イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Lv1魔王とワンルーム勇者:第9話『勇者の葛藤』感想

 かつて世界を救った同志は、のっぴきならない事情に流され今や敵同士。
 レオとフレッドの直接対決が幕を開ける、ワンルーム勇者第9話である。
 魔王様と超次元バトミントンなんぞやりつつも、マックスが未だくすぶって足踏みしている裏で、グリムス大臣の思惑に流される形でニ大巨頭がガチりだす。
 チマチマ国境巡って小競り合いしていたのがバカらしくなるくらい、世界を救った怪物の実力は圧倒的であり、これに並び立つレオが控えていることを考えると、逆説的に共和国侵攻に二の足踏んでたのが納得行く展開だった。
 明らかに勇者パーティーは人の世に過ぎたるものというか、世界全体がそれ前提に作り変えられなきゃいけないオーバーパワーなんだけども、王国は人類の規格外に居場所を用意するのをサボったというか、個人に任せすぎたというか。
 そこら辺のツケを一人で背負って、地位や立場全部投げ捨てて最強の暴力装置としてかつての親友と対峙するフレッドには、勇壮というより悲哀が色濃く滲んでいた。
 こうならないために小器用に政治を泳いでいたはずなのに、こうなるしかない流れを作られ抗えず、追い詰められてのやけっぱち。
 一番やりたくない仲間殺しを前にしても、弱音が吐けない本音が言えない頑なさが、マックスいうところの『10年分の変化』だとすると、人間はなんとも愚かしく哀しい生き物である。
 さて、このまんま怪物どうしが潰し合って終わるのか、どっかで流れを変えていくのか。
 やっぱマックスの決断が、大きな鍵になりそうだ。

 魔王討伐以来10年、何がどうなって中世ファンタジー世界が個室ビデオ屋がフツーにある文明レベルまで発展して、それに伴い社会がどう変わったのかは分からん(し、多分そこが大事なアニメでもない)けども。
 グリムス大臣がメディア外野に退けた密室劇で終わらせたいところを、マックスの人生破滅させたイエローペーパー野郎どもがかき回して、状況が動いてきているのはなかなか面白い。
 あのレポーターもレオたちを絡め取ってる陰謀に義憤を燃やしているわけではなく、ただただバズを求めて浅はかに振る舞っているわけだが、結果として歪な搾取構造に横から一発入れる、メディアの正道をひた走っている形だ。
 浅はかでおちゃらけた我欲の亡者たちが、好き勝手絶頂にやりたい放題暴れた結果なにかが変わっていくってのが、この騒々しくも愉快なコメディの基本調子だと思う。
 マックスがそういう所にまで、重たい鎖を引きちぎってぶっ飛ぶ舞台づくりへ、一足先にマイク握った仇敵がひた走っていくのは面白い展開だ。

 奴らが実況中継してくれるおかげで、魂を分けたマブダチどうしがぶっ殺しあう悲劇はどっか遠い他人事ではなく、目の前の惨劇としてマックスに届く。
 それでもなお『俺には関係ねぇ』と背中を向けてしょぼくれ続けるのか、遂に煤けた灰に火が入るのか。
 彼の中にくすぶった何かが在ることはここまでの物語でも描写してきたし、超次元バドミントンでもぶつかってたしで、まーなんかが起きるのだろう。
 その起爆剤として魔王様の思いが役立ってくれると、あのこのファンである僕としては嬉しい限りだ。
 お話始まって以来、ずーっとマックス激ラブで献身的に寄り添ってきたので、お話が決定的に動く引き金は、魔王様が握ってほしいのよね。

 

 という感じの、熱くも悲しきクライマックス開始でした。
 何気なくそこら辺を散歩するかのように、殺し合いを当たり前に受け入れて超人的パワーで舞台を作る二人は、ある種のかっこよさを持ちつつもやっぱ可哀想で、誰かがどうにかしなきゃなと思った。
 当事者二人が背負った荷物は重すぎ、修羅場に押し流す勢いは強すぎ、運命を変える唯一性はぐうたら勇者にしかねぇ! ……って状況は、主役にしか出来ない仕事がハッキリしてて好きな展開だ。
 さんざんダメダメな現状、10年溜め込んだしがらみで動けない様子を書いてきたからこそ、それがぶっ飛ぶカタルシスがどう炸裂するかは楽しみだ。

 魔王を殺して終わってしまった勇者の物語が、もう一度動き出すために必要なものとは。
 マックスの再起をどう描くかは、作品の核心をえぐり出す決め手にもなりそうで、次回もとても楽しみです。