かつての盟友同志が骨肉相食む戦場に、まさかの魔王降臨！？
遂にボンクラ主人公が運命の精算に立ち上がり、チャリで現地に突っ込んでいくLV1魔王アニメ第10話である。
魔王殺しの実力衰えず、最強クラスの戦士と僧侶がガチガチやり合う場面は、なんとも悲痛で凄惨だった。
社会が持て余す人類の規格外二人が、真正面からぶつかればそうもなろう……って感じだけど、それぞれ秩序と自由を信じて10年間突っ走った結果、引き返せない場所に自分を運んでしまった結果といえる。
一切容赦のない殺し合いを、ちゃんとエンタメ化出来ないイヤーなモノとして書いてきたわけだが、そういう所まで行き着かないと譲り得ぬ矜持と意地が表に出てこないレオも、斬られて治しての激ヤバ戦法取ってなお一番素直な気持ちが出ててこないフレッドも、10年分”大人”になっちまってんだな、と感じた。
たった一人社会の最下層に沈んでったマックスと違って、二人は背負うべき責務や仲間があって、譲れない思いがあるからこそこんな事になっているわけで、放っておくと肉塊になる所までエスカレートしていく。
この対立を裏から煽ってる連中のように、腐り切って我欲の権化にもなれず、青臭い理想を真っ直ぐ貫くことも叶わず、流れ着いた場所の血生臭さとやるせなさが、バトルシーンにちゃんと宿ってたのは良かった。
こんな状況に追い込まれてなお、フレッドがかつての戦友を『世界で一番真っ直ぐで善良な男』と認めているのが、作中一番のツンデレで寂しかった。
勇者パーティーで唯一世間と上手くやり、官僚機構を泳ぎ切って栄達を得たわけだが、そんな日々は努力や誠実さが無碍にされるのが当たり前の、”大人”の常識を苦く飲み干したからこそ手に入ったのだろう。
これを飲めずに腐ったのがマックスで、暴力的に跳ね除けようとしているのがレオで……魔法使いのユリアは、家族という小さな幸せを安住の地にして、いいバランスで生きてるのかな？
魔王をぶっ殺して一気に変貌していく社会において、世界を救った圧倒的な力は過剰な暴力でしかなく、それをぶん回して気持ちのいい椅子を手に入れる……新たな魔王になるのを拒んだ結果、若人たちの志は行き場を失って利用され、この体たらくである。
さて、このまま潰し合って御仕舞……となるのは、天下の魔王がド許さぬ。
マックスに愛想をつかした……体でもって、自分がぶっ飛ばされて発奮してくれればと、捨て身の健気を全国中継に乗せるあたり、やっぱり魔王様はマックス好きすぎる。
なーんでこんな善良人が世界の敵やっていたのか、魔王軍の内実掘り返す話が来るとなかなか面白そうだけども、アニメの範囲ではあくまで勇者パーティーの三少年、決着をつけそこねた青春が収まる所に収まって終わりそうである。
そうなるためにはマックスが立ち上がる必要があり、そのためのトリガーはメインヒロインが引く……と。
こんだけ尽くされて立たないと、マジでクソカスのフニャチン野郎に成り下がってしまうので、超人的脚力でチャリをこぎこぎ、マックスが運命の現場に飛び込んでいったのは大変良かった。
やっぱ燃えそこねた魂が、だれかの献身を種火に燃え上がる瞬間は好きだ。
魔王様に往年の実力があれば、レオとフレッドが共闘しなければ倒せない強敵となることも出来たんだろうけど、もはや彼女は世界の敵たり得ない。
カメラに姿を晒せば『可愛い～』とマスコット扱い、鎧袖一触ぶっ飛ばされるのが関の山。
今回の魔王様の扱いは、人類社会と敵対することでそれを一つにまとめていた”魔王”の役割が、今や成り立たないことをしっかり見せていた。
そういう存在がいなくなったからこそ、かつての勇者たちがこんなことにもなっとるわけだが、時計の針を巻き戻して勇者に仕事があった季節を取り戻すことは、まぁ出来ない。
魔王抜きの世界に過剰な力を備え、その使い道を誰も示してくれず、それぞれのどん詰まりに行き着いたかつての少年たちは、殺し合うことしか出来ないのか。
オモシロ顔でぶっ飛ばされたマックスが、血なまぐさいムードで積み重なった暴力を逆に変える（あるいは引き戻す）所で次回に続いたのは、良い兆しかなと思う。
笑えね～より笑えた方がいいし、この話基本ギャグのはずだしな……そういうお話の中で、譲れねぇ血みどろを結構真面目にやってくれてる所が、噛みごたえあって好きなんだけども。
思い詰める通り越して、お互いの身体をバツバツ損壊し合う所までいってしまった二人を前に、クズ人間一人がバチキレて何が出来るのか。
待ちに待った主人公のカッコいいところ（それは多分、カッコ悪いからカッコいいところでもあろう）がたっぷり見れそうで、来週はとても楽しみです。
俺はマックスが好きで好きでしょうがない魔王様が好きなので、主人公が鎖引きちぎって鉄火場に突っ込む理由が魔王様なの、やっぱ嬉しいんだよな……。
