イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ミギとダリ:第1話『ミギとダリ』感想

 不気味な双子のサスペンスと、スタイリッシュ真顔ギャグと、ほっこりホームコメディ。
 色んな素材がてんこ盛りにされつつ、それぞれが喧嘩せず互いを引き立てる珍妙ユカイアニメ、堂々の第一話である。
 大変良かった。

 どう考えてもド日本な舞台に濃い口アメリカンな連中が闊歩してたり、『どう考えてもバレるだろ!』なスタイリッシュ双子入れ替わりアクションだったり、善良な養親との日常を偽装して何を狙っているかだったり。
 色んな角度からの推察やツッコミを視聴者に預けて、本編自体はパワフルにテンポよく突き進んでいく姿勢が小気味よく、大変楽しく見れた。
 すべてが過剰に力み間違っているんでいるんだけども、登場人物たちはそれを自覚せず真顔でボケ倒し続けていて、『オオォィッ!』という仕事は見ている側に任される構造。
 声優陣の熱演も相まって、ここに見てる側をしっかりノセてくれることで、作品と会話が成立している感じが小気味よかった。

 この『真顔でボケる』というスタンスは作者の前作”坂本ですが?”でも元気だったが、今回は不穏げな空気の中何かを隠し騙している双子主演のサスペンスとなることで、ツッコミの矢印が二倍に増えた感じがある。
 天然ボケながら善良な老夫婦と、一見平穏で幸せな日常を送りつつも『実は二人』という秘密を抱え込み、何かを企んで暗躍している双子の秘密とは。
 奇人まみれのトンチキ時空にゲラゲラ笑いつつ、フッと『笑ってていいもんかなぁ……』と思わされ、こちらも知らず真顔になる……けども、あんまりにも力技でボケ連発してくるので、また笑わされてしまう。
 この考え直しと笑いの交互浴が、いいテンポで襲い来ることで生まれるグルーヴ感がうまくアニメになっていて、見ていて気持ちよかった。
 このまんま立ち止まることなく、奇妙な双子の怪しくも善良な日々を掘り下げていってほしい。

 

 まだ第1話ということで謎解きはまだまだ先、双子がなんであんな珍妙入れ替わりぶっこいてるか、理由は視聴者に見えない。
 しかし面白いヤツラを悪く思えないのが人間の脆弱性というもので、どんな事情を抱え込んでいるにしても、コイツラ楽しく過ごしてほしいな……と思わせるには十分なスタートである。
 高火力のオトボケをぶっこみつつパパもママも大変いい人であり、『このまんまチェリーパイ(いい発音)とジャンバラヤ(いい発音)かっくらいながら幸せ家族になればいいじゃない!』と思うわけだが、双子の頑張り過ぎな入れ替わりを見ていると、なかなかそうも行かないらしい。
 ここら辺の事情や背景になにがあり、”いい人”である養親が自分たちを引き取るよう賢くおバカに計算立てて純情を演じた理由がだんだん分かっていくことで、真顔でハチャメチャやっとるおバカ兄弟が何に縛られ、何を譲れないかも見えてくるだろう。
 ゲラゲラ笑っていた相手が存外シリアスな理由にしがみついていると知ると、ソイツを馬鹿にできなくなるもの人間の脆弱性なので、ここらへんの問答無用の笑かし力、そこからの種明かしの傾斜は、いい感じのスタートを見せた。

 不穏なサスペンス要素にしても、あきらか無理があるスタイリッシュ入れ替わりにしても、見ている側がツッコミ入れるとリターンがある要素として用意されている。
 しかしパパママが天然なのは”そういうもの”だし、アメリカンな人物とド日本な舞台設定の食い違いとかは、多分あんま説明がない。
 そういう宙ぶらりんな要素ときっちりパンチが返ってくるネタのバランスもいい感じで、画面外からのツッコミをスルーされる(そして延々真顔でボケられる)ことで生まれるお話との対話も含め、全体的な呼吸がいい感じだ。
 ここらへんは芸達者を揃えた声優陣がよく効いていて、村瀬歩のハラグロ媚声(人類の基礎栄養素。何回摂取しても良い)とか三石琴乃の大ボケママっぷりとか、こっから三ヶ月食えるたぁありがたすぎる。
 双子の秘密の暴き方はややゆっくりなんだけども、偽装であるパパママとの家族劇自体が面白いんで、バクバク食べれちゃうのもありがたい。
 そしてそうやって仲良し家族の嘘っぱちな幸せを味わうほどに、それを裏切ってる双子のことが心配になり、『ご両親いい人なんだからさぁ……事情はわかんないけど、あんま嘘とかつかないほうがいいよ。眼の前の幸せを、素直に抱きしめたほうがいいよ』とも思うのだ。

 

 面白くてやがて恐ろしく、不穏さの中に確かな暖かさがある。
 サスペンスとコメディ、ホームドラマと様々なジャンルを横断しつつ、その一つ一つがしっかり仕上がって、お互いをもり立てているスタートでした。
 このバランス感覚とテンポの良さ、視聴者にツッコミを預けつつ置き去りにはしない対話感が、アニメとしてのまとまりと面白さをしっかり宿して動いていたの、大変良かったです。
 声と動きがつくことで、より火力を増した笑いの強さ……なかなか凄かったな。

 今後も真顔でやりきれるのか、各要素の良きかみ合わせを維持できるのか。
 気になるところは当然ありつつ、とても良いアニメ化になったと思います。
 次回も大変楽しみです!