イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Dr.STONE NEW WORLD:第10話『SCIENCE WARS』感想

 多勢に無勢の大ピンチ、ひっくり返すために必要なものは知恵と情報……そして結束!
 フロントとバックアップに分かれ、二つのチームが逆転の秘策を探るエピソードである。
 石神村にいた時は産業開発力、社会体制の比べ合いを大規模に回してきたわけだが、主要メンバーが軒並み石化されての小規模戦、コンパクトだからこそ全員が得意分野で力を合わせ、状況を先に勧めている手応えが濃い。
 アマリリスの色仕掛けが相手に隙を作り、コハクは得意の武力を封じて必死に頭を絞り、千空が読み取れない暗号はゲンちゃんのメンタリズムが引き受ける。
 スペシャリストが総力を結集して、窮地に挑んでいるワクワク感はお話の始元に、メンバーを変えて戻ってきたような手応えがあって、どこか懐かしくも新鮮だった。
 話を転がしていく内増えすぎた要素を、ショッキングに削り落としてお話を整理する手際が宝島編、シャープに冴えてるのは個人的な見どころ。

 

 一応の体制が整いチームが潜入と支援に別れてみると、現地協力者であるアマリリスのありがたみがグググッと際立ってきて、大変いい感じだ。
 千空ちゃんが超絶ストイックなので、艶っぽさを武器にして生き残るキャラはあんまいなかった(南ちゃん一応そういうタイプだったけど、カメラの発明で報道者属性に切り替わった)ので、彼女の色仕掛け無双は新鮮でもある。
 ここら辺舞台になってる宝島が、女狩りして後宮維持しているイヤ国家だから可能(かつ必要)な強みでもあり、こういう新たな面白さが浮かび上がってくるのが、新展開の醍醐味だなという感じはある。

 力押しではなんともならない状況設定なので、コハクがスパイ代表として現場で結構知恵を絞らねければいけない局面が多く、体系的な科学知識はなくとも頭はキレる彼女の強みも、存分に発揮されてる感じ。
 体だけでなく頭脳の瞬発力もコハクちゃん高いので、アマリリスと阿吽の呼吸でピンチを乗り越えていく姿には新鮮な頼もしさがあり、これに加えていざとなったら無双もするだろうしで、めっちゃいい感じに目立っているのは嬉しい。
 カワイイで武装している状況なので、メスライオンの意外な華やぎもたっぷり味わえて、ここもありがたいわな。
 銀狼……? まぁ、そのうち見せ場もあるだろう……。

 

 支援チームの方は空中戦を制するべくドローン制作に勤しむが、その途中で情報伝達用の機械ネズミを作ったり、暗号解読したりで寄り道に忙しい。
 目標に向かって猛ダッシュするわけではなく、むしろその途中で思いついたり組み合わさったりしたものが、状況突破の鍵になっていく。
 これは得られた知見が組み合わさることで、新しい可能性を形にしていく科学的発達がドラマに食い込んでいる形で、このお話の得意技とも言えるだろう。
 『あー、こういう話しになんのね……』っていう、視聴者の予断の裏から展開が襲ってくる形になるので、凄く気持ちがいい意外性なんよな。

 人数絞ってみると、ゲンちゃんが驚き役&アイデア担当としてメチャクチャいい仕事をしてて、やっぱいいキャラだなと再確認する。
 ほとんどの視聴者が抱えている、ぼんやりとした科学技術理解を作中に持ち込んで、千空のぶっ飛んだ発想にそのまま驚いたり、そういう立場でも思いつきを形にして、状況を前に進めたり。
 スペシャリストだけだと地面に足がつかない話を、背負ってこっちに近づける仕事をしっかりやってくれている。

 

 そういう『いい素人』なだけじゃなく、人間の心理においては千空以上の凄腕でもあって、暗号筆記者の心理を推測しながら謎を解いていく手際には、なかなかいい感じの迫力があった。
 司帝国との戦いでもそうだったけど、このお話は弱者の武器としての情報をとにかく大事にしていて、いかに情報格差を彼我に生み出して戦力バランスを切り崩すか、そこのハラハラで話が回っている。
 自分たちや科学の存在を気取られないことが、味方を軒並み無力化されてしまった千空たちの数少ないアドバンテージであり、それを維持したまま更に情報を集め勝利に近づくために、策を練りガジェットを作っていく。
 この過程に千空やゲンの超人的頭脳だけでなく、みんなで地道な作業を頑張る苦労とか、それが可能な人間関係の良さとか、温かい手触りが大事にされているのも、遠いイメージのある科学をメインテーマにしてなお、人間ドラマとしてのワクワクが動き続ける理由なのだろう。

 敵の先制攻撃により、少人数による諜報戦を選ぶしかなかった状況なんだけども、それ故今まであんま光が当たらなかった戦い方がメインで展開されてて、新鮮な面白さがある。
 状況とキャラクター、描写とドラマがお互いガッチリ噛み合って、いい具合の面白さを生んできてる手応えを感じられる、とても良いエピソードでした。
 このアニメ、何かと手を動かし汗を流してる状況が多いので、キャラを見せるにしても解説ではなく描写を通じてやってくるのは、親近感を感じやすいよね。
 『あ、この人はこういう人なんだ』と、描かれているものを通じて視聴者自身が見つける瞬間は何より楽しいし、そうなるように色々工夫をしている感じ。
 ここら辺のわかり易さと組み立ての上手さは、少年漫画の正統だなーって思うね。

 

 監視を欺き着々と逆転の準備を整える手応えを、たっぷり感じる準備回でした。
 求めていた宝のありかも突き止め、反攻作戦実行前夜、一体どうなっていくのか。
 いい塩梅のハラハラに引っ張られて、次回も大変楽しみです!