イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ライザのアトリエ 〜常闇の女王と秘密の隠れ家〜:第4話『水没坑道』感想

 師匠から課せられた試練を乗り越えるべく、悪童三人組は力を合わせ古代遺跡に挑む!
 待ってましたのダンジョンハック、ライザアニメ第4話である。
 相当ベタ足で王道ファンタジー青春物語をやってくれてるこのアニメ、やって欲しいことは大体やってくれるので安心感がある。
 定番をキッチリ押さえていく確かさは定められたダンドリをなぞっていく既視感にも繋がってくるが、バトルを盛り込みつつも眼目を”状況判断”に置くことで、極地探検物語的な味が出ていて、上手く軸をずらせている感じがある。
 命がけの非日常と、島の因習やら家庭環境やらがジットリ包囲してくる日常はまだ対比関係にあるが、意地の悪い連中が遊びと蔑む冒険の中にこそ、一番厄介な人生の課題を乗り越えていく契機が、確かに宿っているはずだ。
 大剣を振り回して強い自分をとっとと確認したいレントくんに、ずーっと戦況を見極め引き時を判断する賢さを求め続けてるリラさんにしても、強力すぎる爆弾を錬金術師失格として、自分の才能と技術がなにを生み出しどこで生きるか考えるよう諭すアンペル先生にしても、冒険を通じて人間力が鍛えられるよう、良く導いていると感じた。
 自分がコントローラーを握り、ダンジョンに挑んで材料を採取してレアアイテムを錬成するゲーム的な面白さをそのままの形では展開できない、アニメというメディア。
 そこでライザたちの物語を描くにあたり、凄く地道で堅実な足場を積み上げている印象を受ける回だった。
 いや、ゲームの方でもこういう地道な成長物語をどっしり積み上げてるのかもしれないけどさ……。

 

 筋立てとしては師匠たちが課した難題に挑む中で、悪童たちに足りない部分、挑んだからこそ見えてきた伸びしろを描くエピソードである。
 危険なダンジョンに挑む旅には、悪童三人それぞれのワクワクとビクビクがあって、それが想定外の事態が次々飛び込む戦いの中、ダイナミックに揺れ動いていくのが面白かった。
 自分が何者かであることを早く証明したいレントくんは、戦える自分を確認しつつも適切に退けない判断力の欠如を思い知らされ、思いっきり凹む。
 反対にやる気0だったタオくんは学んだ知識と生来の判断力が、仲間の助けになる体験を経て実地調査にやる気になってきた。
 いかにも便利な魔法使ってパーティ支援しそうな彼が、徹頭徹尾知識と勇気で難局を切り抜けていく担当なの、魔法ではなく錬金術をメインにしたアニメらしくて好きなんだよな。
 『あ、ここでセージ判定クリティカル出したな……』みたいに思えるシーンが多くて、TRPG野郎としては興奮できるポイントだ。

 そして我らが主人公はノリと勢いでテキトーに作った超兵器を爆裂させて、坑道崩落の危機を招いていた。
 想定の三倍くらいの威力で爆弾炸裂しててウケたけども、あれは物理的な爆発であると同時に、錬金術と出会って覚醒したライザの才能、それ自体の炸裂でもあるのだろう。
 それは規格外の可能性であると同時に思わぬ危機を呼び込む危うさを秘めていて、慎重に行く末を見定めなければ、自分はおろか仲間たちも危険に晒しかねない爆弾だ。
 このヤバさがライザ個人にとどまらず、錬金術という技術学問体系にも延びているところが、世界観とドラマの広がりを感じれて良かった。
 素材と才能を錬金釜にブチ込んだらアイテムがポップアップしてくる、謎めいた(あるいはゲームっぽい)ブラックボックスとはいえ、錬金術は社会制度の中に既に織り込まれた、重要な技術だ。
 気分の赴くまま才能が暴れるまま、野放図に使っていてはいつか、ダンジョンよりも大きな物を壊しかねない。
 それを制御できる個人であるために、思春期の奔放さとの付き合い方を覚え、錬金倫理ともいうべき意識を育てることを、アンペル先生は何より重要視している。
 そうして立派な”錬金術師”を目指すことで、世界の形もその中の自分もまだ見えていないクソガキは、より善い自分に近づいていく。
 僕はこのアニメのスタンダード・ジュブナイルなところが好きなので、ライザの冒険譚がただただ凄いアイテムを作ったり、強敵とのバトルに打ち勝ったりして終わらないのは嬉しい。
 そういう一個一個の現象よりもう少し上の視点で、俯瞰的に冒険や挑戦、それに向き合う自分を見れる意識こそが、ライザの夢を叶えるのだと、信頼できる導き手が断言してくれたので、とても良かった。

 

 一話まるまるダンジョンアタックに使うことで、バトルやアイテム作成それ自体がゴールではなく、引くか進むか、使うか使わないかという”判断”それ自体を重要視する師匠たち(つまりは作品全体)のスタンスが、鮮明になったと思う。
 それは冒険の成否それ自体に拘泥しすぎず、より長く冒険できる道を俯瞰的に探り、その旅を通じて何を育むかを自分で把握できる精神を、悪童達の冒険日記に刻んでいく姿勢だ。
 これは謎めいた遺跡巡りを、ある種の局所探検として捉える視点で、一般的なRPG的視座とは結構変わった味付けだと思う。
 そういう的確な判断力だけが危機を回避し、目を見開く驚異にたどり着くことを可能にするわけで、そういうアドベンチャーとしてこのお話を見たい自分にとって、とにかく判断力重視で進める方針はありがたい。
 戦士や魔法使いというより、登山家や潜水夫に近い資質が育つよう、道が作られてる感じだよね。

 そうやって冒険の中鍛えられた判断力は、ライザがぶつくさ文句言ってるつまらない(ように、今の彼女には見える)家庭の日常とか、書斎に自分の興味を閉じ込めてしまっているタオくんの狭さとか、クソ親父とカス島に自意識こすられまくって焦ってるレントくんとかを包囲する、凄くありふれた日常と戦う武器になるだろう。
 島の外から来た錬金術師たちに手を引かれて、そういう日常の鬱屈から離れられるワンダーランドとして魅了された冒険であるけども、その真中を懸命に駆け抜けていったことが、遺跡に逃げても消えはしない当たり前の鬱屈を、超えていける力になる。
 こういう形で日常と非日常が繋がると、とても素敵な錬金術が成し遂げられると思うわけで、そういう意味でも判断力重視の作風は良かった。
 ワクワクスカッとする冒険の合間に、ジトジト重たい嫌味な日常描写が結構たくさん入っているのは、そういうお話を今後展開していく足がかりかな、と期待している。
 俺はそういう形で、非日常への旅を祝いでくれるお話が好きなのだ。

 

 というわけで、危険も発見も山盛りの新米卒業試験でした。
 とにかく師匠たちが子どもたちに真摯に向き合ってくれてて、一時の気晴らしではなく一生を支える土台作りとして、冒険を活かす姿勢なのがありがたい。
 そういう人物が差し出してくれる変化の種を、ライザたちも時に目をキラキラさせて、時に至らぬ自分にガン凹みしながら、心の畑にしっかり蒔いてる手応えもありました。
 こういうド地味で堅実な味わい深さが際立つほどに、露骨にカットインしてくるむちむち太もものノイズ感凄いけども……まぁ俺に刺さらないってだけで、大事なウリだろうしなぁ。
 興奮も反省もたくさんあった水没坑道は、あくまで最初の一歩。
 これからライザたちがどんな冒険に挑み、どんな宝物を掴み取ってくるのか、次回もとても楽しみです。