イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

鬼滅の刃 刀鍛冶の里編:第5話『赫刀』感想

 血しぶき舞う闇夜の決戦、激闘を追う鬼滅刀鍛冶編第5話である。
 令和バトルアニメの最高峰らしい、力の入ったアクションがたっぷりと味わえ、大満足のエピソードだった。
 伝説の剣士の衣鉢を継ぐ赫刀覚醒のシーンがやはり見どころであろうけど、分身体との屋内追撃戦、無一郎の無駄の無い剣筋、恋柱の絢爛豪華な立ち回りと、各剣士の個性をかき分ける筆の多彩さを堪能できた。
 多局面同時進行バトルなので、色んな能力を持った超人と怪物がバチバチとぶつかりあって、それぞれの華が咲き乱れる豪奢な感じが、見ていてやはり楽しい。
 ここら辺のケレンと迫力、仕上がりの凄さに関しては全く手を抜かず、ファンの期待をぶち抜く映像で楽しませてくれる信頼感は、流石の一言である。

 

 色んなバトルが展開しているけども、メインはやはり無一郎 VS 玉壺、炭治郎 VS 半天狗となる。
 無表情にガキを激ツメしてるところに遭遇するという、最悪の第一印象から始まった霞柱であるけども、炭治郎との接触を経てだんだんと霧が晴れ、誰かのために体を張り剣を振るう、鬼殺しの本分を静かに燃やしつつある。
 記憶も人格も、何もかも真っ白に塗りつぶされてなお一本の刀として、鬼を殺し続ける未知に邁進している無一郎くんは、この里で思い出に火を入れられ、他人と自分の血で心を冷やされ、更に鍛え上げられた刃として自分を取り戻していく。
 ぬぼーっと冷たい態度の奥、悲痛な思い出を秘めて脈打つ霞色のヒロイズムが、徐々に徐々に熱を上げていく様子は見ていて楽しい。
 無一郎が無自覚に接近している剣士としての答えを、『鬼を倒し、人を守る』と炭治郎が既に体得しているの、力量と心意気がニ少年の間で交錯している感じがあって、かなり好きなんだよな。

 とはいえその権筋は冷たく冴えており、必要最低限の斬撃で倒す剣才がアクションによく滲む。
 無一郎本来の刀身を取り戻す鍛冶役の玉壺さんが、ペラペラペラペラ過剰に喋る分、その静謐な美意識はより際立つ。
 最悪オブジェでヘイトを煽り、嗜虐的な溺殺技で覚醒のチャンスを残すあたり、玉壺さんはよく出来た悪役である。
 眼が口になっているので視線での芝居がしにくいんだけども、ちっちゃいお手々が過剰に動いてうるさ可愛い芝居付で、うまーくクソな人格教えてくれる演技プラン、凄く良いと思います。
 玉壺さんマジ許されざる外道なんだけども、非常に奇妙な可愛げがあって、そこんところも抜かりなく書き続けているの、大変いい感じ。
 いやまぁ、マジでクズカスなんではように死んで欲しいけどな……。

 

 一方炭治郎は禰豆子をおぶいおぶわれ、分身体三体を相手取っての大立ち回り。
 屋内追撃戦の息苦しい感じを序盤強調しておいて、禰豆子の灼血によって赫刀を新たに鍛え上げ、炎の龍を現世に呼ぶ秘剣で一気に逆転するカタルシスを生み出していたのは、とても良い緩急だった。
 さんざん数に苦しめられてきたので、全員同時一気呵成の炎刀斬首は大変スカッとする見せ場で、そこを最高の映像表現でしっかりリキ入れて描いてくれたのは、欲しいモノが最高速で真ん中に来た感じがあった。
 血に刻まれた古い記憶と禰豆子の献身でもって、赤い刀を打つ。
 ”刀鍛冶の里編”らしい鍛造で主人公が覚醒を果たしたわけだが、ここで禰豆子が身を切ったサポーターになるのは柳田国男いうところの”妹の力”を感じ取ることが出来て、正当民俗伝奇としての”鬼滅の刃”らしい展開だったと思う。

 四鬼同時殺の難行を成し遂げ、玄弥とも合流して一段落……と思いきや、黒く染まった瞳は獣の色合い、死なずの少年剣士に秘められた過去とは! つう所で、次回に続いた。
 炭治郎が移動と斬撃を切れ目なく行う絶技で、三鬼を同時に取ったのに対し、玄弥は血みどろの相打ちバトルでようやく一鬼狩り取るばかりで、ここら辺天才と凡人の差が残酷だなと思う。
 それでもなお鬼狩りにしがみつく理由が玄弥にもあり、それは苦境の中で新たな力に目覚め、殺して守る生き様を剣に宿した主人公と同じものだ。
 あるいは霞みがかった記憶の中で、それでも何かに突き動かされ戦い続ける、無明の少年剣士とも。
 刀鍛冶の里編、正直ドラマ薄めだと思っていたけどもアニメで見直してみると、炭治郎・玄弥・無一郎の三少年、それぞれの生き様が交錯する血の鉄火場という視点は、思いの外分厚くアツい気がする。

 そこら辺の暑苦しさを飛び越えて、変幻自在のリボン刀で悪を立つ甘露寺蜜璃の軽やかさも、涼し気でいい。
 ド重たい因縁がデフォルトの鬼殺隊において、そのオリジンもモチベーションも戦闘スタイルも特異な蜜璃ちゃん。
 しましまニーソとそこから漏れる太ももの光明、UFO作画で暴れると破壊力と違和感すごいな……一人だけ萌えアニメ
 しっかしまぁ相当なイカレ女であると同時に、凄腕の剣士であり生き死にの重さを知っている守護者であるのも彼女の真実で、愛刀を迷わず投げ捨て両手で長を救い出す動きに、そこら辺の気概がよく滲んでいた。
 無一郎が毒針に貫かれても剣筋がブレないのと、恋柱が武器を手放して人命救助するの、一話でまとめてみると結構面白い対比だったな。
 軽やかに自由であること、生き死にの重力に囚われないこと。
 華やかなる異物の秘めたる剛力と過去を、アニメがどう書くかも楽しみである。

 

 というわけで見せ場満載、血を絵の具に描き切る修羅場錦絵でございました。
 やっぱアクションの仕上がりが異様に良いので、バトルが加熱してくると満足度がグンと跳ね上がる感じはある。
 この強烈なニトロを背に受けて、剣士たちが抱える思いの強さ、刃を鍛える思いの炎をしっかり書ききってほしいなと、思わず期待も膨らみます。
 次回も楽しみですね。