イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

スキップとローファー:第6話『シトシト チカチカ』感想

 善き感化力で青春を無双する少女の物語、第6話は梅雨空と青い晴れ間のエピソード。
 折り返しの第六話ということもあってか、主人公の恋心が華やかに表舞台に躍り出てくる超絶胸キュン勝負回……なんだけども、そこに至るまでの梅雨空の描き方がとにかく繊細で、このアニメらしい強さを感じた。
 絶縁に至るほど大きな衝突じゃないけども、自我が育った人間が向き合っているなら当然生まれるもつれ合いがあって、固まりかけてる自分らしさが擦れあって、目の前の特別な相手だからこその執着があって、確かに変わっていく何かがある。
 爽やかイケメンなだけじゃない志摩くんの難しい部分や、ただただイノセントなだけでは終わらない美津未ちゃんの間違いも細やかに描かれて、お話の基本線が強く視聴者の心をつかんだタイミングだからこそ、しっかり刺さる応用編という感じでした。

 高校一年生ともなれば既に見つけた世界の真実もたくさんあり、しかしそれは数多の答えの一つでしかなく、同時に何よりも大事な自分だけの答えだ。
 それを不変の支えとしてしがみつき”私らしさ”に固定していくのか、尊敬し愛することが出来る素敵な人とのふれあいの中で、変わっていく勇気に踏み出すのか。
 『私はこういう人間で、世界はこういう形なんだ』と硬く思い込むことで、傷つきやすさを覆ってくれる殻が早々簡単には壊れず、それにしがみつくことでギリギリ守れる自分があること。
 震えながらもその殻から抜け出し、あるいは思わず脱ぎ捨てて向き合いたい”あなた”の存在感が、どれだけ特別か。
 しとしと降り注ぐ雨の中、思春期の群像を非常に丁寧に描いてくれて、大変良かったです。

 

 

 

画像は”スキップとローファー”第6話から引用

 というわけで序盤はあくまでコミカルに、親友から届いた恋の知らせ、高校初の期末試験に弾む梅雨空を描く。
 まだ曇り空は滴りを落とさず、明るい学園生活は順風満帆といった風情だが、思いの外自由気ままな志摩くんの生き方に、美津未ちゃんはビビり倒す。
 だんだんと湿り気が強くなっていって、後に二人の関係に降り注ぐ雨音を予感させるが、あくまで作品を彩るのは陽気で前向きで上質なコメディだ。
 この爽やかな笑いが、青年たちが本気で生きてるからこそ生まれる衝突を細やかに彫り込んでいく刃先の下準備をし、また落差を活かしてその重たさを伝える手助けにもなっているのは、見事なバランスだと思う。
 志摩くんが画面に映る時以外は、4月以来一個ずつ積み上げてきた最高友情がみっちり世界を満たしていて、『仲良し最高!』という気持ちで見守れるのもありがたいわね……。

 今回のエピソードは冒頭と結末が繋がる構造になってて、ふみちゃんに電話をして、恋の話をするのは同じだけども、その主体が最初と最後で逆しまになっている。
 小学生みたいな率直さこそが武器で、しかし小学生ではいられない成熟を内側に抱え、色々面倒なチカチカにも向き合う美津未ちゃん。
 ひと足お先に甘酸っぱい思いに飛び込んだふみちゃんを、気楽に優しく『そういうこともあるもんねぇ……』と他人事だった彼女は今回、余計なもの色々くっつけてでも近くにいたい青年と過ごす中で、青い温度と出会う。
 自分でも良くわからないもの、自分とは生き方が違う人と触れ合うことで生まれる火花は、とても幸せに子ども達を変えていける。
 美津未ちゃん自身が色んな人に、無自覚なまま生み出している変化は彼女を取りこぼさず、とてもチャーミングな当惑と発熱に巻き込んで、成長の当事者にしていく。
 そこにどんな痛みとときめきが宿るのか、お話は美しい曇天の中丁寧に切り取る。

 

 

 

画像は”スキップとローファー”第6話から引用

 二日目、蒼白に霞む志摩くんのイメージあたりから画面全体のトーンが落ち着きだして、コミカルなポップさが鳴りを潜めていく。
 それは美津未ちゃんが学校に来ない志摩くんを、そうして会えなくなっていくかもしれない可能性に、怯え震える足取りと重なっている。
 不器用な執着、自分でも制御できない感情にどういうラベルを貼るべきか、美津未ちゃんはまだまだ解っていないわけだが、それが恋であれ友情であれ志摩くんはとても大事で特別な人で、離れていく想像すらしたくない。
 いつもの調子でにへらと笑って、自分が心乱されたことなど知りもしないで、同じだけの特別さを持っているのか判別がつかない、私の特別。
 それが目の前に立った時、美津未ちゃんは感情を頬に宿らせた後、ぷいと顔を背ける。
 か~わ~い~い~~~(思わず漏れ出す鳴き声)

 美津未ちゃんと志摩くん初の摩擦を描く今回、どっしりと時間を取ってそこだけにフォーカスした構成の中で、裏腹な心はとても丁寧に切り取られる。
 体温が跳ねるほどに再会は嬉しいはずなのに、真っ直ぐ顔を見れない。
 自分の気持ちにこだわるより相手のことを考えるべきなのに、ちょっと意地悪をしてしまう。
 人間の心は矛盾だらけで、態度はそれを反射して複雑で、その難しさをゆっくりと積み上げ、繊細な変化を余すところなく切り取っていく筆が、今回大変優秀である。
 この多層的な表現が、アニメに切り取られているキャラクターが複雑怪奇な心を抱え青春を駆け抜ける”人間”なのだと、見ている側に伝える最高の武器になる。
 小気味いいテンポで多くのキャラクター、多くの悩みと幸せを描いてきた作品のBPMが、ここでスーッとオチてくる緩急と特別感も、大変に良い。

 

 

 

画像は”スキップとローファー”第6話から引用

 二人きりの教室は曇り空、暗がりと眩しさが複雑に混じり合っていて、シンプルな色合いには収まってくれない。
 ずっとふたりでいたいからこそ、常識だの正論だのいらない借り物を振りかざす形で殴りつけてくる一言に、志摩くんは一瞬動きを止めて、微笑みに毒を込めて刺し返す。
 ここのワンクッションが丁寧に描かれることで、彼が内なる獣に手綱を付けて、有る事無い事ほざかれる人当たりの良さを頑張って演じている現状がよく伝わってくる。
 そういう構えを取らずとも、自分に心地いい風を届けてくれる存在だと思っていたから美津未ちゃんの隣を選んだのに、裏切られてしまった悲しさもあるだろう。
 その制御不能は、好きだからこそ生まれる棘だ。

 遠景と近景のバランスも最高に良く、青春によくあるすれ違いと衝突こそが特別なのだと語りかける、美術の冴えが場面を支える。
 スタッフロールよく見たら、基本美術ボードに池信孝がいて、『そらー背景強いわな……』と思った。
 窓枠の縦線が冷たい断絶を教える横の構図から、自分の口から出た爆弾の威力にふと気づく一瞬に、カメラが寄り添う。
 顔と人当たりがいい『便利なイケメン』だからこそ、色々噂され踏み込ませない、志摩聡介の柔らかな内面が、美津未ちゃんの言葉と態度で切開されて、我々の前にさらけ出されていく。
 そこに露悪の臭気はなくて、絵に書いたような美青年もまた等身大の少年であり、ここに至るまでに色々な体験と屈折を経て、生き方を選んでいるという事実が見える。

 それは美津未ちゃんにとっても同じで、周囲の人達に幸せな奇跡を手渡し喜ばしい変化を引き起こしてきた彼女が、けして無謬の天使ではない事実がしっかり、去り際の赤い耳に宿っている。
 傷つけたことに傷つく繊細さを、早口で取り繕って足早に立ち去らなければ、何かに押しつぶされそうな脆い心。
 それは自分の心から這い出して、制御不能なまま暴れだした怪物であり、そういうモノも当然、岩倉美津未の中には住んでいる。
 人間だから、当然だ。
 その当然がどれだけ劇的なものを生むのか、カメラワークと背景の合わさった最高の表現が、雨の教室を外側から写しながら見事に教える。

 ほんっとーに、この雨の教室のシーケンスは絶品だった。
 過剰なシリアスさで黒く画面を塗りつぶして、今まで視聴者を楽しませ共感させてきた作品のポップさ、前向きさを裏切る調子ではない、とても心地よい暗がりを作りきっている所が、本当に凄い。
 この細やかな暗がりもまた、”スキップとローファー”なのだと納得できる手触りでまとめるの、作品のパワーが凄いからこそ大変だと思うんだけど、精妙なバランスでやりきってるからな……。

 

 

 

画像は”スキップとローファー”第6話から引用

 エピソードの最深部をくぐり抜けて、『こっから上がり調子ですよ!』と教えるようなコミカルな表現が、やはり可愛らしくて嬉しい。
 お互いの胸から飛び出した怪物が、どれだけ相手を傷つけたのか思い悩みつつ、二人の夜はそれぞれの居場所で転がっていく。
 志摩聡介という人物の奥行きを掘り下げていく今回、子役時代の友達に全部を晒せる関係性、美津未ちゃんが心配し束縛する私生活の内側も、しっかりカメラに切り取られていく。
 福永くんは実は相当面倒くさい爽やかイケメンの内側をよく知った上で、彼がより良く生きられるよう心を配ってくれる優しい人で、子役時代の経験と家庭事情から捻くれている親友に、確かに刻まれている変化を本人よりもよく見据える。
 この『学外の友人のありがたさ』は冒頭、ふみちゃんとの通話で強調されている所でもあって、こういう形で主人公とヒロインが呼応してる姿が見れるのも、エピソードの特別感を強めてくれるね。

 自分の思いをさらけ出すことにも、思いを叩きつけられることにも疲れている、擦れて大人びた志摩くん。
 美津未ちゃんには見せず、福永くんには預ける素顔はしかし、それが志摩聡介の全部というわけではない。
 自分の全部だと思っているものが思わず変わっていけるから、より面白く幸せな自分が出会いの先に生まれるから、生きることは結構面白いのだという事実に、それを生み出してくれる特別な存在に、志摩くんは気づいていない。
 気づかぬまま変化は彼を取り巻いていて、福永くんはそれを喜ばしいと正しく、優しく受け止める。
 志摩くんかなーり難しい人だと今回分かったので、福永くんがいてくれるありがたみも凄いな……(”君は放課後インソムニア”の受川くんもそうだけど、やべーガキを間近で受け止めてくれる靭やかなタフガイがマジで好き)

 

 

 

画像は”スキップとローファー”第6話から引用

 前回運命書き換えたミカちゃんと、正々堂々牽制してくる良い距離感育んでる描写も交えつつ、美津未ちゃんは自分が今向き合うべきものに豁然と目を開いて、自分の足で立ち上がる。
 無自覚に他人を変えている主人公が、どういう人間関係を手に入れているのか、エピソードが終わった”後”の変化を丁寧に、自然に積み上げてくれる見ごたえもまたこの作品の、大きな魅力だろう。
 美津未ちゃんが知らず生み出した変化が、その当事者と美津未ちゃんとの何気ない日常にしっかり反射して、めっちゃ仲良しハッピーな場面が沢山あって、『ずっと……幸せでいてね……』って気持ちにさせてもらえるの、マジでありがたい。
 結月ちゃんやまこっちゃんとの構えねぇ最高友情も、美津未ちゃんが意を決して飛び込んだ環境で小さな勇気を振り絞り、そのままじゃ離れていく縁をグイッと手繰り寄せたから、結び付けられたモノで。
 そういうモンが、美津未ちゃん自身が迷った時体を休め、新たに踏み出す波止場担ってもくれるわけよ。

 つうわけで青春ダッシュに、全力で飛び出す主人公。
 ここで『征く』を選べる所が”岩倉美津未”って話なんだけども、臆病さ故に普通人が選んでしまいがちな『往かない』という選択肢が美津未ちゃんの中にあったことを、その一歩を強調する演出は静かに語っている。
 なんとなく上手くいくだろう。
 思いを素直に告げずとも、自分の本当からズレた形で傷つけた言葉を回収しなくても、一緒にいられるだろう。
 そういう、僕らの周りにも凄くよくある選択肢は無敵の主人公の前にもあって、そこにすがりかけて、なお選ばず進み出すからこそ、彼女はこの幸せな物語の中心なのだ。
 ここで目を見開いて、傷つけてしまった自分も傷ついているだろう志摩くんも、自分の望むものじゃないから作り変えたいのだと、自分の中の真実に踏み出せるのは凄い。
 等身大でちっぽけで、だからこそなかなか我々が選べない選択肢に堂々踏み出してくれる主役への、頼りがいと憧れが分厚いぜ……。
 決断は迷いを描いてこそその価値を増やすので、しとしと降り注ぐ梅雨の足踏みを丁寧に追いかけてくれたことが、この一瞬の火力を跳ね上げてもいく。

 

 

画像は”スキップとローファー”第6話から引用

 美津未ちゃんからの歩み寄りを、今まで通りの軽やかさで身をかわして、当たり障りなく終わらせようとする志摩くん。
 この”逃げ”を見せられて揺らぐ決意を、拳を固めて掴み直す美津未ちゃんと、その熱量を間近に浴びて怯む志摩くんも、大変細やかに描かれる。
 ここら辺のアクションとリアクションの連鎖、人間の心と行いがどう触れ合うかの活写は、思春期を扱う物語として凄い強い武器だと思う。
 こういう複雑な震えが反復し、共鳴する時間を彼らは生きていて、しかしその柔らかな質感をそのままむき出しにしていては、生きていられない難しさも、そこにはあるのだ。
 それでも美津未ちゃんは走りだして、向き合って、率直に伝えることを選ぶのだ。
 マジ偉い。
 歴史の教科書に載せよう。
 山川日本史用語集でも取り上げよう。

 美津未ちゃんはクールな無関心で他人を遠ざけ、自分を守ろうとしている志摩くんより少し”高い”場所にいる。
 でもそれは何もしないまま主役に与えられた特権ではなく、ちっぽけで普遍的な怯えを噛み砕いてなお、そういう率直で幼く優しい場所に自分を置こうとしているから、確保できる居場所だ。
 そこから投げ渡された思いがあまりに真っ直ぐで誠実で、自分が出会ったことのない引力に満ちているから、志摩くんは思わず手を伸ばす。
 離れたくなから踏み出すのは、二人共同じなのだ。

 

 

画像は”スキップとローファー”第6話から引用

 恋の訪れとともに次第に晴れ渡っていく空の描き方もいいが、自分の今までのスタイルを裏切って伸びたてへの当惑、それを追いかけるように内面と個人史を差し出していく志摩くんの表情が、とにかく良い場面だ。
 福永くんの前で晒していた”自然体”と、美津未ちゃんの手を取り自分の複雑さを語る志摩くんは大きく異なっていて、それに一番驚いているのは志摩くん本人だ。
 そう生きて行くのが一番賢いのだと思っていた、他人に自分を語り自分を変えてもらうような摩擦熱の高い生き方に、知らず手を伸ばしてしまう自分。
 手を伸ばさせる相手。
 それらと向き合う時、青年は呆然と立ちすくんだ後に覚悟を飲み込んで、そろそろと己を語るのだ。
 ここの美しいナイーブさ、大変良い。

 美津未ちゃんが小学生レベルの真っ直ぐさに立ち戻ることで、より自分らしく好ましく言いたいことを伝えられたのに対し、志摩くんは硬く作り上げていた今までの自分らしさをおのず裏切ることで、今までよりもっと良い自分に近づけた。
 晴れ渡る空のもとに自分を引っ張り出す手段はそれぞれ別々で、痛みも震えもない安全距離にお互いを遠ざけるよりも、その違いと痛みを認めた上で受け止め、手を繋ぐ方が嬉しい。
 そう思ったから少女は意を決して駆け出し、少年の体は彼を裏切って手を伸ばした。
 この意志と不随意の対照が、色んな人が眩しく生きている作品内事実を強く照らしていて、とても好きだ。

 美津未ちゃんの小学生独白に志摩くんがツボるのは、硬く張り詰めていた曇天の距離感がようやくほぐれた安心感と、知らずであった新しい自分が思いの外、悪いやつじゃなかったからだと思う。
 そうやって、なんか面白いものと出会わせ続けてくれる美津未ちゃんが、大事なんだと思える自分を取り戻せたからだと思う。
 今回起きた衝突とすれ違いは、仲良しな二人を根っこから揺るがすわけじゃない。
 人間が二人いれば当たり前な、『まぁそういうこともあるよね』で深く掘り下げず、傷つかず、背中を向けて自分を守ってしまうような、普通の事件。
 でもそこにこそ、決定的に引き裂かれてしまう契機が確かにあって、『もし全部終わっちゃったらどうしよう……』という怯えや、『このままで良いんだ』という怠惰を乗り越えて、今ここで伝えるべき思いがある。
 そんな旬の短い生きた真実が目の前に跳ねた瞬間、恐れず手を伸ばし踏み出すことが出来る人たちが、このお話の真中に立っている。
 そう分かったのが、僕は凄く嬉しい。

 

 

画像は”スキップとローファー”第6話から引用

 フィナーレはあまりに美しい景色と共に、恋の予感が跳ねていく。
 『そらぁ……好きになっちゃうよ……』と無条件降伏する、志摩くんの笑顔。
 水たまりから跳ねる感情、あまりにも美しい雨上がり。
 全てが特別な物語が幕を下ろす説得力に満ちて、質でぶん殴られてる感がハンパねぇ。
 さんざん『そういうのよくないと思う!』と、正しさのハンマーで志摩くん殴ることしか出来なかった美津未ちゃんを書いておいて、胸の中湧き上がる青い温度を自覚したこのラストで、『走りスマホ』ぶっこんでくるのマジ天才だと思う。
 そういう”らしさ”をぶち壊すだけのパワーが、志摩聡介のほほえみにはあるっ!!

 何しろアタシらもニタニタ待ち望んでいたので、美津未ちゃんの恋がロケットスタートぶっかますこのエンディング、大変印象的だ。
 そのインパクトに塗り固められて、『ああ、爽やかアオハル最高……』と思ってしまうエピソードなんだけども、ここに至るまで描いてきたものは結構複雑で重たい。
 その質感をとても丁寧に削り出しつつ、作品が基調としている前向きで明るく、チャーミングでポップな雰囲気に印象を明け渡すようにフィナーレが作れているのが、一番凄いところだと思う。
 いい意味で後を引かないというか、重たく描かれたものは顕在意識ではなく、識閾下にスルッと滑り込んで後々仕事をするというか。

 

 美津未ちゃんと志摩くんの複雑な”人間”を、曇天の鏡で照らし描く今回は、彼らがスカっと気持ちいい影響力無双の道具ではなく、自分たちなりの難しさと強さを抱えて思春期を進んでいる存在なのだと、良く教えてくれる。
 感情や生き方が複雑に矛盾して、それでも思わず身を乗り出す衝動が確かにあって、何かを選び何かに駆け出していく、とてもアツい時間。
 それを描き切るためには、結構暗い部分にも優しくメスを入れていく覚悟があるし、それが主役たちを置き去りにはしないのだと教えてくれる回で、とても良かったです。

 なにより俺のラブリー美津未ちゃんが、ほのかに甘やかな恋心に心臓バクバク、全力疾走を開始(はじ)めちまったのが……たまらねぇよ。
 小学生の率直さで志摩くんの屈折と、嫌な正しさに縛られかけた自分を救った女の子が、同時に初恋に身悶えできる喜ばしき成長とがっぷり四つ相撲、挑む時代に立っている。
 あまりに喜ばしい……天使たちの歌が聞こえる……(アフターヌーン産の神秘体験に、思わず亡我するオッサン)

 こーんなに可愛く尊い青少年が、恋に学業に青春に頑張る物語がまだまだ続く。
 ありがたい話よ本当に。
 次回も楽しみ!