イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ライザのアトリエ 〜常闇の女王と秘密の隠れ家〜:第3話『思い出の香り』感想

 錬金術が切り開くのは、少女の輝く未来と、かつての悪童たちの思い出。
 限界島のしっとり人情系ファンタジー、ノーバトルな第3話である。
 第1話で世界観とキャラの総ざらい、第2話でその具体的な進行を見せたお話が第3話に何をやるのか、結構気になっていたのだが流石の王道地道路線、ライザが学ぶ錬金術が何を生み出すのかを、じっくり追いかける構成になった。
 俺はこのアニメの腰がしっかり落ち着いている所、ベタ足で殴りかかるのを恐れていないところがとても好きなので、こういうちょっとイイ話系は大変良い。
 ずーっと島の外、輝かしい未来ばっかり見てきたライザが、島の人の思い出をたどりつつ自分に出来ることを探ることで、身近な場所にある輝きや過去に薫る思い出に目を向けていくのも、”第3話”としてとても良かった。
 閉鎖的なクサレ因習島に嫌気が差すのもよく解るけど、その土と水でライザは育ってきたわけだから、嫌気が差してた故郷が結構面白い場所で、そこに住まう人たちのために何かできる自分をちょっとずつ見つけていく足取りは、望ましい未来に進むためには大事だ。
 時折立ち止まって周りを見渡しつつ、持ち前の元気で前に進んでいくライザの旅路が取りうる方向性を、ここまでの三話でしっかり見せれたなー、って感じ。
 もはやムチムチ太ももが結構なノイズになってる、超王道な一夏の冒険に相応しい、手堅くも面白いエピソードでした。

 

 つーわけで今日も今日とて、ライザは錬金術に夢中である。
 ここまでは本気で取り組める何かを見つけたガムシャラな推進力を書いてきたけど、今回はややアクセルを緩めて、そうやって新しいものに出会うことで見落としているものを身近に見つけたり、大事なことを思い出せる可能性を扱っていく。
 ライザは全く無分別な女ジャイアンに見えてて、その無軌道が話を進める圧倒的パワーに繋がってもいるけど、今回は思い出の花を探る小さな冒険に挑むことで、結構思慮深く周りを見れる子なのだとも書いてきた。
 ここのセンサーが死んでると、巻き込んだ周囲の人に気を使うこともせず、自分のやりたいことだけやりまくるクサレアマになっちゃうわけで、粗雑な態度に繊細さを秘め、思いの外色んなことに感動できる子なのだと分かったのは、大変良かった。
 古ぼけて面白いことなーんもないと思ってたクサレ島に、かつて自分たちと同じような悪童たちが確かにいて、彼らなりの平凡で幸せで困難な人生を歩ききろうとしていること……自分たちに良く似た絆が長く長く続いたと見つけれたのも、凄く良かった。
 仏頂面に見えて要所要所でデレるアンペル先生に導かれて、過去と未来の間に立っている自分をしっかり観測し、色んなものから大事なことを学び取っている様子が、じわじわ積み重なっているのは楽しい。
 このめっちゃ地道で堅実な、田舎少女の学習物語としての足取りが、俺はやっぱり好きだ。

 そんな彼女を包む世界がファンシーで優しいことを、バトルがない今回凄くはいい感じにかけていたと思う。
 素敵なお花やキノコがそこら中に茂り、ヤギさんが思い出の宝物を教えてくれる童話めいた風景は大変素晴らしく、今後もあんま激しくバトルバトルせず、こういう穏やかで美しい風景の中を歩いていって欲しいと思った。
 やっぱ自然物があるがままではなく、不思議な想像力を浴びてファンタジックな装いをしているのが、錬金術がある世界を舞台にしている実感を、観ている側に伝えてくれる。
 あんまド派手なアメイジングはない(から、ライザたちも島に飽きていた)けども、まだ子ども達が気付いていない当たり前の美しさが島には沢山あって、そういうモンに育てられてあの健康優良不良少年達がいるんだと、しっかり得心できた。
 これは今回ライザたちが追いかけ掴まえた、かつて子どもだった老人たちがこの島に刻んだものと豊かに響き合っていて、風土と人間が島独特のペースで対話しながら、生活を営み幸せを作ってきた実感があった。
 ここら辺の土台として、ライザの実家が土の匂いと命の輝きを愛する”農家”なのは、非常に良く効いてるなぁと思う。

 

 戦闘担当のレントくんも焦る、非常にのどかな島の冒険。
 その中でライザは手製の傷薬で老婆の痛みを消し去り、思い出の香りを蘇らせて、老人たちに笑顔を与える。
 ライザが夢中になっているものは、ただただ物珍しく便利なだけでなく、そういう人間的な価値をしっかり持っているのだ。
 物語の主柱である”錬金術”の値段を、こういう感じでしっかり上げれているのは、今後お話が派手な方向に転がっていく中で大事なことだと思う。
 やっぱ主役が目キラキラさせながら追いかけるものは、人間の幸せの根っこにガッチリ繋がっていて、時間や情熱を注ぎ込むだけの意味があるんだって、見守る側も思いたいからな。
 なので、こういう錬金人情噺をしっかりやるのは大事だと思う。

 んでそんなホッコリ冒険譚に付き従って、ダチ認定を真正面から浴びたクラウディアさんは……終わった……。
 バッキャロー! 女と女は終わったところから開始(はじめ)なんだよッ!!
 完全に蕩けた視線をライザにぶっ放しているけども、肝心のライザからの視線はそこまで重たくなく、カラッと新しい友達感覚にスッキリしているところが、今後感情もつれ(量子もつれの一種、エモーションポテンシャルの不均衡から発生し、大きな力を生み出す)が肥大化していきそうな期待を高めてくれます。
 ライザは器がデカいバカガキなので、色んな人の柔らかい部分に無意識にぶっ込める主人公力があるわけだが、それが人見知りおぜうさまの脳髄を直撃した感じだな。
 「あなただけに捧げるフルート」という激重イベントをほぼ初手でぶっ込んできた当たり、辺境の跳ねっ返りとおてんばお嬢様が生み出す化学反応は相当”ある”と思ってますが、さて豊かに花咲かせてくれるもんか。
 今回ライザが学んだものが今後どう生きてくるか含め、次回も大変楽しみです。