イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Dr.STONE NEW WORLD:第8話『切り札は科学の船に』感想

 美しき刺客アマリリスを味方に付け、たった五人の叛逆開始!
 宝島の強敵も顔を見せ始め、丁々発止の知恵比べがバリバリそそるドクストアニメ三期、第8話である。
 手勢も情報も切り札も大幅不利を背負いつつ、窮地に光るそれぞれの強みあり、思わぬ援軍あり、超悪そうな敵さんありと、宝島編本格始動の手応えを感じる回だった。
 ピンチという砥石でキャラを磨くことで、ググンと魅力と個性が引っ張り出されている感じもあり、これは一網打尽の先制石化で舞台に上がる人数、大きく絞った利点だなと感じた。
 ワイワイ楽しいのもいいけど、その分お話の焦点はボヤケていくからね。
 復活の目は残しつつ喋らず動かずに出来る、石化ってバステは作劇上、めっちゃ優秀だな。

 

 つーわけでアマリリスの色仕掛けを跳ね除けつつ、圧政に裏口から不意打ちかけたいその心意気に利害を混ぜて、手早く同盟が組まれていく。
 科学技術を共同体全員に公開・共有している千空たちが作り上げたのが鋼鉄と木材を組み合わせた大型船で、”妖術”を支配と暴虐の道具に専有している宝島が葦舟使っているの、一般的な科学技術と社会体制の差が見えて好きな部分だ。
 ストーンワールド現役世代であり、考え間違い学んでいくクロムが五智将の一人でいられるのは、公平に知識にアクセスし、その成果を平等に社会の成員みなで共有する、科学王国の科学倫理ゆえだ。
 問答無用の石化妖術を盾に、脱出や反逆を許さず統治されている宝島には、ヤギもトマトもいない。
 千空たちが公平善良であると信じて、ストーンワールドを生き延び社会をより善くしていくための武器だった科学は、ここでは悪しき政治の道具に貶められているのだ。
 アマリリスとの共同戦線には、そんな体制への義憤も混じっていると思うのだが、千空ちゃんはあくまでクールに、利害に基づく同盟関係だと言い切る。
 そのベトつかない立ち回り、やっぱりLOVEだぜ……。

 司帝国との戦いもそうだったけど、千空の戦いにおいて情報はそのまま武器になる。
 文明社会を壊滅させた石化現象を相手取り、全世界救済せんと意気込む彼にとって、宝島がぶん回す”妖術”は現象を見定め原理を探ってねじ伏せる、科学の対手なのだ。
 アマリリスの体験談から重要な情報を抽出し、対抗策を考え始める姿勢はとても”科学的”で、数の上でも武力としても正面からは勝てない状況で、選択可能な唯一の手筋でもある。
 敵にはどんな兵器と人材があり、何処が付け入る隙なのか。
 考え抜いて死力を尽くすスタイルは、コハクを後宮に潜入させるカワイイ捏造計画へと繋がっていく。

 

 そのためにゃあ移動ラボ奪還が必須……ってわけで、敵が蠢くペルセウスに接近していくチーム。
 ゲンちゃんが手綱を握りきれない雌ライオンが、知恵を絞って吐き出した吠え声が大気を震わせ、科学王国の生き残りに届く。
 一行殲滅のショックが大きいからこそ、残存兵力がいてくれる嬉しさ、それが(一見)ハズレの銀狼とスイカな肩透かし感、だからこそ一発カマしてくれるんじゃねぇかという期待感を全部まとめて、大変そそる展開である。
 猪突猛進なコハクちゃんが思わずキレて突っ込みつつ、即興の暗号をひねり出すのは流石科学王国の一員という感じだったし、ゲンちゃんの舌先三寸アフターフォローも流石のもの。
 少人数でピンチに対応する形になるので、それぞれの得意領域がお互いの死角を補って、スペシャリスト集団が歯車を噛み合わせる気持ちよさもある。
 メンタリストの状況掌握技術にも慣れてきてて、熱烈キッスの芝居を即興でひねり出して疑念をそらしていくの、コハクちゃんクレバーよね……。
 ぜーんぜん千空とワタついた感じにならないのも、このお話らしい手触りでイイ。

 こんなチームに敵対する宝島サイドだが、アニメで見るとキリサメちゃんマジでスケスケだな!
 コハクちゃんが『ドレスは足技が使いにくい……』と言った直後に、華麗な蹴りでゴリゴリ攻めてくる所とか、ライバルキャラとしての削り出しが鮮明で大変良い。
 モズがその戦闘力を見せつけるのはまだ先だが、おどけた態度で隠しきれない知略と邪悪さを既に滲ませている、イバラの存在感は大変良かった。
 やっぱ青山譲さんの悪役芝居はイイなぁ……乾いた肌に染み渡る悪辣。
 敵はデカくてヤバいほうが挑み甲斐があるので、アマリリスの仲間を処理した手際とか、小指一本の変化にソツなく気づく観察眼とか、この段階で良いハッタリ効かせているのは大変いい感じだ。
 司は科学技術否定派な千空のシャドウだったけども、イバラはそれを王家相伝の妖術として悪用してくる、もう一つの鏡なんよな。
 ここら辺の対比構造は、やっぱ好きだ。

 

 そして頼れる……のだろうか、二人きりのサバイバー!
 こっからしばらく出番がない龍水が、限られた残り時間でスイカを守る判断、それを可能にする超思考力を書くことで、ぶっ倒されているのに株が上がるのは良かった。
 あそこは右京と龍水だけが状況に即応して、完全対応は無理ながらも死力を尽くして非がった結果、微かな希望が残った……という、少年漫画の王道である。
 大きいものを託された以上、銀狼には頑張って欲しいが……既に凄腕諜報員として結果を出しているスイカに比べ、へなちょこ腰抜けギャグ要員な場面が多い彼が、こっからどう気張るのか。
 一人生き延び、石になった兄貴を前に流した涙は、逆転の起爆剤足りうるのか。
 なかなかいい感じに、燃える逆転劇の足場が整ってきてもいる。

 同時に一つ二つ、素直な知恵比べ、力比べからヒネって面白さを生み出してくるのも、この物語の醍醐味。
 バキバキにバトルマインド仕上がった女獅子を堂々、抑圧社会の裏口から潜入させるためのカワイイ作りに、科学がどう絡んでくるのか。
 こういう風に、現代人の日常に身近なネタを非日常の戦いと化学反応させることで、意外でありながら身近でもある発見や驚きがモリモリ生まれてくるのは、正しくサイエンス・アドベンチャーしてるなと思う。
 寄り道っちゃあ寄り道なんだけども、そういう裏口をつくんないと勝てない戦力差だってのは幾度も強調されてるし、そこで意外な一手を打ってくることで主役の閃きも強調されるしね。

 ハラハラドキドキの大ピンチと、それを覆す知恵、振り絞られる勇気。
 少年漫画の醍醐味をたっぷり味わえる展開で、次回も大変楽しみです。