イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Lv1魔王とワンルーム勇者:第11話『勇者 土に塗れる』感想

 山をも砕く激戦の果てに、勝ち残った奴は地べたにアタマこすりつけた。
 そんな結末良いじゃない、泥まみれ勇者の人生日記、限界クライマックスを良いバトル作画で描く第11話である。

 オレは人間サイズの超兵器達が常識ハズレのバトルを繰り広げるのが大好きなので、そういうのたっぷり味わえる今回は大変ご褒美であった。
 同時に前回から引き続き、かつて青春を共に駆け抜けた仲間が血みどろ殺し合うやるせなさも爽快感に苦く滲んでいて、この両立がラストの漢土下座にパワー与えていたと思う。
 人間社会に収まるにはあまりに強力になりすぎて、因縁と感情がこんがらがっていた連中が潰し合いの果てたどり着いたのが、あのむき出しの土下座なのは大変良い。
 マックスは自分のカッコ悪さを丸呑みできなかったからこそ、あの安アパートでくすぶってきたわけだが、人間の全部を絞り出す戦いを経てようやく、10年分の荷物を投げ捨てむき出しの自分になれた。
 そのための通過儀礼だと思うと、意味も意義もねぇけど壮絶で壮大なあのバトルも、必要不可欠な激突だったのだろう。
 そういう『意味ないかもしんないけど、ここを過ぎなきゃどこにも行けない』場所をたっぷり、力入れて書ききってくれたのは大変良かった。

 

 元々回想シーンの仕上がり、活かし方が良いアニメなのだが、今回は冒頭・バトル中両方とも大変素晴らしかったと思う。
 大人になりきれないバカどもを横に置いて、””出産”という一大事に挑むユリアの思いと魔力を受け継いで、あの時自分が果たしていたバランサーの役割を、全力で駆け抜ける。
 中央官庁で賢く立ち回れていたフレッドすらやけっぱちにバチ切れているこの状況、理屈抱えて言葉を尽くしてももう事態は動かないわけで、ならば自分に出来ることは両方ぶん殴って黙らせた後、血みどろ頑張った自分が必死に頭を下げるだけ。
 そんな極めて愚直な結論にたどり着いたマックスが、今までそうしたように乗り越えられない壁にぶち当たって、でも今度はそれをぶっ壊せる力を取り戻す時、もう消えてなくなったはずの黄金期を思い出す。
 生きるか死ぬかの瀬戸際を、力を合わせてくぐり抜けたからこそ失いたくなくて、でももうどうにもならない所まで気づけばたどり着いてしまったものを、気合と拳でどうにか取り戻す。
 それこそが本当に自分がしたいことなのだと、思い出して闘うマックスは、カッコ悪いからカッコいい。

 地べたを這いずって、過去の力を取り戻そうとする姿。
 賢い解決策はなんも思いつかず、誰かがどうにかいいようにしてくれるように、アタマこすりつけてる姿。
 もう不貞腐れも立ち止まりもしていない、10年の時間が過ぎてしまった勇者の”今”を全身全霊で抱きしめれるようになったマックスを見たら、そらー魔王様もダーリン晴れ姿にニッコリよ。
 最強最悪の敵として、こういう勇者のガムシャラを最前線で浴びてきたからこそ魔王様はマックスに惚れ込んだんだろうし、自分が体張って最高のタイミングで横槍入れた結果これが見れたなら、間違いなく大満足よね。
 フレッドの一撃を止める魔弾を魔王様が放っていなかったら、誰も死なないまま泥まみれの決着にはたどり着けなかったろうし、そうするための手当をテロリスト扱いされてるレオの部下がやってるのが、三人だけが戦ってる感じがしなくて良かった。
 子ども(に見える存在)が怪我してたら、戦場でも手当をしてしまう連中が不当に使われている現状が拗れた結果、魔王パーティーの超常同士討ちが発生してんだけども、殴り合いを終えて話がいい方向に転がるだろう直前、レオが守ってきたモノをこういう形で確認出来るの、非常にグッド。

 

 『どう考えても、人類に打つ手ねぇだろ……』と思わせるフレッドの超絶ビーム乱打、それを耐えきって斬撃を返すレオの規格外。
 それらを正面から相手取って殴り勝つマックスの勇姿が今回描かれたわけだが、逆にこんだけの暴力を抱えていても動かないものが、彼らの上に重くのしかかってたんだなと分かる回でもあった。
 全リミッター解除した暴力装置になっちゃえば、ぬるい日常コメディの舞台になってた街なんぞ一瞬で灰に出来そうな三人が、軒並み面白くもねぇ人間のしがらみに囚われて、望んでもいない決戦に血を流す。
 それは彼らがモンスターではなく人間であろうとした結果で、魔王亡きあと錆びついたり拗れたりしたけども、なんとか彼らなり”勇者”であろうとした証明に思えた。
 逆にいえば、もう同レベルで本気出せる相手はかつての仲間しかいなくて、だからこそ身内で殺し合う所までいかないと、抱え込んだ本音をどこにも持っていけない連中だった……とも言えるか。

 そういう危ういアンバランスに飲み込まれかけたバカ漢どもに比べ、そもそも戦いの土俵に上がらず家族を得、殴り合いより生産的な戦いにひと足お先飛び込んだユリアは、あんま出番もないわな。
 大人になろうとしてなりきれない、人間でいようとしていられない、半端で必死な元少年共の身悶えを描く話において、『良き母、良き妻、良き大人、良き人間になる』という圧倒的”正解”を掴んでしまった人は、話の真ん中にはいられない。
 しかし彼女もまた、男たちを突き動かした熱い渦に身を置いていた勇者の一人ではあって、そんな彼女の思いが最後の最後、マックスの本懐を遂げさせる決め手になるのは良かった。
 他の誰も介入できない、極まった超人同士の限界バトル……ユリアが誰に肩入れするかで結末は大きく変わったわけだが、腐ってなお”勇者”でいてくれるとマックスを信じたことが、誰かが死ななきゃ収まならない死闘を、ガキのケンカに落ち着かせてくれた。

 

 国家レベルのアレソレが絡んでいるので、この後始末はまぁまぁ面倒くさいかもしれないけど、かつて自分を追い詰めた世間に一切の飾りない自分を見せて、涙ながら本気ですがるマックスの姿には、そこら辺が収まる説得力があった。
 オレはくすぶりきった腐れかけが、過去の自分に火をつけられて真っ赤に燃え盛り、残った惨めな灰から新しい人生が芽生えていく場面が大好きなので、この決着はとても良いなと思う。
 人間一人があんだけむき出しに、血みどろになってでも理不尽な衝突を止めたかった意志、殺し合うほどぶつかっても仲間を助けたい気持ちを曝け出して、なお動かない世界ってのもあんまりに悲しいしな……。
 こんだけデカい規模で恥を晒してしまうと、後ろ向きにくすぶってる余裕もなくなってしまうわけで、10年間足踏みしていた人生を前向きに進め直す意味でも、これ以上ない解決だったと思う。
 額を土に汚し、涙ながらに許しを請うていた相手は大きな世間だけではなく、過去の自分を忘れ裏切っていたマックス自身でもあったのだろう。

 ダメおっさんが自分を慕う珍生物に支えられ、人生始め直すお話が幕を閉じる上で、こうしてむき出しの自分に立ち戻って、余計な飾りを全部脱ぎ捨てる展開は絶対必要なわけでね。
 それを食いごたえ在る超絶バトルと、のっぴきならない愚かな意地と、全部を絞り出す魂の死闘でもってしっかり書いた終盤戦、大変良かったです。
 マックスが主人公らしくまとめるわけだが、再起のキッカケが魔王様の献身だったり、ユリアのブーストがないと怪物には追いつけなかったり、決着に至るまでのバランスも良かったね。

 戦い終わって、マックスと魔王様はあのワンルームに戻っていくんだろうけども、この激しすぎる闘いはマックス自身も世間も、大きく揺るがすだろう。
 そうして生まれた変化をどう描いて、血と涙の滲んだ土下座の行く末をどこに定めるのか。
 次回も大変楽しみです。
 色々企んでたクソカスが、相応の裁きを受けると良いなッ!!!