イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ひろがるスカイ!プリキュア:第35話『助っ人ソラ!エースとヒーロー』感想

 秋だ野球だ個別回だ!
 久々のひろプリ学校エピソードは、洒落にならないレベルの野球肘を抱えたエースに未来を示す、ソラちゃんコーチ奮戦記となった。
 先週のバッタモンダー生き直し回といい、エルちゃんがキュアマジェスティとなったことで一つの”あがり”を迎えて、虹ヶ丘邸にフォーカスしていた物語が開放されてきた感じがある。
 一箇所に狭く深く話の焦点を絞ることで描けるものも、横幅広く風通し良く話回すことで生まれるものも両方大事だと思うので、こういう目先を変えた回は大変良いと思う。
 『異世界人の赤子をほぼ未成年のみで育ててる』って異常状況を、家の外の人に飲み込んでもらう作劇コストが高いんで、なかなか虹ヶ丘邸の外から人に入ってもらう話もやりにくいんだよなひろプリ……。

 

 お話としてはスポ根ど真ん中……に勤しむ一般中学生を、フィジカルお化けの異世界人がコーチとして見守る感じ。
 ソラちゃん自身が新しい学びを得るというか、第22話・第23話で学び取った『折れてなお立ち上がれる強さ』をたまきさんに分け与える感じのお話だった。
 こういう”支える強さ”はプリズムの得意ジャンルって感じもあるが、ましろさんと魂の至近距離で暮らした日々がソラちゃんに良い影響を与えて、らしくない善さを自分のものにしてきてる手応えがあったのは、後半戦独特の噛みごたえで良かった。
 元々ひろプリは尊敬に値する誰かを見つめ、見守られながら新しい可能性を掴み取っていく描写が多いので、コーチとしてソラちゃんのヒロイズムが開花する今回は、ここまでの歩みが確かに何かを産んだんだなぁと、じんわりした感慨があった。
 学校に話が広がったことで、『ご当地ヒーローの秘密を知ってしまったクラスメイト』という美味しい属性がたまきさんに付いて、ソラちゃんの世界が少し広がった手触りがあったのも良かった。
 こういう横幅はひろプリがあんま触っていなかったことだと思うので、あんま作劇ノルマ背負ってない個別回でこそすくい上げて、話に彩りを出す要素かなーとも思う。
 ここらへん、第28話で”妹としての聖あげは”が描かれたのに近いかなぁ。

 ソラちゃんがその超常的身体能力で勝ちって結果だけを拾ってきて終わるのではなく、野球部が当事者性を持ってエースの故障に向き合い、かなめ先輩の奮戦によって誇らしい結末を掴み取っていったのも、真っ直ぐな展開で良かった。
 中学二年生であのレベルの野球肘やっちゃってるの、明らか指導者の資質を問われる事態だと思うが、まぁそれは横において。
 ソラちゃんが変身ヒーローとして非日常の戦いの中学び取った”連帯する強さ”を、部活動というごくごく当たり前の、だからこそ大事な日常に接合する形で描けたのは、話が終盤に差し掛かったこのタイミングだからこそ良かったなと思う。
 何かと張り詰め思い詰め、真っ直ぐ進むことしか知らなかったソラちゃんが苦しい思いを乗り越えたからこそ、見つけられた答え。
 それは戦いの中自分を支えるだけではなく、誰にでも訪れる苦境を支えられる太い柱として、他人に差し出せるものになっているわけだ。
 こういう柔らかさとしなやかさが、ソラ・ハレワタールに備わってきたのだと作品が教えてくれるのは、何度も言うけど感慨深い。
 ましろさんが鋼の如き不屈をソラちゃんから学び取ったように、ソラちゃんは寄り添う優しさ、誰かの手を取る強さをましろさんから学び取って、誰かに手渡せるようになったのだ。
 そういう美質の受け渡しこそが、出会いと思いが”ひろがる”ってことなんだと思う。

 

 というわけで、秋の散歩道で思わぬ宝物を拾ったような、爽快なソラちゃん個別回でした。
 ソラ・ハレワタールって揺るがぬからこその強さと危うさを、キャラの初期条件として背負ってたと思うわけだが、そんな彼女が3クール物語を歩いてどう変化したのか、何を受け取って手渡せるようになったのか、キュアスカイの現在地を確認するようなエピソードでした。
 やっぱこういう、話数積んだからこその影響と変化が感じられるエピソードがあるのは、一年長尺で続くアニメ特有の滋味だなー。

 大変面白かったです。
 次回も楽しみですね!