イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

好きな子がめがねを忘れた:第5話『好きな子とバレンタインデーに会った』感想

 学生ラブコメの一大イベント、ヴァレンタインデー&ホワイトデーに挑む、好きめがアニメ第5話である。
 ラブコメの”コメ”に力を入れたエピソードで、澄ました顔で奇人変人な小村くんと、ド天然野生児三重さんの噛み合ってるようで噛み合ってない、しかし根っこで通じ合う朗らかな関係性が、沢山の笑いを生んでくれていた。
 先週辺りから明らかに作品……ていうか小村くんのキャラ性が一段階ギアを上げた感じがあって、延々うなり続ける限界人間と化す外装と、その内側大音量で響き渡るデケー声のツッコミが、気持ちよく冴えていた。
 彼の内言を聞ける僕らにとって相当なオモシロ愉快人間である小村くんの、その内側を知らない三重さんも奇妙奇天烈な行動に走る可愛い珍獣であり、変人×珍獣が増幅させるハーモニーが、一大イベントの波に乗っかって勢いを増していく。
 美麗な画面を置き去りにする感じでテンションと血圧高く、まるで俺の脳内にしか存在しない銀魂ファンみたいなノリで騒ぎ続けている二人の暮らしが、なんだかとっても楽しそうに見える回だった。
 俺……だんだんこのアニメのこと好きになってきたかも……。

 

 V-DAYといえば恋の押し相撲……その全てが決まりかねない大一番であるけども、むしろ普段よりラブ要素は控えめで、小村くんの好きが詰まりすぎて言葉にできないモノホン限界人間っぷりとか、三重さんの一生お菓子食べてたい欲望の獣っぷりとか、主役が持ってるかわいいトボケが、表に出た回だった。
 澄ました顔で日常生活を送りつつ、よくよく聞いてみれば相当イカれた寝言垂れ流しにしているギャップもまた面白いのだけども、それもこれもお互いが好きな故。
 ちょっと世間一般の基準からズレて生きてる三重さんが、彼女なりのこだわりで『友達みんなに、ちゃんとプレゼントをする』こと大事にして、ズズイと身を乗り出してくる姿が微笑ましい。
 めがねを忘れた三重さんが上手く捕まえられないのは、ピントのズレた物理的視界だけではなく、もう恋をする年頃になっている自分と目の前の少年もだ。
 でもその、中学1年生にしてはちょっと幼い表情はいつでも真剣で、三重さんは彼女なり毎日必死に、明るく楽しくぼやけた世界を生きている。
 そんな彼女なりの真剣さが見えて、いつも通りズレてる対応なのにキャラクターの真芯に響く、なかなか面白い手応えを感じた。

 そんな三重さんの全部が大好きな小村くんも、またどっかに幼さを残した少年であり、この釣り合いが良いからズレたまんまで付き合ってもいられるのだろう。
 旗から見てると『もう完全に”仕上がって”んだろ……』とツッコみたくもなる二人だが、三重さんは自分の気持ちにも気づいてないし、小村くんは恋のマグマを上手く制御できないしで、彼氏彼女という段階に進むにはまだまだ、準備が足りてない。
 でもそうやって恋を成就させる……ラブコメとして一つのゴールに到達するのはまだまだ早いのだと、そんな未成熟な時代は面白くてチャーミングなのだと、しっかり見せてくれる回になった。
 どうしても『好き』の二文字が口から出てこない小村くんを見て、自分の中で『なるほど……それならばじっくり、何かが動き出す瞬間を青春と戯れながら待てばいいよ』と確かに納得もした。
 こういう納得は、延々決着を先延ばすことで物語を継続していく宿命を持ってるラブコメんジャンルにおいては、自分的に結構大事なことなのだ。

 二人が思う存分子どもであることは、僕にとっては見てて楽しく感じて嬉しい、とても大事なファクターだ。
 恋の成就に焦っても心がついてこない現状が今回抱えたことで、ヘンテコな二人がヘンテコなまんま、独特の距離感でゆっくり心を近づけていく大事さは、自分の中で確かになった。
 友チョコしか渡せないし、ホワイトデーはお菓子いっぱいもらえるイベントでしかない。
 そういう三重さんと、そんな三重さんが大好きな小村くんのまんま、今後も仲良く過ごして欲しいとつくづく思った。
 そうして二人でいることが、今年は言葉に出せなかった思いをいつか掴み取れる、ちょっとだけ大人な小村くんへと、近づいてもいるんだろうしね。

 

 足踏みしているようでいて確かに何かが変わっていて、でも一番大事なものは何も損なわれてはいない。
 そんな柔らかな変化を追いかけていく物語として、結構腰を入れて見れるのかなという感覚が、僕の中に生まれる回でもありました。
 バキバキの画作りとイカレ度強いキャラで、味濃い部分を楽しんでいた僕の姿勢が、もうちょい地道で丁寧なコクと視線が作品に確かにあると居住まいを正すのは、アニメと生で向き合ってるからこその面白さかと思う。
 それは作品を勝手にナメてた証拠でもあり、申し訳ない気持ちも当然あるのだけども、目の前に立ち現れてくる物語を自分なり噛み砕き、味わうことで変わっていったり、見つけ直したり出来るのは、アニメ見ていて一番面白い体験の一つだ。
 そういうモノと出会えて、とても良かったです。
 桜の季節に学年が変わる次回も、楽しみですね。