イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ブルバスター:第3話『沖野、大失態!荒れる島民達…会社存亡の危機に、社長が立ち上がる!』感想

 土にまみれて汗流す、災害復興系ロボットアニメの第3話も主役メカは出ないッ!
 コンプラ違反の情報漏洩、本社と地元の板挟み、就職デビュー野郎の挫折と再起と、世知辛さと生っぽさを山盛りにお送りする、ブルバスター第3話である。

 正直どうなの感出てた沖野くんの浮ついた感じを、ギリギリやらかしで収まる範疇の挫折でガツンと殴って矯正しつつ、波止が置かれた極めて厳しい状況を色んな角度から掘り下げ、アル美ちゃん(≒島民側の人)メインに話の舵を切り替える、色んなことが起こる回だった。
 沖野くんのガン凹みは生々しい手応えだったが、武藤さんが期待通りの熱血オヤジっぷりを発揮して持ち上げてくれて、こっちはどうにかなりそう。
 一方島と本社、経済と災害復興の板挟みになってる波止の立場は早々簡単に改善するもんでもなく、しかし青年団を筆頭に地元との繋がりも見え、巨獣殲滅という突破口も見えて少し上向き……と思ったら、その巨獣がどーやら置き去りにしたコンパニオンアニマルが変貌したものっぽいと、情勢が二転三転してた。
 上司がぶん回す経済の都合には頭下げないけど、アルバイトで希望を買ってる島民には額畳にこすりつける、田島社長の心意気は報われて欲しい……けど、なんもかんも複雑で不鮮明な状況下で、皆が幸せになるゴールはなかなか見えない。
 この一筋縄ではいかない感じが、この作品独特の味わいになってきてる手応えもあって、大変良い第3話でした。

 

 つーわけで沖野がやらかして、巨獣のデータが世間に出た……けど、早期対応でどうにかした。
 『どうにかなったんだからいーじゃねぇか!』と、肝太く開き直れるほど沖野くんも図太くないし、自分がしでかしたことで大人が頭下げてるの目の当たりしちゃうしで、スゲーショックがデカい。
 沖野くん21歳ということで、ともすれば飛び級で大学出てブルバスター設計したまである、人生経験の少ない早熟な天才である(浮ついた部分ばかり書いてるので、なかなかそうは見えないけど)。
 憧れの巨大ロボットを作り上げ、現場で人助けしてヒーローになる夢を叶えて、順風満帆万全無敵……と思ってた所に、万能感に水を差すこの失態は厳しい。
 淡水化プラント建造会社から巨獣駆除に業態変えて、資金も人脈も細い中でバタバタやってきた波止に、十分な説明与える余力が時間的にも組織的にもなかったことが、この衝撃を加速した感じもある。
 巨獣の存在を公開できない理由、経済と復興の間で揺れている複雑な立場。
 事前に説明を受けてハラ固めてたなら、もうちょい腰を据えて業務に挑めてたわけだが……まぁそういう『普通の対応』してたらお話にはならないもんな……。

 本社と地元、二つの状況説明を描くことで、波止が身をおいている場所がどんだけ不安定で切迫しているか、よく見える回でもあった。
 波止が会社である以上、片岡さんが近視眼的にぶん回す以外の経済原則で動いてはいて、しかし銭金にならないところにこそ巨獣殲滅会社の使命はある。
 好き勝手ぶーぶー言い連ねる地元民の、エゴに混じって切実に刺さる郷里への思い、不安な気持ちがよく描かれていて、そらー社長も申し訳無さに土下座するわな……となった。
 ここで頼れる鉄面皮ぶら下げて、『俺について来い!』出来る人じゃないからこそ、誠実に地元の声を聞いて問題を解決できるよう、真っ当に優しく立ち回ろうとするのだろう。
 そして周囲を慮るからこそドラスティックな手筋が打てなくて、色んな軋轢に巻き込まれて身動きが取れなくなっていくという……なんとも生々しい、中小企業仕草である。
 片岡さんがぶん回す会社レベルの経済優先主義、根性論と分かりやすい成果主義の押し付けが、んじゃあ正解なのかっつーと『そうじゃねぇだろ』とも描かれてて、巨獣対策と並走して人間集団がどう内部と外部に、より良い筋道作っていくかがドラマの主眼なのだな。
 そういう意味では、外部に向けての適切な説明窓口を作り、コミュニケーションと支援獲得のきっかけを作ってる沖野くんは、自分が思ってるほどクズじゃないのだ。

 

 そんな現代ビジネスの申し子は、一回の失敗でガン凹みして『やめます……』なってた。
 必死に作った陽気な仮面に、引っ張られすぎて他人の心を踏みつけに、浮ついてウッカリやらかした。
 ここで深く深く……それこそ仕事やめると思い詰めるとこまで内省できるのは、頑張って陽キャぶってた陰キャである沖野くんのいい所なのだろう。
 同時に打たれ弱い弱点でもあって、ここを叱咤激励ぶっ叩いて武器に変えていく手助けを、漢・武藤銀乃介が立派に果たしてくれる。
 ”パチンコ”という卑近で、自分に理解できる夢でもってロボオタクに歩み寄り、ガツガツ本気でぶち当たって立ち上がる力をくれる姿は、大変に頼もしかった。
 若すぎるがゆえに気分の上下が激しく視野が狭い沖野くんを、支え導くオヤジ役が後も頼もしいと、やはり大変いい感じ。
 同じ年長者でも、周囲を見ずに自分のスタイルぶん回す片岡さんが隣りにいるので、自分なり解るように噛み砕いて沖野くんの状況を飲み干し、当人が打ち捨てようとしてるものを拾い上げ手渡す努力をしてくれる武藤さんは、見てて気持ちのいいオトナである。
 立場は違えど解かろうとしてくれる信頼感は、青年団に対峙する社長にも感じる所で、世代や出身地域、出向と本社を超えたコミュニケーションを成立させていくお話なんだと思う。

 巨獣の扱い一つとっても、真実だけを振り回せば人が傷つき故郷がなくなる現実の難しさ。
 波止が向き合う課題は単純明快なロボアニメとは程遠いが、社長のカンが告げるように巨獣殲滅と災害復興が繋がっているのなら、ブルバスターは人助けの道具になり得る。
 それを生み出し操る沖野くんは、仕事を通じてヒーローになり得る存在であり、しかしその歩みは問題山積、なにしろ”仕事”なので生々しくも難しい。
 銭金、人間関係、会社同士の綱引き、地域との付き合い。
 そういう、他のお話ではノイズとされる些事にこそ人間の行いがあるのだと、独自の分解能でもって巨獣災害に立ち向かうヒーローを描くのが、このお話なのだろう。
 何も知らされないままフワフワ浮かれていた自分が、どういう位置にいて何を間違えるのか思い知った今回の事件は、沖野くんをそれでも貫きたい夢に向き合わせ、”仕事”と付き合えるちょっとだけタフな自分へと変化させていくだろう。
 そういうとてもありふれた新人の変化が、巨大ロボットを駆るヒーローの物語と重なっているのは、独特で面白い視点だと思う。

 

 ほいで大事になるのが、外部から来たヒーローと並び立つ、島を追い出されて巨獣と戦うアル美ちゃんの物語よ。
 不可視の”ガス”が故郷を奪う、現実に故郷を追われた人たちの情勢とけっこう生々しく重なる作中設定を背負って、アル美ちゃんは生身で巨獣と向き合う。
 たった一年でぼろぼろになった”二階堂”の表札に、どんな過去を隠しているかはまだ明言されないが、そんだけ見せられればだいたい解るってッ!
 暗い闇の中で一人”敵”に立ち向かおうとして、湧き上がる恐怖と郷愁に立ちすくんでしまうアル美ちゃんの顔を今回ちゃんと書いたのは、凄く良かった。

 アル美ちゃんが唇噛み締め、恐怖を飲み干して立ち向かっているもの、戦うことで取り戻したいものは、ヒーロー企業である波止が一番大事にしなきゃいけないもので、それだけでは金を産まない。
 ”仕事”の内側に血の通った人間の生活があり、それを目の当たりに裏切れない自分がいるってことは、現場にいればこそ感じられるものだ。
 本社と波止の間に、社会的ミッションを背負った重大業務だって共通認識がなく、それを作るために巨獣災害の実態を共有すると大事になりすぎて島への帰還が難しくなるってのも、厄介なジレンマだな……。
 自分たちの仕事が、故郷を追われた人たちの生活を取り戻すヒロイックなドラマを宿していると、上手く世間にドラマを提供することで、ここらへんのややこしさは突破できるのだろうか?
 そういう形で、沖野くんの英雄願望が現実に根っこを張っていくと、好みの展開でありがたい。

 

 アル美ちゃんが屈強なアマゾネス気取って寡黙に、必死に戦っているものは、他人に漏らせば自分が崩れてしまうような、危ういものなんだと思う。
 そういうモンを今回、武藤オヤジに預ける体験をした沖野くんこそが、今度は同じ辛さの中を抗ってる同僚の荷物を、半分持ってやるタイミングかなと思う。
 間違いの中から学び、少しずつ強い自分になっていく小さなヒロイズムを、若すぎる英雄志願者が掴めるのか。
 話しづらいツンツン女とどう向き合うかは、主役の資質、お話の方向性を見定める大事な勝負になりそうです。
 次回も楽しみですね!