イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ライザのアトリエ 〜常闇の女王と秘密の隠れ家〜:第1話『錬金術師』感想

 ガストの人気シリーズが初回一時間スペシャルで、堂々アニメ化!
 因習と束縛に満ちたド田舎島に飽き果てた悪童が、仲間を誘って新たな冒険に漕ぎ出す錬金ファンタジーの開幕となった。
 畑に港に町並みに、全体的に絵作りがリッチで、作品に一番求めてた『正調Jファンタジー汁を、ゲップが出るほどたっぷり食いてぇ……』という欲望は、大変いい感じに満たされる。
 ここの作りが良いので、良く言えば定番王道、悪く言えばありきたりでスタンダードな旅立ちの物語を、いい塩梅の部分だけ掬い上げて飲み干すことが出来た。
 俺はベタ足の話回しが好きなので、クソ田舎に主役が飽き果ててる様子とか、幼馴染とおてんばお嬢様でPT組むまでとか、歯が立たない強敵を島外からの客人がぶっ倒して憧れになる様子とか、JRPGの序盤戦ど真ん中がビシバシ襲ってくるのが、なんだか不思議と楽しかった。

 これはこれから始まるライザだけの物語がどんな感じか、飲み込みやすい定形に結構細かい描写を入れ込んで教えてくれる話作りが、地道に効いてるところだと思う。
 島外との接触を禁じる旧体制と、水利権を握り込みつつ商業を活発化させてる新興勢力のピリついてる空気とか、そことはちょっと離れた所で自分たちの土に誇りを持って生きてる人たちとか、太ももムチムチ冒険物語が乗っかる土台の部分を、結構しっかり教えてくれた感じがある。
 ライザが未だ見えてない小さな誇りが彼女のすぐ側にあって、錬金修行を頑張る中で彼女なりの足取りでもって、父が到達した職業的プライドを掴んでいくのだろう。
 そういう期待感を、緑川光の魅惑ヴォイスが説得力満載で作ってくれてよかった。
 パパンは田舎の農夫させておくにはもったいないセクシーガイだから、今後もちょくちょく顔を見せて欲しい。

 大人の事情と関係ない、世間が全く見えてない無鉄砲な力強さがライザにはあって、あらゆる物事が彼女中心で転がっていくのは、ジュブナイル・ファンタジーとしてはとてもいいと思う。
 元気良すぎて野放図……っていうかバカな部分ももちろんあるが、それは今後冒険のハンマーで人格ボコボコ殴られる中で鍛えられていくだろうし、それを観たくてこういうアニメ見とる部分もあるしね。
 アンペルさんとリサさんが、実力も世界の見え方も子ども達の先を行く実力者として良い自己主張をしていて、錬金術師と歴史オタクと戦士見習いが今後、どういう成長をしていくのか、教師役として楽しくなりそうで良かった。
 冒険の見通しは甘すぎ、他人を巻き込んで危険に近寄りすぎ。
 大人の説教が全部最もなダメダメライザが、”錬金術”という彼女だけの才能にしっかりたどり着いて、お話を支える柱をちゃんと見せてから第1話が終わるのもいい塩梅だったな。
 ここら辺は1時間スペシャルの強いところだ。

 少し気になった所を上げると、ライザの悪ガキっぷりが超王道なので、本来喜ぶべきムチムチサービスがノイズにも感じられた。
 自分の欲望と社会の折り合いをどうつけるか、認識の仕方が10代前半に思えるし、これがライザだけの特徴ではなく幼馴染ボーイズとも通じる塩梅なので、素直に肉体年齢もそんくらいで良かったのでは……とか思ったが、あのムチムチ太ももをローティーンに装備させるのは、流石にファンタジーと言っても無理があるか。
 ガッツリ特定層に訴求する強みを付与させるために、物語の地道で素直な部分が軋んでいる感じは気になるし、『世間のルールはクソ喰らえ! この田舎牢獄から己を解き放つべく、今必死の身じろぎを叫ぶ!!』つうパンクっぷりを、既に気に入ってもいる。
 だからこそその反発があんまり上手く行かない未熟っぷりとか、自分を押さえつけているものが何を守っているか考えられないドバカを笑ってみてられる頃合いに、年を定めてくれてたらなお見やすかった……かな?

 まぁここら辺の違和感は、お話に付き合っていく中で角が取れていくる部分だとも思う。
 ぶっちゃけあんま肌色サービス多くなくていいので、ファンタジックな絶景とか、奇妙な動物やら現象やらがたっぷり出てきて、異世界のスペクタクルで楽しませてくれると嬉しいかなー。
 水系があんまり豊かではなく、新参一家が水利で実権握りつつある描写とか、いい具合に土っぽくて好きよ。

 ライザの先を見ないガキ大将っぷりは描き方次第ではストレスになると思うけど、因習島の窮屈さが上手いこと描かれていたのもあって、想像していたよりアレルギーが出なかった。
 周囲を振り回すほど強い”どこか”への憧憬を、錬金術の才能と混ぜ合わせて生まれる冒険、そこで手に入る傷と学びを今後もしっかりかいてくれると、俺好みのオーソドックスな味付けかなー。
 男衆も彼らなり、新たな出会いに期待するものがあると描かれているし、成長の伸びしろである未熟ポイントも結構丁寧に確かめられたので、端っこ島の少年探検隊が今後どこに進んでいくかは、素直に楽しめそうだ。
 排他的な島に”四人目”として訪れたクラウディアお嬢様も、結構いい出汁出そうなキャラしているので、師匠連中と合わせて今後の煮込み方にはワクワクである。

 

 というわけで、想像していたよりも好みのコースにズバンとハマる、良い正調幻想譚でした。
 なーんも分からねぇひよっ子ながら、”どこか”を探し求める気持ちとエネルギーだけはあるライザを中心に、不思議な世界の冒険が元気よく転がってくれそうな気配があります。
 そういう物語に必要な……僕が観たいネタの仕上がりがかなり良くて、欲しいモンが出てきそうな予感に心が躍る。
 そういう既定路線の満足を飛び越えた、このお話だけの気持ちいい不意打ちがどっかで出てきてくれると、これまた楽しくなる感じかと思います。
 次回も大変楽しみです!!