たとえ五体が砕けようとも、貫くべき意地が女にはある！
トンチキアニメの本領をぶん回しつつ、燃え盛る思いが激しくぶつかりあってクライマックスへの道を開く、バディゴル第22話である。
大変良かった。
インチキショットの反動で全身ズタズタになる少年漫画イズムと、勝負の瞬間のために牙を研ぎ澄ます不屈、それを信じ支えるキャディの思い、たどり着いた答えが師匠を撃ち抜く様子を、凄い勢いで突っ走った、
前回あくまで一人で立つイヴの善さを強調した上で、傷だらけの姿をイチナにだけ見せて魂を預ける信頼とか、世界で唯一弱さを見せたくない葵への視線とか、激情大盛りメラメラ仕立てだったのが素晴らしい。
感情というガソリンを意地でスパークさせ、何もかんも置き去りにする勢いで天までぶっ飛ぶこのアニメの良さを、『虹を超える弾丸』として覚醒させた話運び、メチャクチャに気持ちいいぜ……。
つーわけで全身針だらけ包帯まみれになるほどの、ドすげぇ反動が襲いかかる魔法の弾丸。
無敵ショット連発して楽勝とはいかない課題設計がメリハリ効いてるし、ここまで無双気味だったイヴがこんだけ代償を払うことで、葵との再戦のハードルもいい感じに上がる。
そこに至るための壁役たるアイシャが、ここでレオへの慕情や譲れぬ思い、彼女なりのゴルフセンスをぐぐっと前に出してきて、ライバルとして良い存在感を掴んでたのも良かった。
な～んも考えてないと思ってた元気野生児が、結構健気でナイーブな内面を差し出してくる展開に、僕は大変弱い。
アイシャ・カンバッタ……かわいいね……。
弱みを見せれば、喉笛を食いちぎられる。
相変わらず路上の流儀で生きてるイヴが、イチナ相手には傷も痛みも全部さらけ出して吠えてるのも、マジで良かった。
前回イチナの忠言を跳ね除け一人で強くなっていく様子を描いていたのが、今回手負いの獣を勝たせるべく作戦を練り、お互いの思いに感じ入りながら限界を超えていく流れを、しっかり裏打ちしている。
先週描かれたのは今までのイヴらしさであり、今週はレオの苛烈主義を越え、父が託した虹を越え、日本でイチナと出会った今のイヴを描いたんだなー、って感じがする。
イチナもまた物語に登場した時の彼女ではなく、獅子の覇道に並び立つだけの強さと、愛する者の未来が閉ざされる不安に流れる熱い涙と、それを飲み下して運命に賭ける気持ちを、イヴから学び取っていた。
葵と雨音もそうだけど、相棒同士強く響き合って変化していく様子、それでも変わらない魂の芯がしっかり描かれているのは、見ていて楽しい。
葵にだけは弱ってる姿を見せないために、徹底して意地を張り続けるイヴの思いは、強いけれども狭くはない。
自分を決戦の高みへお仕上げてくれた人たち皆に感謝しながら、勝利を噛みしめる場面にも変化と成長を感じることが出来た。
ずーっと茶化してきたヴィペールさんの名前を、本人がいないこのタイミングで口にするのが良いんだよなぁ……染みる。
ツッパってツッパって、気持ちだけで体を支えて堂々、ライバルの前に立つ。
そんな思いを捧げられるのはたった一人なんだけども、自分を愛してくれる葵以外の人たちに、ちゃんと報いる人間になれてきてる感じがあって、凄く良かった。
そんなイヴの成長に、ドライバーさんが男気を見せた！
ビシバシ砕け散る鋼鉄のクラブはどう考えても笑いどころだけども、ローズとの戦いを思い返すと奇妙にシリアスでアツい場面にもなり、このなんだか良く分からねぇ気持ちがボゴボゴ湧き上がってくる感じ、『バディゴル食ってるな……』てつくづく思う。
限界は可能性を殺す呪いだと、前のめりに倒れるように生きるスタイルはローズからも学び取ったものであり、自分が勝ちをもぎ取ることで死地に追い込んだライバルの名をあえて呼ばない所に、イヴなりの崇敬が見えたりもした。
まぁあそこでローズの名前出すと、自動的に砕け散る義手思い出して絶対笑っちゃうから、出さないのが正解だしな……。
『勝負の瞬間まで力を溜める』ってのが今回のテーマかと思うが、一足先にプロになった葵が取材攻勢にヘトヘトになって、イヴと万全で闘うための体勢を整えている描写からは、海を超えたシンクロニシティを感じた。
過酷な闘争、砕け散る五体、コースの外側の難儀。
色んな代償を支払ってでもたどり着きたい場所があるのだと、最終決戦に向けて結構丁寧に積み上げることで、葵とイヴがお互いに向ける思いはより強く伝わるし、ワクワク感も高まる。
これだけ思い合っていても、なかなか決戦のバトルフィールドにたどり着けない焦らしの上手さも含め、大変良いエピソードでした。
つーわけでズタボロの全身でプロ資格を勝ち取り、惚れた男に勝ち逃げされて以来くすぶっていた師匠の妄念も、虹の彼方に連れて行ったイヴ。
セイラさんのネトネトもそうだけど、大人たちが勝手に投げかけてくる重たい鎖を跳ね除けるのではなく、背負った上で引きちぎって自分も相手も自由にしていくスタイル、パワーと希望に満ちてて好きだ。
重圧を跳ね除け、全力で打ち出す一打が未来に向かって高く飛んでいくイメージは、ゴルフという競技の一番気持ちいいところをぶち抜いてる感じもあって、テーマとモチーフとドラマの混ぜ合わせ方、相変わらず上手いなと感じる。
これまでの独立無法な生き方では突き破れない壁を前に、片手に友情、片手に血潮を握りしめて突き進むイヴ。
葵との再戦を前に立ちふさがる障害は多いが、リスクやマイナスはもはや起爆剤……行くっきゃねぇだろクライマックスまで！
最終決戦に必要な盛り上がりを、女女感情の領域でもゴルフ腕比べの領分でもしっかり積み上げて。
バディゴル最終章、たいへん盛り上がっております。
次回も楽しみです。
