宮女1-Cの横浜遠足を舞台に、普通科高校生としての桐谷遥最後の日常を描くイベスト。
遥推しの限界オタクが死の間際に見る幻影のようでもあり、制作陣から遥への詫び状のようでもあり、なかなか独特の味わいがあって面白かった。
モモジャンでどん底からのアイドル成り上がり物語の主役、極めて優秀なビジネスパーソンとしての遥を強く書いた分、そこから離れた桐谷遥がどんな少女だったのか、なかなか描けなかった。
進級を前に、そこら辺を最後に描くお話だったと言えるか。
一つの幕引きを前に、大急ぎで送るべきだったギフトを包装してギリギリ間に合わせた感じがあった。
今後超☆アイドル生命体・桐谷遥が単位科に移り、モモジャンがメジャー戦線に躍り出てくると、学生としての四人はなかなか描きにくくなってくると思う。
遥がこれを最後の学生生活だと噛み締めながら横浜を歩いているのは、そういう変化への先触れのようにも感じて、9月で色んなことが動くんだと再度確認した。
”交響する街の片隅で”で、みのりが1-Aの友達相手にやっていた覚悟づくりの遥版というか。
そういうある種のアリバイ作りにしては(あるいは、だからこそか?)、起こっていることが異様に眩しく、こういう時間がアイドルやってない桐谷遥には結構あって、基本アイドル・桐谷遥の話であるプロセカでは、なかなか書けなかったのかもな、などとも思った。
このかけがえなさとモモジャンの未来を天秤にかけて、後者を選んで遥は来年から、自分の立ち位置を変える。
それは結構大きな変化で、どれだけ何もかもが大丈夫なのだと魔法をかけて巣立っても、色んなものが変わっていくだろう。
それでも、なお大丈夫なのだと呟いて、実際大丈夫にさせながら前に進んでいく遥はとても大人びて見える。
そんな彼女に”学生らしい”日々を贈れる最後のタイミング、すんごい濃いめのキャッキャが出てきて驚き、また嬉しかった。
本命の濃さを受けて、一歌と草薙さんまでキャッキャしてたからな……。
そして一般層にどんだけ”桐谷遥”が刺さっているか、ユニットの外側から反響を書くエピソードだったとも思う。
モモジャンにカメラ据えると、基本熱烈なファンが写り込んできて、あんま横幅広いリアクションを捕まえられないかんね。
ASURAN時代のレガシーもあって、知名度はインディーズアイドルを遥かに超えてる感じだが、今後メジャーの荒波乗り越える中で、更にスーパーアイドルになっていくのか。
未来の活躍をより大きく捕らえるための定点観測地としても、”普通の高校生”桐谷遥最後のスケッチとしても、なかなか面白いイベストでした。