イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ミギとダリ:第4話『おりこうさんになろう』感想

 パンツと女装と勉強と!
 学校という新たな環境に飛び込み、危険な初恋が罪悪感を刺激する抱腹絶倒双子サスペンス、新展開が止まらない第4話である。

 口が軽い家政婦みっちゃんから情報を得、母の仇に繋がる一条家へ潜入するためにおりこうさん大作戦……という、胡乱なんだか的確なんだか良くわかんない、このアニメらしい復讐計画が転がる今回。
 大真面目なんだが(だからこそ)ピントがズレた双子の努力が笑いを誘い、捻れに捻れたダリの純情にときめき、なかなか複雑な楽しさを味わえた。
 笑っていいんだがマジになればいいんだか、良く分かんねぇけども楽しいことだけは解るという、複数ジャンルをまたいだ作風の一番美味しい所をドバっと浴びせかけられる作風は、やっぱり食べてて気持ちがいい。
 驚愕の異性演技で魅せた村瀬&堀江コンビの芝居力、力んだ笑いも麗しい初恋もしっかり書き切る描画力に支えられて、ミギダリちゃんの奮戦を楽しみながら応援できる、とても良い回だった。
 ミギダリちゃんは復讐に呪われた不気味な双子だが、同時にアホ極まるフツーのガキなので、フツーに幸せに暮らしているの見ると……嬉しいッ!

 そんな気持ちを乱すか加速させるか、神戸のおばちゃんみっちゃん登場。
 抱えている秘密と使命が重たすぎるので、みっちゃんくらい遠慮とデリカシーなくズケズケ踏み込んでくる方が、ミギダリちゃんには丁度いいのかもしれない。
 パンツを横並びで干す、遠慮のない当たり前の家族。
 思春期の気恥ずかしさも入り混じりつつ、年経た親友と親身に交わりながら噛み締められる当たり前の幸せを、双子は復讐の邪魔と遠ざけている。
 しかし後にミギの初恋喜劇に描かれるように、自分を復讐の機械に閉じ込めようとしている少年たちはただの浮かれおバカであり、愛に飢えてるからご褒美チャンスに爆走カマす普通の子どもである。
 彼らが目の前の幸せを口に入れていいのか、疑い距離を取る獣のようになってしまったのも、母の死筆頭にあんまり辛い体験が多かった結果なので、しょうがねぇ部分もあるけど。
 ひとしきり復讐鬼と家政婦のすれ違いコメディでゲラゲラ笑った後『ミギダリちゃん……普通に幸せになんねぇかなマジ……』となった。
 いやマージッ!

 

 後半はみっちゃん情報で当たりをつけた一条家に食い込むべく、特進クラスの目にとまるくらいのおりこうさんを目指して、双子が勉強頑張る話。
 二人がバカなのも環境の結果、復讐最優先で生きてた結果かと思うと、『バカで~~~』と笑ってばっかもいられなく、この”爆笑した後に自分に冷水”感は、このお話独特の面白さだと思う。
 『週三で行きます』が重たすぎる秋山くんの、過剰にアクセル踏みこんだ友情が炸裂するのは次回以降として、今回も入れ替わり芸を駆使しながら成績アップ大作戦……と思いきや、話は意外な方向へ。
 兄が勉強時間を捻出するべく、養母のウィッグ活用して生み出した美しい虚像に、馬鹿な弟がガチ恋しちゃった!
 ここで『そうはならんやろ……』という近親異性装恋愛が爆誕するあたり、無理くりだからこそ面白い作風を全身で浴びれて、大変いい。
 勢いよく面白いことをぶつけて、つまんねー常識をぶっ飛ばしていくスタイル、力強くていいよね……。

 話が進み、次第にミギダリちゃんの差異が強調されるになってきたけども、今回は出会ってしまった恋に全霊を注ぐミギちゃんの純情と、それを冷静にコントロールして目的を果たそうとする……けど、弟騙してる罪悪感に耐えきれず嘘を終わらせるダリちゃんの違いが、とても色濃かった。
 自分と同じ顔の異性に、母の面影を感じながら猛烈に惹かれるという、ナルシシズムとマザーコンプレックスとブラザーコンプレックス、ヤバ感情複合のバーゲンセール。
 そこに異性装を混ぜてなお純情という、サリーちゃんとの初恋は、なかなか奇妙で素敵な味わいだった。
 『こら好きになっちゃう……』という説得力がサリーちゃんの美貌にあり、『ミステリアスに少年を翻弄する、謎の美少女が見たいッ!』という人類の根本的欲求にも答えてくれて、大変いい。
 図書館のマリアにいいように操られつつ、初めて知った恋に向かって超真っ直ぐツッコむミギちゃんの純情っぷりを見ていると、『やめなやめな復讐とか!』って気持ちに、マジでなる。
 こういう、フツーで幸せな子供っぽさをギャグの中お出しされてしまうと、自分から遠い喜劇として外野で笑っているのではなく、色々捻れた状況に置かれているけど必死に生きてるガキを見守る、ヒューマンドラマの手応えがググっと前に迫ってきて……しかし笑えるもんは笑えてしまって、複雑怪奇独特無双な面白さがある。

 

 『二人で一人』を標榜しつつ、双子は恋を演じられるくらいに別人でもある。
 おバカでサボりがちな弟をコントロールするべく、女神を演じる兄の冷静さは復讐完遂に必要な資質で、しかし嘘に徹し切れるほど冷酷でもなく、嘘を壊せるほど残酷でもない。
 感情むき出しの子犬めいた可愛さがあるミギちゃんとは、またちょっと別の可愛げがサリーちゃんからは滲んでいて、鏡合わせの初恋喜劇を見ながらさらに双子が好きになれる、いい回だった。
 最初で最後の水族館デート、茶化すことなく凄くロマンティックに描いて、涙を兄の胸元まで我慢し続けたミギちゃんの”男”に報いる仕上がりにしてくれたの、大変良かったです。
 それが嘘っぱちだったとしても、ミギちゃんが出会った初恋はとても人間らしい大事な感情で、それが嘘でなかったと思いこむことで復讐だけに縛られるのではなく、己を生きていく道もひらけていくだろう。
 みっちゃんとの交流もそうなんだけども、双子が当たり前の幸せを見つけていける手がかりが笑いの中しっかり埋め込まれていて、笑えるからこそ生きれる生な感じが大事にされているのは、いい作風だと思う。

 そしてそういうホッコリに、いいタイミングで水を指して『サスペンス終わってないぞ!』と見せる、次の話に力強く引くパワーも高い。
 クラスメイトの荷物をチェックし、”異常”を探り当てる一条瑛二の不気味さには、どんな秘密が隠されているのか。
 双子だけがイカれたサスペンスを展開しているわけではなく、やはりこのアメリカン神戸にはどこか歪な危うさが、未だに息をしているのだと思い知らせるラストシーン、大変良かったです。
 双子ちゃんが復讐に固執するのは、別に彼らがイカれた妄想狂だってわけじゃなく、実際にお母さんは殺されているし、この街には暴かれるべき秘密が眠っているから。
 形見のペンダントに反応した瑛二の視界に、おりこうさん大作戦を成功させて入り込んだ双子の捜査は、そんな秘された真実へ近づくことが出来るのか。
 おバカばっかりでもホッコリばっかりでもない、ピリリと効いたサスペンスの苦味を堪能して、物語は新たな局面へと続く……。

 

 そんな感じの、双子はじめての学校でした。
 僕はミギダリちゃんの世界がだんだん広がっていく感じが好きなので、みっちゃんと知り合ったり学校に通ったりして、新しい接点が社会との間に生まれていく描写が嬉しい。
 そこで勉学に苦心したり、初恋に出会ったり、その何もかもが嘘だったり、その嘘の中に本当があったり、色んなことが双子に起こる。
 笑いあり狂気あり、複雑な顔を見せる物語が一条家との接触で、どんな表情を見せてくるのか。
 次回も大変楽しみです。