成るか、悪童たちの龍殺し。
一夏の冒険が子どもたちに何を残したか、その成果を測るライザアニメ第11話である。
風の魔法で高く飛び、パーティーが連携して魔物を倒す。
アニメ化初報を受け取った時『だいたいこんな感じなんだろうなぁ……』と、ぼんやり思っていた派手めなアクションが形になるのが最終話一個前という、このアニメ独特のテンポを象徴するような話数だった。
パッケージから受け取るイメージとズレた所が多々あるんだけども、そうやってお出しされたものは丁度好みの真ん中で、どっしり腰を落として土の匂いのある成長を描いていく姿勢は大変いい感じという、受け止め方に結構困るこのアニメ。
ムチムチ育った身体と、作中描かれるものの清潔さが全く噛み合ってない違和感も気づけば薄くなり、無謀とも言える前向きさで仲間たちを引っ張っていくライザの青春を、楽しく見守る視聴になっていた。
そんな彼らがどこにたどり着いたのか、長い修行時代を終えて四人初めての冒険に飛び込んでいく今回は、手応え十分に描いてくれた。
ドラゴンとの再戦が一番派手だけども、道中モンスターを捌く手際だとか、旅の障害を乗り越えていく頼もしさだとか、途中経過にも夏の宿題を無事終えた感じがあって、このお話独特の味わいが宿る。
どこに行けばいいかすら解らなかった場所を軽々飛び越えて、新たな困難も元気に飛び越えていく。
今回描かれる”出来るようになったこと”が鮮烈なのは、”出来ない”状態を丁寧に丁寧に、『このキャラデザと雰囲気でここまでどっしりやるぅ!?』とツッコミたくなるくらいにどっしりと描いたからこそだろう。
このコンパクトでみっちりした手応えは大変このアニメらしくて……”ライザのアトリエ”らしかったかどうかは、アニメしか見ていない僕には判断がつかない。
雰囲気としてはもうちょいインスタントな達成感を早めに出してくる感じだったんじゃないか、と思ったりもするが、自分にとっては家庭や地域と正面から向き合って、一歩ずつ出来ることが増えていったアニメ特有の足取りが”ライザ”になってしまっている。
そしてその手応えは、全くもって嫌いではない。
夏休みの自由研究としては、”ドラゴンころし”は少々派手な戦いであるけども、ファンタジー・ジュブナイルの〆としては象徴的でたいへん良い。
パーティーメンバー全員が連携して、かつては手も足も出なかった相手を武力と知力、明らかこんなド田舎に閉じ込めていくのは危険すぎる超火力錬金術でぶっ倒すのは、やはり集大成感があって良い。
瓦礫消し飛ばしたときから解っていたけど、ライザは大規模破壊兵器生み出す才能がありすぎて、とっとと然るべき教育機関で自分の可能性に”鎖”付けたほうが良いと思う。
アンペルさん、そこら辺の教導マジしっかりお願いしますよ……。
火炎の吐息飛び交う危険な戦場でも、ビビることなくそれぞれ為すべきことを果たし、村を脅かす脅威を討ち果たす勇姿には、もはや新米冒険者の面影はない。
タオくんのセージ技能が唸って、所詮古代の契約に縛られたトカゲ風情を知略でハメて有利状況作っていくの、TRPGみがあって良かったな……クラウディアの弓術、レントの剣術にそれぞれ見せ場があるのも良い。
古老が守護神と崇め奉る龍を、島から出ていくことを願う若人がぶっ倒したのはなんとも象徴的で、今後ライザたちを舳先に立て、島の在り方も大きく変わっていくのだろう。
そういう意味では、今回のミッションが交易派筆頭であるブルネンさん主導だったのは面白いよね。
顕在化した脅威を排除したことで交易ルートの安全性も高まって、島の風も外に向き出してる感じで、バリバリ稼ぐのだろう。
こういうちいと生臭いローカルテイストへ、見てると想像の食指が伸びるのが、ライザアニメ独特の質感だったと思う。
閉鎖的な共同体が持て余していた悪童が、ドデカイ偉業を成し遂げ社会に認められて、堂々と世界に出ていく資格を得る。
即物的で分かりやすい成果を積み重ねるよりも、出会いや努力が積み重なる過程を重視してきた物語がたどり着くゴールとして、龍殺しとその後は納得感のあるゴールだ。
ネームドモンスターをぶっ倒して終わる以上に、ライザが錬金術と出会って始まった物語が何を生み出したのか、このアニメらしいスケール感で掴み取った感じがある。
この島でライザ達がどういう扱いを受け、どう居心地悪かったか、肌で解るよう地道に描いてきたことが、龍の素っ首ぶら下げて故郷に居場所を得る決着と、しっかり繋がっている。
この社会的成功はそのまんま、青春こじらせた結果かつての仲間を認められなくなったボオスくんをぶっ刺し、大変面倒くさい感じで次回に続いた。
残り1話で超絶コンプレックス人間をどうにかして終わるのか、そういうややこしい問題にはこのアニメらしく時間をかけて向き合う姿勢なのか、まだまだ読みきれないけども、最後の課題として『お友達と仲直りする』が残っているのは、設定年齢を蹴り飛ばして小学生の夏休みを書き続けてきたこのアニメらしいな、と思う。
話の順序を考えるとこのアニメ、竜ぶっ殺して世間を見返す以上に、色々拗れてしまった幼馴染に向き直る方が難しいと位置づけているわけで、そこら辺最後まで徹底しとる。
見下し距離を取ることでグラグラな自我を支えてきたクズどもが、誰もが認める偉業を成し遂げ、あまつさえ倒れ伏した自分を助けてしまった惨めさに揺れるボオスくんに、ライザたちは何か出来るのか。
自分たちと良く似ている仲間のはずなのに、気づけばそう見れなくなっていた相手とちゃんと向き合う力を、錬金術は与えてくれるのか。
最終話でそこら辺、しっかり掘り下げてくれると嬉しい。
というわけで、派手目な活躍がてんこ盛りの最終話一個前でした。
一旦アニメの幕が閉じる以上、やっぱ終わりに相応しい達成感は欲しいわけで、龍殺しの旅は十分、その手応えを与えてくれたと思います。
物語が始まった時求めていた、ここではない何処かへ自分を連れて行ってくれる魔法をライザ達は、自分たちの手で掴み取った。
その先にある風景を描いて、お話は一旦筆を置きそうです。
最終回も楽しみですね!