イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ブルバスター:第2話『 金がない!船もない!?起死回生の一手は「波止ブランド化計画」?』感想

 華々しいはずのロボットヒーロー稼業は、蓋を開ければ世知辛い!?
 せせこましい資金ぐりと過疎地域の政治、生き死に日常かかった災害復興の現実と今どきビジネスが複雑に絡み合う、土建系ロボットアニメの第2話である。
 第1話ではブルバスターのヒロイックなアクションに存在感があったが、銃撃ってもモーター動かしても金が飛んでいく現実味がのしかかってきて、今回は派手な見せ場はなし。
 その分会社としての波止工業の立ち位置、社員それぞれのヴィジョンとキャラクター、地元社会や外部企業との関係なんかをじっくり掘り下げて、作品の足元を固める感じの話になった。
 建設業から害獣駆除会社へと転身し、沖野くんが指摘するように明らかに異常事態なのに国は動かない中、義と意地で正義のヒーローやってる波止工業。
 地域的には利権を食いつぶす外様扱い、戦うべき相手を分析してくれるはずの取引先の態度は冷たく、禿げたコストカッターがビシバシ締め付けないと立ってらんないくらい、会社の足元はフラフラだ。
 起死回生の新兵器になるはずのブルバスターは金食い虫だし、その担当者は被災地に何が投げ捨てられてて何を自分が踏んでいるのか、全く分かっちゃいない。
 21歳と極めて若い沖野くんが、現代っ子らしく軽いフットワークと人情への無理解をブン回して、地方の泥臭い実情を全く飲み込んでいない描写、結構胃にキタな……。
 ジジイからすっと、理と利だけブン回して他人の魂をひっぱたくと、回るもんも回らなくなっちゃうと思うんだが……『人として間違ってる』のは、はなしてアル美ちゃんだけかねぇて話だな。
 土に根ざして家族と生きてきた波止工業組と、才気煥発の都会っ子として災害現場に首突っ込んだヨソモノが、真実仕事仲間になっていくには色々と生々しい問題がありそうと、よく分かる第2話でした。

 

 つーわけで大変世知辛くも生々しい、地域と人間関係に根ざして未知の害獣駆除を頑張る波止工業の現状。
 社内では外見そのまんまにぶつくさ荒れた文句たれてた武藤さんが、取引相手には腰低く下手に出ている様子が、色々苦労されて今の仕事を頑張っている感じあってよかった。
 もっとこー、『理屈は横においてフィジカルでガツンだ!』みたいな人かと思ったら、そういうオールドスクール路線はむしろ片岡さん担当で、オヤジ役として若者と島を取り持ち事情を説明し、理屈だけじゃ動かない生身の人生を教えていくポジションになりそうだ。
 社長がどう考えても災害に家族を奪われてなお理想を負う傷追い人なので、沖野くんのケツモチは武藤さんがやってく感じになるよなー。

 PCの壁紙も夢の巨大ロボットな沖野くんは、子どもであり都会人であり現代人であり、つまりは波止工業がもっていない全てを連れてくるアウトサイダーだ。
 それは未来を掴むために必要な触媒であり、思いつきをビジネスに乗っける行動力とコネクションもあるわけだが、その軽薄で浮ついたやり口と、疲弊した被災現場の相性は最悪でもある。
 巨獣によって実際人が死に家を追われ、それでもなお人が生きて暮らしている現場において、ビジネスの表面だけをツルツル整えていく手際の良さは、例えばアル美ちゃんが黙して語らない血を吐くような思いを、土足で蹴り飛ばす危うさをもっている。
 巨獣災害という形で膜一つかけられてるけど、アル美ちゃんが代表している言葉にならない重たさって現実の被災地、被災者も背負っているもので、SDカード投げ捨てた程度でよく抑えたな、と正直思った。
 沖野くんは現状、自分が何踏みつけにしてんのか全く理解していないので、アル美ちゃんの事情に先回りする心配りも、賢い頭で人間が生きる重たさを解体していく優しさも、全然持ち合わせていない。
 明らかに人間に大事なモンが足りていない腐れ若造が、今後どう復興事業の現実にメコメコにされて、人格叩き直していくのか。
 想定してたより、生っぽい痛さがある話になりそうだ。
 大変いい。

 

 沖野くんはヒーローに必要な賢さと優しさと強さが足りていないけど、波止工業に足りないものを持ってもいる。
 露出が大事な現代ビジネスにおいて、結構大したことをやっているのにそれを喧伝しない錆びついた奥ゆかしさを、警戒に蹴り飛ばして巨獣退治をブランド化していく。
 そういう発想は、ド田舎の元建設会社には持ち得ないわけだ。
 そういう現代的で都会的な発想を形にする人脈と行動力もちゃんとあって、訴求力の高いデザインをキッチリ値切って形にしたり、Web広報の段取りを付ける能力もある。
 上手く使えば奇跡の起爆剤にもなるけど、心が伴わなければ残酷な凶器にもなってしまう『イマドキのビジネス』を、巨獣災害と地方経済のダブルパンチで傷ついた島で、どう稼働させていくのか。
 全身全霊を託した自慢の愛機でモンスター狩るのと同じくらい、大事で難しい課題を沖野くんは背負っている。

 ここら辺、会社に雁首揃えた人材が上手く都会っ子の強みを引き出し、地域社会になじませ現実を教えて形にしていく所なわけだが、社長はどっか頼りなく、経理担当は視野が狭く、そうそう簡単には行かなそうだ。
 社長が認識していない、大変に生臭い地元の経済と政治をしっかり聞き及んで、会社が置かれた現状を把握する耳の良さが片岡さんにあると、ファミレスでの会話で見えてきたのは面白い。
 こういう実務は社長疎くて、んじゃあ何が強みかってのは今後描かれるところなんだろうけども、まー間違いなく、ひび割れた家族の写真が関係しているよな……。
 紆余曲折ありつつ、新たな看板掲げてどん詰まりからの一発逆転へ踏み出した波止工業が、泥臭い地方の現実と今っぽいビジネススキームをどう混ぜ合わせて、名実ともにヒーローになっていくのか。
 その過程で価値観も見えてる世界もぜんぜん違う社員たちが、災害復興というミッションに挑む仲間としての絆を育み、足りないもの見えていないものを補って進んでいくのか。
 波止工業とその助っ人があらわにした、トホホな現状が物語の行く末を、なかなかいい感じに照らしてくれたと思う。

 

 前回キャラやお話に『出来ること』を前に押し出し、今回『出来ないこと』を掘り下げてきたクレバーな作りによって、今後物語が転がっていくべき方向性が、かなりクリアになったと思う。
 問題山積ではあるけども足踏みしている感じは薄く、凸凹迷い道を突き進むからこその地道な手応えが感じられそうな、仕事としての生っぽさもドラマとしての面白さも、いい具合に煮込まれていた。
 各キャラが抱えている課題と価値観、譲れないものと譲るべきものも見えてきて、なかなか良い感じの第2話でした。

 沖野くんの人間に大事なこと置き去りにしてるっぷりがかなり凄くて、ロボアニメに見せかけた災害復興モノであるこのお話では、メチャクチャ色んなところで衝突しそうだなと思った。
 その生っぽい火花が作品が加速する火種にもなるわけで、上手く扱っていって欲しいと思います。
 オヤジ役である武藤さんの苦労は尽きないだろうが、ガチムチボディと繊細な現実感覚を活かし、苦労人ポジションを走り切って欲しい。
 次回も楽しみッ!