イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ブルバスター:第1話『ブルバスター起動!崖っぷち中小企業が立ち向かうのは、謎のバケモノ!?』感想

 突如現れた脅威に対し、敢然と立ち向かう中小企業の奮戦を描くオリジナルアニメの第1話である。
 予算、法令、人間関係……生っぽい世知辛さと取っ組み合いながら、ちっぽけなヒロイズムを鋼鉄の巨人とともに追いかけていく姿には、往年の名作”地球防衛企業ダイ・ガード”の匂いがある。
 ヘテロダインは災害級の巨大な脅威であり、それに対するロボットもまた巨大だったが、今回波止工業が向き合うのは人間よりは大きく、災害というにはコンパクトな”巨獣”であり、ここらへんのサイズ感は”影鰐”と似ている感じ。
 僕はギリギリ生身で立ち向かえるサイズの脅威に向き合い、生々しいホラーテイストと泥臭いヒロイズムを描いたあのアニメが大好きなので、日常と異常がいい具合で混ざりあった巨獣の描き方、それがめちゃくちゃにした島の風景、それでもなお使命感を持って仕事に勤しむ人たちの姿を、懐かしくも好ましく見届けた。
 巨獣災害の被災地として、いつ戻るともしれない日常の守護者を己に任じる波止工業だけども、自衛隊が本腰入れていない時点で巨獣制圧はそこまで重要な任務ではないのだろう。
 しかし草生え放題の廃墟を、あくまで誰かが戻ってくるべき故郷として捉え、『ぶっ壊れても直せばいいでしょ』という捨鉢な態度ではなく、大事に向き合う姿勢が第一話から感じられたのは良かった。
 島のこと何も知らない沖野くんの視点が、作品と出会いたての僕らと重なって、野ッ原に荒れ果てているかつての住宅地、子どもたちの影もない公園などにいい具合にショックを受けていく運び方とか、かなりスムーズにお話へと誘導してくれた。

 ロボットというより重機の趣が強いブルバスターのデザインも、果てしなき災害復興へ手づかみで挑んでいく姿勢としっかり噛み合っていて、作品全体のサイズ感がよく出たスタートだったと思う。
 生っぽさ、泥臭さを全面に押し出しつつも、最新鋭の技術を投入された夢の機械としてブルバスターはしっかりショーアップされており、必要なだけのケレンは効いていた。
 旧型機が安定性を求めてキャタピラ駆動なのに対し、不安定でも俊敏で柔軟性に優れた二足歩行を武器に、正面から巨獣を抑え込むパワーもしっかり見せて、主役メカお披露目に必要なワクワク感は、しっかりと醸成されていたと思う。
 巨大な鉄巨人と異形のモンスターががっぷり噛み合い、アクシデントとパニックを抑え込んで何事か為していく確かな手応えが、アクションとドラマの運び方にちゃんとあったのはとても良かった。
 被災地の現実、仕事の世知辛さを見ずに夢のロボット大活躍に浮かれている沖野くんと合わせて、次回辺りガツンと”現実”から一発食らうんだろうけど、それはこういうお話組み上げた時点で必然というか、必要な展開でもあろう。
 ブルバスターと沖野くんに”出来ること”をしっかり魅せた第一話に続いて、彼らに”出来ないこと”をどれだけ適切なストレスで描けるかが、今後の行方を占うように思う。

 

 デケー鉄の塊がエンジン唸らせてなんかするなら、何かが巻き起こるだろうという名状しがたいワクワクは物語に宿る。
 巨大な力を宿した重機を目の前にしたときの、何かが切り崩され何かが生まれていく根源的な期待を、ブルバスターはしっかり宿していたと思う。
 同時に常識ハズレのスーパーロボットではなく、あくまで対災害重機である以上その運用も常識の範囲に収まり、予算や会社組織、法律や条例に縛られながらヒーローやらなきゃいけないのは道理だ。
 ここらへんの生っぽさは経理担当片岡さんの激詰めっぷりとか、武藤さんの免許期限切れとかで、いい塩梅に醸し出されてきた。
 主人公着任、初顔合わせからの最強兵器起動ッ! と、ロボットものの定形を丁寧に分で見るものの血圧を上げた後で、禿げかかったオッサンが口角に泡浮かべて予算がどーの、書類がどーの水ぶっかけてくる流れは、作品がどういうテイストで転がっていくのかをよく教えてくれた。
 今後も片岡さん、良いところで冷たい現実を叩きつけて、憎まれ役を担当するんだろうけども、彼がこだわる常識やら法律やらがあればこそ、会社は会社として機能している。
 波止工業が戦うべき災害が、そういう人間社会のタガ全部ぶっ壊したことを考えると、組織が社会の中で機能するためのややこしさにちゃんとコミットできているのは、ある程度以上幸せで、大事なことなのだろう。

 ミキシン声の昼行灯社長、あまりにも武藤敬司な武藤さん、ぶっきらぼうな女性パイロット、職場の潤滑油になってくれそうな庶務のお姉さん。
 片岡さんを机叩く役にして、残りの面々とはわりかしいい塩梅のファーストコンタクトが取れた。
 業務提携による出向社員という、外様の立場の主人公がどう会社に馴染んでいくかも今後の見どころだろうから、いきなりの本番を通じて力を合わせ、悪くない距離感で初手から繋がれたのは良かったと思う。
 巨獣出現とともに加速していく状況の中で、『コイツはこういう奴』という造形がわかりやすく描写され、アクションの中でキャラクターが見えていく展開になっていたのは、大変素晴らしかった。

 今回ザラッと見て取れたキャラクター性が、今後少しテンポを緩めて話が転がる中でどうぶつかり、化学反応を起こし、ぱっと見以上の魅力を生み出してくれるかも楽しみだ。
 アル美ちゃんのダウナーながら巨獣対策に熱血なところとか、武藤さんの分かりやすい脳筋っぷりとか、社長のしょぼくれたセクシーさとか、煮込むと美味しそうな要素がすでにたっぷりあるのは良いよなー。
 沖野くんの浮ついたナード感とか、夢のロボット操縦に酔っ払って足元で誰の元・日常踏みつけにしてるのか分かってない風味とかも、今後グラグラ煮立たせていくのだろう。
 こういう形でお話の予測が立つのは、物語と出会ってその大体の形と味わいを飲み込み、作品への期待が高まった証拠だと思っている。
 こうして生まれたイメージを叶え、あるいは気持ちよく裏切ってお話が進んでくれると、より面白くこのアニメを見れるだろう。

 

 というわけで、大変わかりやすく、面白い第一話でした。
 今後このアニメがどういう道をたどり、何を大事にしてお話を描いていくのか、しっかりと挨拶してくれるスタートだったと思います。
 僕はこういう風に、初対面でがっちり握手をしてくれるアニメが好きだ。

 夢の最新鋭重機を操り、巨獣と戦い復興を為す。
 なかなかにワクワクする滑り出しに、新入社員の山あり谷あり、零細企業の悲喜こもごも……色々面白いネタが盛り込まれていきそうです。
 次回波止工業と沖野くんは、どんな仕事に勤しむのか。
 とても楽しみですね!