イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

君のことが大大大大大好きな100人の彼女:第4話『いちゃいちゃ回と思いきや』感想

 誰もいない屋上は四人の聖域、思う存分イチャイチャするぞ!
 静をファミリーに加え、イカれてるけど幸せな1VS100の非対称恋愛の一日を描く、100カノアニメ第4話である。

 第1話・第2話の狂気と勢い、第4話の純愛テイストをどちらも弱めて、多人数恋愛が一体どんな感じで転がっていくのか、落ち着いた感じで甘ったるく見せてくれる回となった。
 いやまぁ嬉ションだのやりすぎたツンデレだの、イカれた部分はまだまだ残る(つうか加速していく)ものの、彼女同士も仲がいい、恋太郎ファミリーの綿あめ屋みてぇな空気を胸いっぱいに吸い込める、穏やか~な回だったと思う。
 明らかイカれた101人恋愛、正気のネジを緩めて飛び込んでみると、構成員はみな隣り合う人を大事にし、お互いの個性を否定しない”いい子”ばっかりで、そういう人たちが奇妙な引力で呼びあって繋がった、不思議なコミューン体験記としての面白さもこのお話、確かにある。
 恋太郎の彼女としてキャラを立たせるのに必要な、女の子の可愛さ。
 これを男性の専売特許とせず、横並びに彼女やる女性にとっても胸キュンなのだと描きまくることで、お互いを羨みつつも妬まない、みんながみんなを大好きな狂気の楽園(パライゾ)が形成されていく。
 冷えた視線でマトモに見たら、脳の大事な部分がぶっ飛んだイカレ人間どもがイカれた共同体でネチョネチョ絡み合っているだけなのだが、そんな判断力を残した連中はもう帰っただろ! 四話だしッ!
 あとは毒が裏返るまで並々注がれたこのピンク色の砂糖水を、がっぷがっぷ飲み込めるかどうかの勝負になってくるわけで、ほのかなエロスとどぎつい狂気でしっかり味をつけたこの劇薬(ラブポーション)、大変美味しくいただきました。
 やっぱアニメ、徹底的に女の子たちを可愛く書いて書いて書き続けることで、彼女たちにすべてを捧げる恋太郎のファナティックに視聴者のシンクロ率アゲようとしてるの、強めにイカれた戦い方よね。
 現状成功しているのが、ま~凄い。

 

 つうわけで携帯越しにしか喋れない静を仲間に加え、奇妙な四人の放課後はハッピーに転がっていく。
 第2話の時点では正気を微かに残していた羽香里と唐音が、すっかり恋バカになっている様子は常識改竄系の性癖をくすぐられる感じで妙に面白いが、こっから更にイカれていくよ!
 フツーの価値観だったら到底認められない、超多角形ポリアモリーを前にして『ぎこちない』で澄んでるあたり、すっかり彼女たちの脳髄もカビてきてる感じだが、さらにカビさせるべく恋太郎はクスグリババ抜きを提示したり、席を外して成り行きを見守ったり、色々積極的に働きかける。
 彼女の可愛い仕草を覚えていたり、恋太郎はこの狂いきった恋愛で皆が幸せになるように自分の全センサーを研ぎ澄ませ、積極的に動き回ることで状況改善を図る、アクティブな流され系主人公なのだ。
 辿り着く先は大概なイカレなんだが、彼女たちのために色々頑張る前向きさ、我欲の濁りが一切ないピュアさは嘘ではなく、『イカれてるけど、まぁいいヤツだからな……』と、その頑張りを応援したくもなってくる。
 この主人公のアクティブさ、真心が結果を出す感じは、何かと受け身になりがちな男性向けヘテロブコメにおいては異質でもあり、この主人公の特色でもあろう。

 そして彼女たちは、そんな恋太郎が大大大好きッ!
 ビビーンと稲妻落ちたときから、過程すっ飛ばして恋は成就しておるわけで、世間の目など那由多の彼方、雨ざらしのパラディーゾで展開される純度100%のイチャイチャラブラブは、大変良かった。
 一切水で割らないどころかガムシロップを上から振りかける、『好き』で埋め尽くされた純愛乱舞。
 このストレートな迫力と威力がやっぱり、このお話一番の武器だなぁと感じられる描写が山盛りで、胸焼けしつつもしっかりと飲み干させてもらった。
 程よい(程よい?)奇人感で微かに味変ぶっこみつつ、兎にも角にも恋太郎が『好き』な思いに嘘はなく、それが淫乱とツンデレと人見知り、それぞれ別の壊れ方をした彼女たちの個性で色づけられて、色んな現れ方をする。
 この変化が個人レベルで終わらず、屋上に形成された愛の固有結界の中で彼女同士絡み合い、縁が深まって居場所ができていく様子も、見ていると面白いのだ。
 静の本音を前に黙ってらんない唐音のアタリを、嬉ションこらえつつ羽香里が上手く和らげて、彼女同士の三角形がいい具合にまとまっていく様子を見ていると、『イカれてるけど、ここはこの子達にとっていい場所なんだな……』という実感も湧く。
 世間の常識や倫理が何ほざこうとも、屋上から離れた場所に居場所を見いだせなかった静がここで笑ってキス出来てるのは間違いなく、構成員の同意が取れて幸せが生まれているなら、イカれてるのがなんぼのもんじゃい! という、狂った気持ちにさせられた。

 

 フラッシュなどで隠さないガチキス描かれたのも今回が最初になるが、ちゃんと書くべき所で腰を落とし、ロマンティックなトキメキでしっかりキスさせる、良い見せ方だったと思う。
 脳髄のバルブを強めにひねったハイテンションと、ねっとり重たいダダ甘ラブラブをかき混ぜて独特のビートを生み出しているこのお話、清涼感のある真っ直ぐな恋模様を茶化さず、書くべき時に書いてるのはとても良い。
 展開のメリハリという意味でも、ラブコメとしての強度確保という意味でも、なによりぶっ壊れた恋に青春を捧げ、本気で誰かを好きになってる彼女たちに報いるという意味でも、彼女たちが心からしたいキスを茶化さず描くってのは大事なことだ。

 好きな人とはキスしたい。
 真っ白なプラトニックから半歩、高鳴る鼓動に色づいた情感がとってもチャーミングで、倦むことも疲れることも知らず一生初恋の勢いでラブラブし続ける異形の純愛が、実際どういう営みぶっこいてるかを良く教えてくれた。
 脳みそどピンクに染まった羽香里はまぁ横において、彼女たちがちょっとだけエッチで身勝手に恋太郎の唇を求めているエゴの出し方が、自由意志でもってイカレ恋愛に挑んでいる風通しを感じさせてもくれて、なんだか良い。
 あまりにイカれた状況に忘れがちになるけども、彼らも健全な高校一年生。
 誰かを求める疼きは当然あって、恋太郎も超えてはならない一線を己に血で引きつつ、溌溂と求めに応えている。
 誰に強制されたわけでもない自由な心の表れとして、三者三様のキスが綺麗で幸せそうで可愛かったのは、とても良かったと思う。

 

 というわけで、すっかり恋太郎と彼女の放課後恋愛バトルフィールドと化した屋上が、どんな具合に愛を包み込んでくれるかを描く回でした。
 ”ハーレム”という言葉がオタクカルチャーの中で持つ男性優位性、女性のモノ化から距離を取るべく、この話は『恋太郎ファミリー』って言葉を自分たちを表す名前として選んだわけだが。
 その内側がどういう手触りなのか、そこで恋太郎は何に頑張り何を愛そうとしているのか、しっかり分かったのはとても良かったです。

 思う存分イカれているけど、まぁ幸せで哀しいことはどこにもない。
 そんな桃色の無何有郷にすっかり馴染んだ彼女たちの日々は、まだまだ続いていきます。
 新たな彼女たちもOPからスタンバっていて、さてファミリーの日々はどうなることやら。
 次回も楽しみです。