかっただろうし、そんなまゆの変化に手を差し伸べたくても置いていかれてしまう、ユキに切なさを感じはしなかっただろう。
 ふわりと頑是ない語り口を選んではいるものの、非常に丁寧にキャラがどんな存在であり他のキャラとどう繋がるのか描いているわんぷりの、強い所が良く出た回だった。

 

 犬飼家はおバカで元気なこむぎが、世界を走り回っていろんなことを学び大きくなっていく役を担当する関係上、”姉”であるいろはちゃんは登場時から結構人間的な完成度が高く、周りをよく見て傷ついている人がいないか、手を差し伸べられる成熟を備えていた。
 これが今回、ユキが心配で心配で涙まで浮かべるまゆちゃんを優しく包むわけだが、猫屋敷家においては”姉”たるユキがキュアニャミーに変じ、人見知りで頼りない”妹”を無言の内に守るべく、哀れなガルガルを殴り飛ばす決断をさせている。
 2×2の主役それぞれが、異なった人格と関係性をもって作中生きている所が面白いわけだが、まゆちゃんは出だしが危うく頼りなかったからこそ、小さな変化と成長を積み重ねる『変わる主役』だと言える。

 そんな彼女の変化は堂々褒められるような大きな決断だけでなく、凄く身近で小さな選択を苗床にも芽吹いていく。
 はじめてのお泊りに目ん玉グルグルしつつ、ユキ愛しさをテコにしてエイヤと自分を前に投げ出したら、とっても素敵な夜を友達と過ごせた。
 わんぷりらしいどっしりとした描線が縁取る、少女たちの楽しい時間には凄く温かな手触りがあり、何かと心配性なまゆちゃんが『ああ、お泊りして良かったな……』と、ポジティブに変化を捉えられそうな豊かさを感じ取れた。
 皆で食べる餃子、真夜中のおしゃべり、不安を共有してくれる特別さ。
 ここまで猫屋敷まゆの(あまり強靭とはいえない)心根を丁寧に描いてきたからこそ、今回『ユキのために泊まる!』と決めた少女の、ちっぽけだけどとても大事な決断が何を生み出したのか、実在感を込めて感じ取れたのはとても良かった。
 こういう手応えが凄くしっかりしているの、ホントわんぷりの強いところだと思う。

 

 犬飼姉妹のうっかりからプリキュア真実がまゆにバレ、コレまでは怖がるばかりだったガルガルの襲撃に、自分にも出来ることがあるかもしれないと決意を固めて、まゆの世界は変わっていく。
 それは結構危険に満ちた冒険であり、だからこそとても親しくなったいろはとこむぎ、今回も状況説明&整理役マジご苦労な悟くん達の、助けになりたいと思える試練だ。
 その危うさから危なっかしい”妹”を遠ざけるために、ニャミーは必死こいて一人で戦っていたわけだが、姉の心妹知らず……というか、知らせぬ事がユキの矜持だったのだろう、心はケージの扉越しすれ違って、運命は弱ったユキの手を滑り落ちていく。
 ”姉”の眼の前でイチャコラぶっこく犬飼姉妹に、ユキが険しい顔してたけれども、それはただ嫉妬していただけではなく、自分が傷を追ってでも無縁でいて欲しかった戦いの領域から、大事な妹を遠ざけたいのに押し付けてくる連中へ、結構怒っていたのだと思う。

 このニャミーの気持ちは雪の中の出会い以来共に育んできた、猫屋敷姉妹の大事な宝物なわけだが、ただ守り/守られる一方的な関係が、永遠に続くわけでもない。
 まゆはユキだけいれば幸せだと思えた、それしか幸せを支える基盤がなかった孤独な時代から、いろはちゃんという成熟した理解者と出会い、触れ合い、一緒に新しい世界へ進み出している。
 ユキだけがまゆを守ってやれるわけでも、成長のきっかけを与えられるわけではなく、愛の檻では窮屈なくらいまゆの精神は、しっかり育っているのだ。
 その事実をユキが見ていない……というわけではないと思うが、なにっしろ今までがメチャクチャ危なっかしかったので庇護欲と警戒心は強いだろうし、それも愛ゆえだしで、なかなかに複雑だ。

 

 まゆが健全な成長を果たし”姉”離れの頃合いに来ている事実を描くためには、なんでもかんでも先回りして危険を叩き潰し真実を隠してしまう、おすまし顔に極大感情秘めた優しい猫ちゃんを、ちょっと遠ざけなければ話が回らなかった感じもある。
 というかたった一人でガルガルと戦い、まゆが住んでいる街を守るニャミーの戦いは負荷が大きく、限界が来てぶっ倒れた……という所だろうか。
 そういう意味でも、猫屋敷の姉妹それぞれが二人きりの幸せな檻に閉じこもるのではなく、より善く生きるためにも誰かの手を取って広い場所へ出ていく時が近づいているのだろうけど、ニャミーの愛と執着はマージでデカいので、どう乗り越えていくのかハラハラと楽しみである。

 ここら辺、こむぎが空気読まずにガスガス親愛体当りしているのが効いてきそうかな、と思うところだが、まゆちゃんがユキ抜きでも世界を広げていけてるのに対し、ユキはまゆが巣立った後の世界で自分を満たせない危うさが、バリバリ匂っとるから怖いな……。
 まゆがユキに頼り切りなように見えて、ユキこそが『自分を頼るまゆ、頼られる自分』というイメージと関係性に依存してなかなか抜け出せない逆転、愛がお互いを縛り支え合う共依存関係の描き方として秀逸だと思う。
 子ども番組でやるには少々湿り気強すぎって感じがしないわけでもないが、ここに全力を注ぎ込んできたからこそ”プリキュア”があるわけで、臨界点までじっくり丁寧に、禁じ手なしに駆け抜けていって欲しいもんだ。

 

 というわけで猫屋敷サーガはまだまだ続く! 巣立ちの頃が近づく姉妹の揺れる感情を、ワクワクお泊りに反射して描く回でした。
 動物豆知識をバトルに交えて展開する、ちょっと教育番組っぽい味わいも健在で、可聴域の差を活かしてニワトリガルガル攻略していく組み立て、大変面白かったです。
 丁寧に非日常の世界を知らないまゆちゃんを描いていたからこそ、”知ってる”側になる決断の意味が大きく描けていたのも、わんぷり独特の転がし方で良かったなぁ……。
 やっぱ現代異能バトルものとして、かなり面白い切り取り方と描き方してると感じるね。

 ユキをケージに閉じ込めたからこそ描かれた、成長と離別……それを超えてなお続く真実の愛がどこに行くのか、大変気になる……が!
 次回はメェメェ羊エピです!
 自由すぎるぜわんぷりッ!
 ここまで来たら腹は決まった、青キュア姉妹参戦までどっしり付き合う準備はOK!
 次回も楽しみッ!

 ……ここら辺のお話をじっくり煮込むために、好感度120%で開始する『種族の違う姉妹』を主役に据えたのかなー、と思う回でもあった。
 出会って関係性構築して……つう手筋が、まゆ以外省略されているからこそ猫屋敷サーが、時間使えているんだろうし。
 そういう意味でも、やっぱり”プリキュア”を新たに描き直し作り直す気概が随所に見えるの、俺がわんぷり好きな理由の一つだ。
 やっぱりプリキュアには、常にアバンギャルドでいて欲しい。