イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Dr.STONE NEW WORLD:第11話『奇跡はこの掌で』感想

 決戦前夜……託された奇跡を掴み取り、反撃開始の狼煙を上げろ!
 最後の最後までクラフト気質、すこぶる地味だがそれが良い、ドクストアニメ三期第1クール最終回である。
 スパイチームと科学チームが連携し、遥かな時を超えて血の繋がらぬ親子が繋いだ、奇跡の触媒。
 開けてビックリ玉手箱、イバラの慧眼が侵入者を見抜いていよいよ臨戦態勢……って所で、続きは10月待ち遠しい。
 振り返ってみると、シコシコ人材活用してインフラ整えて資源集めて、新技術へのロードマップ書いてシコシコ技術開発してモノ作って……という、大変地道なクールだったと思う。

 『宝島到達! 即全員石化!!』はショッキングな展開であったけども、そっからの展開もまたシコシコ潜入撹乱して情報連携して技術開発して……で、敵サイドの人となりや実力はまだまだ未知数、決戦開始は三ヶ月後である。
 でもなぁ……俺はこのお話の、そういう地道な積み重ねがマジで大変好きなので、第1クールラストが今戦ってる若人と、遥かな過去に希望を託したオヤジの絆を確認する形で終わったの、スゲー良いなと思った。

 集めた奇跡のかけらが実るにしても、自分が死んだ遥か後。
 それでもなお信じて、曲がった腰をさらに折り曲げて砂金を集めプラチナを探した百夜の祈りを、水面に映る宇宙に看取られた最後を、しっかり受け継いで千空が形にしていく。
 そういうシコシコ地道な足取りが、爽快な科学無双の足場にあるってことが、物語に宿ってる倫理と論理の健全さを支えてくれてる気がする。
 作品のちょっと外側の話になるけど、藤原さんが演じていた百夜を三上さんが引き継いで、キャラクターが生き続けてる歩みも感慨深かったな……。
 人の命は尽きるとも、思いは継がれて形を成す。
 そういう綺麗事を大真面目に信じて、妖術に貶められた科学の真価を武器に挑む戦いに、期待が高まる第1クール最終話でした。

 

 

 つーわけでプラチナゲットのための宝箱開封は、フォワードとバックアップが良く連携したチーム戦になる。
 不思議アイテムで難局を突破していく様子は、科学スパイ物語の一番美味しい部分ともいえて、少年漫画のワクワク感をギュギュッと濃縮して味わえた。
 静的破砕剤が等間隔にぶっ刺されてる絵面が、ケレン味あって良かったね。
 ゲンちゃんの何気ない一言をヒントに静的破砕剤を開発する千空と、それを受け取って開封ミッションに勤しむ潜入チームの連携が、後に明かされる時を超えた祈りと響き合ってる所も良い。
 今を生きる戦士たちがそれぞれの強みを活かして繋がるように、遥か昔に死んだ一人の男が、息子に託した願いもまた今に繋がっていく。
 生きるの死ぬの、現実やら宿命やらを乗り越えた所に勝利の秘策があるってのは、アツくて良いわなやっぱ。

 潜入チームにも役割分担があって、アマリリスの色仕掛けとやっててよかった槍修行、銀狼の演舞で上手く時間を作って、コハクちゃんが知恵と剛力で使命を果たす。
 なーんも原理は分からないながら、科学的思考法ってやつを身近な天才からちゃんと学び取って、今必要なアイテムをしっかりゲットする描写が、科学王国が生み出しているものを感じれてよかった。
 ブーブー文句たれつつ銀狼が励んでいた武芸が、貴重な一瞬を稼ぎ出す描写もそうだけど、平和な日々の中で培われたものがこの窮地で生きるのは、どっしりした積み上げを生かしてるなー、って感じる。
 あと女装銀狼の肉体の描き方が、少年特有の骨ばった色気をしっかり刻み込んでいて、相当なフェティシストが気合を入れてくれたな……と感じました。
 ありがたい……。

 

 かくして届いた奇跡の証、砂金に混じったプラチナを一つ二つの金銀砂子、集めてみれば祈りの形。
 ソユーズ外殻すら腐り果てる時を超えて、けして劣化しない貴金属が届くって構図も好きだし、その価値を分かりやすい金銭ではなく、人類救済の秘薬を生み出す触媒として書いてるのも良い。
 貨幣経済に慣れ親しんだ現代人だと、砂金見て価値の塊だと目の色変えるけど、コハクちゃんにとっては『珍しい色合いの砂』なの、面白い描写だなーと思った。
 ここら辺の文化ギャップは時にさりげなく、時に派手めに面白く作中で活かされてる印象ね。

 とうの昔に死んだ百夜が、直接声を届けてくれるわけではない(というか、その奇跡はガラスのレコードでもうやった)けど、奇跡を生むのに十分なプラチナがオヤジの思いを、全て伝えてくれる。
 千空のシコシコ地道に努力できる気質は、血縁を越えて父から受け継いだものなのだなぁ……などと、ここまでの地道な展開が逆に胸に刺さる展開である。
 更にいうとここの親子の共鳴は、後にソユーズくんの物語に生きてくるネタでもあるので、物語元素を上手くつなぎ合わせてドラマを生んでいく力が、やっぱ高いわな。

 

 かくして石化状態を打ち破る秘策を引っ提げて、決戦は10月からの第2シーズンだよ! という、大変そそる所で次回に続く。
 かつては偶然の奇跡に頼るしかなかったものを、理論と努力と発見を継ぎ合わせて生まれた装置でもって、制御・量産可能な”当たり前”にしていくのは科学的……というか産業工学的な描写だなー、と思う。
 石神村での食糧増産描写でもそうだったけど、『そういうもんだよ、しょうがない』と受け入れていたものが当然でもなんでもなく、不幸を踏破して当然に変えていける変化の触媒として、このお話の科学はある。
 そういう意味でも、幾万年を超えて届いたプラチナという触媒で第1クール〆るの良かったと思います。

 第2クールは積み上げた準備を活かしての大反抗となっていくわけですが、そのカタルシスが何に裏打ちされているのか、この全11話はよく教えてくれたなー、と思います。
 知恵と勇気と友情と、朗らかなユーモアと熱い血潮と受け継がれる意思。
 そういうものを地道に積み上げて、奇跡の勝利を掴み取る。
 爽快な結末に至るまでの歩み、一個一個が素敵で面白い作品の地力を、たっぷりと味わえる三ヶ月でした。
 これは原作に元々備わってる力だけど、それを損なうことなくアニメ独自の見せ方も時折混ぜて、しっかり届けてくれたのもありがたい。
 10月からの新章も、大変楽しみにしています!