イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR-:第4話『空と海のあいだ』感想

 トンチキバトルは一旦お休み!
 正統派異世界青春ファンタジーの本道に戻る、幻日のヨハネ第4話である。
 内弁慶のええカッコしいなのに、自己評価が低く夢見がち。
 大変困った思春期っぷりがデケー犬と太陽系幼馴染の手助けを経て、だんだんと落ち着きどころを見つけてきたヨハネに、また新たな友達と発見が訪れる回となった。
 第1話の底を打ったダメっぷりが印象的だったので、そっからジワジワ浮上して世界と、自分を見つめれるようになっていく過程を見守るのは楽しい。
 マルちゃんとの関係性構築を濃厚丁寧にやったことが、彼女を窓にしてヨハネの交友関係が広がり、今まで見えていなかったものが見えてくる展開を素直に飲ませてもくれる。
 マリちゃん除いて、主人公以外はやるべき仕事もあるべき自分の形も既に見えているので、ヨハネが答えを探す導き役にならなくて良い作りなのも、彼女が迷って戸惑って答えを見つける物語を、シンプルに整えている印象。
 ここでAqoursのお話のように、全員青春迷子のまんまスクールアイドル活動に体当たり、バチバチ感情火花飛ばしながら自分を探していく展開だったら、こんだけスムーズな印象うけてない感じはある。
 まー自己探求物語の一番美味しいところを、出るキャラ軒並み既に終えてしまっている作りなので、ヨハネ(とマリちゃん)以外はややコクが薄い……てのを、時折挟まるトンチキで補佐していく作りなんだろうか?
 素直になれない思春期ガールを、微笑みながらサポートしてくれる頼れる友達つう立ち位置でも、全然爽やかに気持ちいいことは今回再確認できたけどね。
 時折ぶっ飛んだ変化球を投げ込みつつ、基本は丁寧に青春物語の真ん中歩いている安定感が、やっぱこのアニメの強みだと思う。

 

 

 

画像は”幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR-”第4話より引用

 魔王に告げられたヌマヅの救世主としての資質は、今のヨハネには胸を張って受け取れないものだ。
 日頃虚勢を張っているように、特別な何者かであるなら堂々大きく窓を開けて世界と向き合えばいいのに、ちょろっとカーテンを開けておそるおそる、自室の外側に広がっているモノを視認する。
 ヨハネの自室が彼女の自意識、あるいは思春期そのものとして物質化され、演出に生かされ続けているナイーブさが僕は結構好きだけど、そこにライラプスがい続けることの意味はとても大きいと思う。
 自分を堂々誇り、明るく社交的に社会との接点を多数持つ。
 宿題抱えてのモラトリアムが出すべき”正解”を、尊大でありながら臆病でもある妹が自分の答えとして掴めるように、ライラプスは常にヨハネの側に寄り添い、教え諭し……その声はヨハネにしか聞こえない。
 無意識にそれが”正解”なんだと理解しつつ、無駄に育った自尊心と持ち前の臆病さで掴み取れない自分を、叱咤し見守ってくれるもう一人の私……トーテムであり超自我でもあるライラプスがいることで、このお話は一人の少女が自意識を確立するまでのファンタジーとして、一本筋が通ってる印象だ。

 ライラプスヨハネの内面を支える存在だとすると、マルちゃんを筆頭とするAqoursの乙女たちは外側から手を差し伸べる立場で、今週も物語は幼馴染のお節介で始まる。
 色んな人と出会い、何でも屋修行とか激烈シカバトルとか様々な体験をするお話の中で、マルちゃんは最初にヨハネの心に触れる特等席に座り、ずーっと友達思いの優しい子で居続ける。
 今回出会うヨウちゃんやカナンもそうだけど、いまヨハネが探している宿題の答えを、他のAqoursメンバーが代替既に見つけているのは面白い作りだ。
 そこを一緒に探求していく(それこそ沼津でやったような)話はマリちゃん(と、もしかしたらリコちゃん)に絞って、ヨハネが出会う新しい友達は皆、既に自分の仕事を、この場所で何を為すべきかを見つけている。
 そして忙しい日々の中、地元に戻って迷ってる女の子に自分が見つけた答えを、手渡してあげる優しさと余裕がある。

 

 こういう手助けを貰わないと、カーテンで覆われた自室≒内にこもりがちな気質を越えて世界と出会えないのが、ヨハネという少女である。
 しかし一度手を引いてもらうとはずみがついて、最初はオズオズ手伝っていた郵便配達にも、いつしかヨウちゃんを追い抜いて元気に向き合うことになる。
 それどころかファンタジックな人間大砲で空を飛び、文字通り見たこともない景色に飛び込み風を感じて、自分を開放していく。

 この厄介でチャーミングな精神性を、しっかり絵で切り取って積み上げていく演出プランは、結構好きだ。
 ヨハネがどんな子で、何をしたくて何故出来ないかを、セリフと同じくらい仕草や情景で語ろうとしていることが、彼女のややこしくも普遍的な思春期散策を、豊かに裏打ちしている。
 ヨウちゃんの仕事を手伝うことでヨハネは街の人に触れ合い、自分の行いを感謝され受け入れられる喜びを学んでいく。
 本来そういう、根本的な嬉しさに心弾む感性が豊かな子なんだけども、思春期こじらせた結果素直に『ありがとう』も『ごめんね』も『ただいま』も言えなくなってしまっていたヨハネが、ヌマヅにいる自分を取り戻すまでの物語。
 これが結構一進一退で、自信をつけて真実を見つけたと思えば後ろに下がり、怯えながらデケー犬の背中に隠れてしまう足取りが、なかなか良い。
 自分と世界の在り方を見つける歩みは、異世界であっても皆同じ”行つ戻りつ”なのだ。

 

 

 

 

画像は”幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR-”第4話より引用

 だからって、すーっぐフサフサきょうだいの心地よい感触に逃げるのは止めなッ!
 嘘止めなくていいです……賢く優しき導きの獣に甘えながら、ゆっくり大人になっていこうな……。
 こういう仕草を見せられると、ライラプスヨハネの安心毛布であり、そういうモノをまだ必要とする精神年齢なんだなーってのがつくづく染みるよね……。
 沼津ではイタい中二病としてギャグ混じりだった善子の幼く脆い部分が、魔法使いがガチでいるファンタジー世界で主役に抜擢されることで、枝葉を取り貼ってダイレクトに話の真ん中乗っかってる感じはある。
 『未来じゅら~~』って言わないで圧倒的太陽属性ヒロイン力を発揮してるマルちゃんとか、三年の湿度高い関係性から解き放たれてナイーブ魔王やってるマリちゃんとか、”ラブライブ! サンシャイン!!”を解体離脱することで、逆にキャラクターの真芯に迫る外伝……なのかもしれない。
 ”SUNSHINE in the MIRROR”がサブタイトルである以上、ここら辺は意図的なんだろうなぁ。

 異世界でも相変わらずの面倒見を発揮する、カナンの姐御に見守られる形で、ヨハネは壊れてしまったブランコを修復する。
 それは孤独だった自分にライラプスという友だちが生まれた場所であり、背丈が延びてしまった今となっては、そこに座っていては新たに巣立てない鎖でもある。
 ペンキまみれの無様さも気にせず、皆で力を合わせ必死に修繕に勤しんだ結果、ヨハネは思い出の中とは違うブランコを新たに生み出して、子どもたちにそこに座る特権を譲る。
 それは孤独で傷つきやすかった幼年期……今新しい出会いに怯え、ライラプスの毛皮に埋もれてしまう原因から少し距離を取って、それを見ている自分が今何処にいるか、客観視する儀式でもある。
 第1話で描かれたステージを見ても、ヨハネがいつの間にか置き忘れてしまった何かを取り戻し、思い出していくことが彼女の未来に繋がっている。
 己の子供時代を客観視する今回『ガラクタから使えるものを引っ張り出して、新たな形に再生させる』という手順を踏んだのは、結構大きな意味があるのだろう。

 ブランコに座る子どもたちが再生した懐かしさを宿すのに対し、カナンが連れてきてくれた大きな太陽と海は、見たこともない新たな景色だ。
 それがヨウが見せてくれた広い空と繋がっているから、今回のサブタイトルは『空と海のあいだ』であり、故郷ヌマヅのあるがままの姿を、偏屈少女は汗まみれに駆けずり回ってようやく、見ることが出来る。
 そこに連れ出して一緒に走り、太陽の中微笑む少女……幻日のハナマル、存在質量がデカすぎる……。
 このマルちゃんの圧倒的”陽”が分厚いから、ほっておけばカーテン閉めきってデケー犬の側でジメジメする”陰”がお外に出て、踏み出したからこそ見えるもの(実は見たかったもの)と出会うお話に、説得力も出る。
 こんなピカピカ美少女にお手々引かれたら……変わるっきゃないじゃんねえ!
 (この手を引く/引かれるって関係性がマリちゃん相手だと逆転することで、”陰”に思えるヨハネがその実かなり強い”陽”でもあることが見えてくるのは、面白い配置)

 

 

 

 

画像は”幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR-”第4話より引用

 かくして最高夕日に青春ダッシュ、ずぶ濡れになりながら流れ始めるメロディにただいまヌマヅ! よっしゃあ友情スタンプゲットだぜ!
 ここでもヨハネは最初最後尾にいて、楽しさに弾みがついて皆を追い越す。
 それはブレーキなしで海に飛び込む危うさと、思い切り前に踏み出せる元気の良さを併せ持っていて、多分ヌマヅに帰ってくる前のヨハネは前者の資質で、自分を傷つけすぎていた。
 ずぶ濡れになっても笑える、海に飛び込んだからこそ見える美しさを糧に出来るのは、やっぱ部屋から出て新しい友達に出会えたからだ。
 ヨハネを見守り導くAqoursの仲間は、この世界では既に仕事を見つめ自分を確立している。
 程よいところで留まる分別があればこそ、臆病に迷う妹分を助けることも出来るのだけども、新しい何かへ無防備にツッコんでいくエネルギーには欠けている。
 物語の主役として選ばれたヨハネが、勢いをつけて先に出てしまう描写が多いのは、そういう無謀とも元気ともとれる幼さこそが彼女の特権であり、滅びゆくヌマズを救いうる奇跡だから……かなぁ。
 主役に唯一性を出すのは物語の安定上とても大事だと思うので、ヨハネワントップでグイグイ進めていく(そのために、迷って自分を見つける物語をマリちゃん以外には許さない)この形式は、なかなか良いなと思います。

 そして太陽と海と空の街で、新たな再生を果たしつつある妹を、遠く見守るライラプス……。
 『ごめんね、ヨハネ』に秘められた思いがどんなものかは今後顕になるとして、ヨハネの無意識や未だ顕在化していない資質を体現してるライラプスが、主役の成長とともに消えていきそうな気配は濃い。
 ライラプスが今やってくれている、守護や決意や見解を自分で出来るようになるってのが多分この物語のゴールで、不思議な獣とニ体一心で過ごしてきた幼年期が、自分にしか声が聞こえないイマジナリーフレンドを消して終わるってのは、まぁまぁ腑に落ちる決着でもある。
 ヨハネがまだ到達していない成熟に、一足先にたどり着いた(だから、ヨハネの足りない部分をここまで的確にサポートできる)ライラプスは、ヨハネが未だ見えていない二人の幸せの終わりを、既に見据えているのだろう。
 魔法が使える特別な存在だったはずの時間が終わって、砕かれた万能感の代理をガラクタの中から探しているヨハネが、無事自分自身をレストアし終えた時、優しい獣は何処に行くのか。
 用済みになった青春の介添え役を消し去るのではなく、新しい関係性で隣に寄り添っていく結末だと、もうすっかりライラプスが好きになってしまった自分としては嬉しい。

 

 

 というわけで、第2話に続くヨハネのヌマヅ社会見学回でした。
 うーむ……やっぱこういう青春ど真ん中ストーリーを全力でブン回してくれるのが、素直に気持ちいいなやっぱり!
 ファンタジック鹿アクションとか淡島魔王城とか、市役所から射出される鮮紅の甲冑騎士とかを、今回描かれた正統派自分探しとどう絡めていくのか。
 ここら辺の馴染ませ方が、今後大事になってくるんじゃないでしょうか。
 その結節点になりそうなマリちゃんに、次回はズブズブ深く入っていきそう。
 まさかまさかのヨハマリマジ強い、外伝だからこその関係性構築にも期待しつつ、来週も大変楽しみです!