イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ひろがるスカイ!プリキュア:第14話『スカイランドへ!憧れのあの人との再会』感想

 新たな冒険の舞台は、不思議な空の国!
 新キャラ山盛りいい作画、第2クールの物語に向けてエンジン全開のひろプリ第14話である。
 前回大胆に戦闘なしの日常回だった反動か、ベリーベリーちゃんとの素手での個人戦戦闘、ランボーグ相手のプリキュア集団戦と、バトル描写に気合が入っていて見ごたえがあった。
 同時にスカイランドの風土、ソラちゃんが憧れてきたシャララ隊長の人となり、ライバルであり親友となり得るベリーベリーちゃんの思いと、人間ドラマとしても分厚い描写が満載。
 新しい物語が広がっていく期待感をたっぷり膨らんで、とても良い第2クール開幕となりました。

 

 つーわけでエルちゃんを無事親御さんのもとに送り届け、新しい生活が始まっていくわけだが……ご両親の元でまんまる笑顔しとるエルちゃんが見れて、大変に良かったよ。
 エルちゃんが履いてる靴を見て彼女を厚遇してくれた人たちに感謝したり、『テメーらも親御さんに心配されてる大事な子どもなんだから、戦いとかいいから家帰れ』といい出したり。
 国王夫妻がかなり人間出来てて優秀だと、細かいところの描写で教えてくれるのが、ひろプリらしいなぁと感じた。
 愛娘をさらわれたショックに溺れるでなし、超ロクでもねぇ悪の組織に国ごと狙われてる現状を、ちゃんと理解して備えようとしているのは、国王パパン偉いと思う。
 こんだけ備えても上から踏み倒す暴力が、本格始動してスカイランドがメチャクチャになるのだと思うと、『新展開をワクワク心待ち!』と大声で言えない感じよね……。

 んで、そんな国家の盾となる青の護衛隊ですが。
 斎賀声の颯爽女騎士だの、太眉泣き虫努力家少女だの、とんでもねぇタレントをたっぷり集めたイカす集団だった。
 シャララ隊長はただツラがいいだけでなく、12話分お話に付き合ってきて感じ取れたソラ・ハレワタールの危うさに、的確に導きをくれる人だったのがとても良かったです。
 あの子の即断主義は、ベリーベリー真実を知らされて『明日じゃ遅すぎます!』とソッコー謝罪に駆けていく、とびっきりの爽やかさの源泉でもあるのだけど。
 おんなじところから強い弱いを横においてるはずなのに、相手の事情を斟酌せず一方的に断罪してしまう”強さ”が出ている。
 なので果断な行動主義に思慮を足し、ソラちゃんの正義がより善く自分と人を助けれるよう導いてくれたのは、大変良かった。

 

 この土台に奔馬の如き瑞々しき思いを載せ、最高のエピソードヒロインぶっかましてきたのがベリーベリーちゃん。
 稀代の武術家、ソラ・ハレワタール無手無変身の強さをもう一度教える組手の相手を務めるだけでなく、彼女なりの正しさと強さ、それと裏腹の迷いと弱さをしっかり描くことで、ソラちゃんが帰郷早々人間として大きな一歩を踏み出せました。
 俺はソラちゃんが変身しなくても異様に強いの、キャラ立てとして凄く好きなんで、ビシバシいい作画でステゴロ見せてくれて良かったですね。
 雷撃術で故障のハンディを乗り越えたテクニカルなスタイルと、天に恵まれた生粋の”武”で制圧しにかかるソラちゃんのパワー主義がぶつかりあい、手合わせとして見ごたえがあった。

 最初『なんだコイツ……』だったベリーベリーちゃんの涙を見て、思いを通わせていく視聴者の心と、勝ったからこそ言える傲慢をたしなめられて、膝を曲げて強敵(とも)と同じ視線を共有していくソラちゃんの歩みは、上手く重なっていた。
 こういう手触りで新しい環境に飛び込んでいく主人公と物語の足取りを描けるのは、新しいことが始まるワクワク感をスカイランドの大地に上手く落ち着けてくれていて、とても良かった。
 ここに馴染みのあるプリキュアふたり……特に虹ヶ丘ましろさんが不思議な存在感で寄り添って、『ナメてんじゃねぇぞ異世界人ども……ソラ・ハレワタールの特等席は、いつだってアタシの居場所だ!』と叫ぶ迫力が、そこかしこにあった。
 いやまぁ、七割ましろちゃんがそういう存在であって欲しいというオレの願いが生み出す虚像なんだけども、一部界隈に激震巻き起こす『ウチのソラちゃん』発言とか、戦い終わった後の『そっとしておいた方がいいよ』とか、持ち前の推進力で人生驀進し続けるソラちゃんの舵取り役として、新たな舞台でも唯一無二のコンビ感が香る。
 あの夕日の中の和解と抱擁、自分の信じる正義に突っ走ることしか知らなかったソラちゃんが、隊長の教えを受けて『待つ強さ』を学んだ証としても良かったし、頑張って張り詰めて戦士で居続けようとしたベリーベリーちゃんが、友達を名前で呼ぶことを自分に許す場面としても最高だった。
 若い二人の衝突と融和を描くことで、青春の受け皿としての”青の護衛隊”がそうとう良いもんだと初手から感じられたの、大変良かったですね。

 

 んで、カバトンに続く二人目の敵役なんだが……まぁいけすかねぇロクでなしってことだけはしっかり解ったな!
 ソラちゃんが他人の事情を知らない状態から、知ろうとする思慮を学び取る話の敵手として、誰かの弱さを勝手にわかったつもりになって、寄り添うのではなく悪用して暴力装置に加工してくる敵役が出るの、いい対比だと思う。
 カバトンは『価値ある強さ/無価値な弱さ』の二分法で世界と自分を縛り付けるタイプだったけども、バッタモンダーは『弱さを飲み込み利用する悪』っていう、一体化のイヤラシさが漂っているの、面白い二人目だ。

 ランボーグ製造の苗床にされたベリベリーちゃんの苦しさだって、自分の弱さに向き合った結果生まれた矜持とか強さとか、簡単に分かつことが出来ないデカい塊が胸の中にあるからこそ生まれるもんで。
 それを『利用されるべき弱さ/そこに漬け込む強い俺』っていう、思慮のない二分法で切り分けちゃってるのは、まぁ大変によろしくねぇな、と思います。
 強さとか弱さとか、自分とか他人とか世界とか、その在り方を常に考え探り続けなければいけないモノを、特定の価値観で固めて殺すのが、ひろプリの悪なんだろうな。
 ”ひろがる”プリキュアなんだから、その敵が固定観念の押しつけで世界を”狭く”するのは納得だ。

 同時に正義のヒーロー様でも知らず、他人を自分の狭い視野で捕らえる独善からは逃れられないと今回書かれて、色んなモノを型にはめて世界を狭める誘惑は、悪の専売特許ではないと分かった。
 たとえド派手な破壊を引き起こさなくても、ベリベリーちゃんとソラちゃんの間に起きた思い込みの衝突は誰にも起こりうるし、そこで立ち止まって歩み寄るには何が必要なのか、ひろプリは今後も掘っていくのだろう。
 そういう慎重な手付きは、堂々正義の大看板を掲げる話にこそ大事だなぁと思わされるエピソードでした。
 次回もとっても楽しみです。