イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

【推しの子】:第5話『【恋愛リアリティショー】』感想

 闇深転生復讐鬼の芸能界成り上がりストーリー、今回はダークネス控えめ笑いマシマシ!
 恋愛リアリティショー編開始と新生B小町始動の、推しの子第5話である。
 かなちゃんとルビーちゃんが凸凹噛み合ったいいコンビ感をぶん回し、アイドルユニットの未来はなんか明るそう……な一方、アクアの新しい仕事は一体どうなることやら。
 嘘と真が混ざりあって生まれるマーブル模様に汗と笑いを絞り落として、さー新展開に向けて”加速”だッ!

 

 

 

画像は”【推しの子】”第5話から引用

 つーわけでヒネたふりして純情可憐、チョロい自称リアリストを妹の夢のために一本釣りだッ!
 『アクアくんさぁ……ホント一回、他人を目的の道具として合理でしか見ない性分見直したほうが良いよ……』とつくづく思うが、ここら辺は転生とアイ殺しのダブルパンチで歪んだ結果なのでマジ何とも言えねぇ。
 医者として他者に誠実に向き合い命を大事にしてきた記憶含めて、自分自身も人殺しの道具に使い潰す自虐主義者が一番ないがしろにしているの、間違いなく自分自身なので、青春を真っ直ぐ謳歌する光属性ガールズ相手に遠い距離取っちゃうのも、まぁしょうがねぇ。
 よくねーよ……オメーが自分踏みつけにすると、オメーを大事に思ってる人の思いも踏みにじられんだよなぁ……。
 ここら辺のやけっぱち自爆主義、転生で精神経験値稼いでいる割にめっちゃ幼くて、つくづく歪だと思う。

 こういう厄介な男を好きになっちゃったかなちゃんは、冷静にアイドル参戦のリスクを噛み締めつつ情にほだされ愛に流され、地獄行きの契約書にハンコをONだッ!
 ほんとアニメは色んな表情の有馬かなを、めっちゃ可愛く書くことに注力してくれていて、大変ありがたい。
 主人公が秘密抱えすぎて屈折しまくりボーイで、その妹は底抜けに天然である眩しさが強みで、程よく屈折し程よく純情なかなちゃんは、まさに愛嬌のゴルディロックス距離、大変ちょうどいい造形しておる。
 子役という過剰に成熟していることを求められる仕事で成功し、真実大人らしい配慮を身につけるのには失敗して落ちぶれ、それでも芝居に若き情熱を燃やして、身につけた気遣いを武器になんとか、芸能界にしがみついている元エリート。
 経歴だけでも美味しいのに、蓋開けてみりゃこんな純情ガールが口だけツンツンしつつも圧倒的なチョロ蔵っぷり……そらー人気出るわな!

 今回は芸能サスペンスとしての味わい控えめ、かなちゃん加入記念っつーことで小気味好い掛け合いとコメディ色強めの回。
 サクサクいい塩梅の食感で、ボケとツッコミが高速回転する作品独自の笑いづくりがいい感じに跳ねて、ポップで気持ちいい風情だ。
 かなちゃんが抱える”健全な陰り”みたいのが、ツッコミ役としてコメディシーンでもしっかり機能してて、常識で考えればブレーキかけたり文句行ったりする所に、ツッコミながら前のめりなバランス感覚がある。
 天然ノーブレーキでガンガン突っ込むルビー、そういう屈託の無さとは無縁のアクアの間に立って、明るく楽しい時間を作ってくれるかなちゃんは、とてもありがたい存在だ。

 

 

 

 

画像は”【推しの子】”第5話から引用

 そんな逸材に惚れられている転生者の新たな仕事場は、キラキラ眩しい青春恋愛リアリティーショー。
 ド陰気で計算高い素顔を後ろに隠し、そもそもアイの死に繋がる情報への足掛けでしかない、気の向かない仕事。
 そらープライベートを知る身内からはドン引きであるが、座組の中求められる仕事を計算して、舞台裏目立ちにくい影の中に立って舞台にしがみつくスタイルは、凡人なりの闘争法でもある。
 嘘つきの天才だった母が、センスと計算の合わせ技で世界に自分を理解らせたやり口に似ているが、言語化出来ない領域で他人の心をかっさらう天性ってのがアクアにはない……というか、ここら辺の才能はルビーちゃんに持っていかれたので、ニーズがある役柄を演じることで立場を作るわけだな。
 この生存戦略が、薄暗い自虐主義離人傾向をさらに加速させて、どんどん色んなモノを蔑ろにさせてもいるけど……今更止まれないわな。

 ”リアリティ”ショーとあるように、アクアがこれから挑む仕事で求められるのはありのままの現実ではなく、視聴者のニーズに先回りした生っぽい幻想だ。
 そこに台本はなく演出はあって、演者は自分の心から湧き上がる無加工の感情を、モニタ越し流通可能なホントっぽい嘘へと加工する必要がある。
 ここら辺の明暗が自称清純派・鷲見ゆきちゃんの役者ぶりと絡み合って、『今回のお仕事は、どんな嘘が求められているのか』『どう嘘を作るのか』という、職場体験エンタメとして良い手際でもあった。
 そういう”っぽさ”を提示することに長けているのは、芸能界のどす黒い”真実”ってのをフィクションに加工して適切に摂取させるこのお話の強みで、第二の”仕事”としてリアリティーショー選んだのは、面白いチョイスよね。

 アクアが身を置いている暗い場所には復讐と秘密が詰め込まれているが、そこは彼の専売特許ではなく、本当の嘘を作る仕事に係わるすべての人が、足を突っ込む影だ。
 同時にゆきちゃんが恋を求める気持ちも、この仕事に突破口を求めてる野心も嘘ではなくて、そういうホントだけを素直に表に出しては、ショーは成り立たない。
 この危ういバランスと生臭さを、爽やかな風でごまかしてパッケージしてある新たな仕事……どこに転がっていくか、いい具合に楽しみだ。

 

 

 

画像は”【推しの子】”第5話から引用

 一方その頃妹たちは、ひよっこアイドル最初の一歩をヤバい覆面マッチョと共に進みだしていたッ!
 いやー……やっぱぴえヨンさん火力あるなぁ……1億稼いでるし。
 このイカれた面相で芸事に関しての姿勢は真摯だし、二人がどんだけシリアスかしっかり見定めて試練を出してくれるし、笑いは取りつつ新生B小町初仕事の相手として、しっかり背筋が伸びてる所が良いよね。
 ぴえヨン体操の尺をしーっっかり長く、見てて『なげーよッ!』と突っ込むくらい取ったのが、画面と共犯する良い笑いになってて好きだな。

 言葉に棘はありつつも、ルビーちゃんとかなちゃんはすっかり打ち解けた様子で、頑是無くぴえヨンさんの言う事聞く姿が可愛い。
 クソ兄貴がめっちゃ歪んでる”陰”だからな……女の子チームは”陽”担当よそら。
 アイの面影を残すルビーの、計算抜きでまっすぐ突き進んだら愛されてしまう才能。
 それはかなちゃんにとって羨むべきもので、しかし妬み嫉みはない。
 一個下の手がかかる”妹”がどんだけ頑張ってるか、ちゃんと見据えて体を支え、めちゃくちゃ面倒見る姿に、更に好感度アップだ!
 アクアが他人を良く見た上で利用することばっか考えているのに対し、かなちゃんは他人の良い所を真っ直ぐ見据え、それを支えながら自分の糧にしようと頑張るタイプなので、同じ観察力でも真逆の使われ方よね……。

 同時に暗い影の中、自分を置き去りに加熱する青春の思い舞台を睨みつけてるだけに思えるアクアにも、彼だけの”今”ってのがある。
 どんだけ嘘つきで血まみれの自分にしがみつこうとしても、殺しきれない心が勝手に弾んで、転生者第二の生を引きずり回していく。
 妹はアイドル活動、兄貴は恋愛リアリティーショー。
 それぞれの現場で、嘘と本当の狭間で、加工され捏造されそれでも伝わる”何か”を確かに積み上げながら、星の子たちの物語は加速していく。
 次回も楽しみです。